BPO検証委 BS1スペシャルでNHK に猛省を促す 総務省も「注意」の行政指導

編集広報部
BPO検証委 BS1スペシャルでNHK に猛省を促す 総務省も「注意」の行政指導

BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会は9月9日、NHKが昨年12月26日に「BS1スペシャル」枠で放送したドキュメンタリー『河瀨直美が見つめた東京五輪』に「重大な放送倫理違反があった」とする意見を公表した。「単なる字幕の付け間違いではない」として、NHKの事後対応も含め取材相手や社会に対するリスペクトが欠けていたと猛省を促している。

番組は、東京2020オリンピック公式映画の河瀨直美総監督と製作チームに密着したもの。チームの1人である映画ディレクターが"反対派"とされる男性の取材に同行したシーンで、「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」と字幕を付けて放送した。その後、五輪反対デモが金銭目的で行われているような印象を与えたなどの批判が相次いだ。ネット上には憶測に基づいた反対派への批判や河瀨監督への誹謗中傷が渦巻いた。

NHKは今年1月9日、その男性が反対デモに参加した事実は確認できなかったとして「字幕の一部に不確かな事実があった」と報道発表し、視聴者・関係者に謝罪。さらに2月10日には社内調査の結果を公表していた。

検証委は当該シーンの取材、編集、試写のすべての段階で問題があると判断。▷デモに関する放送内容について適切な取材がなされていない▷論理が飛躍し、独自の解釈で編集した結果、視聴者を誤信させた▷試写で問題のシーンに対する本質的な疑義が呈されず、チェック機能が働かなった――とした。背景には広義の社会運動への関心が薄く、「デモやその参加者に対する無意識の偏見や思い込みが潜んでいたのではないか」とも述べた。また、「字幕の付け間違い」として視聴者や関係者に謝罪したNHKの事後対応にも、「デモの価値をおとしめた」との視点が感じられないと苦言を呈した。

同番組に関連して、総務省は9月16日、情報流通行政局長名の文書でNHKに注意(行政指導)し、番組基準の遵守や再発防止策の徹底を求めた。NHKが2月に公表した調査報告書で「NHK放送ガイドラインを逸脱していた」と認めたことを根拠に、放送法第5条第1項(番組基準)に抵触すると判断した。

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