BS-TBS・有我健さん 放送5周年迎えた『町中華で飲ろうぜ』 【制作ノートから】②

有我 健
BS-TBS・有我健さん 放送5周年迎えた『町中華で飲ろうぜ』 【制作ノートから】②

民放onlineは、新しいシリーズ企画として「制作ノートから」を2024年2月にスタートしました。作り手の思いに触れ、番組の魅力を違った角度から楽しむ一助にしていただければ何よりです。 第2回はBS-TBSの有我健プロデューサーに、この春に放送5周年を迎えた『町中華で飲ろうぜ』について執筆いただきました。(編集広報部)


2024年3月、BS-TBSの人気番組『町中華で飲ろうぜ』(月、22:00~23:00)が放送5周年を迎えました。

"町の中華料理店をブラリと訪れるメシ&飲み&おしゃべり番組"をコンセプトに、2019年の放送開始から番組の大黒柱として支えてくださったのは、お酒大好き町中華大好き、"黒帯"こと玉袋筋太郎さん。そして、そんな玉さんを支えてくれたのは、"町中華姐さん"でおなじみのモデル・高田秋さんと、"伝道師"の愛称で親しまれる俳優・坂ノ上茜さん。二人は惜しくも3月で番組を卒業しましたが、4月からは、元乃木坂46の樋口日奈さんと、期待の若手俳優・清田みくりさんを迎えて、新たなスタートを切りました。

番組がこれまでに訪れた町中華は500店を超えます。そこには、店の数だけ情熱やこだわりがあり、それを支える常連客の愛があり、そして何といってもうまい酒とうまい中華がありました。そんな『町中華で飲ろうぜ』は今でこそ、ありがたいことに番組が認知されるようになりましたが、今日に至るまでの5年の間には、さまざまな出来事があり、番組スタッフの苦労や努力、工夫がたくさんありました。

今や空前の町中華ブームが到来!
番組はどうやって生まれた?

「町中華」――。今や世間は空前の町中華ブームと言ってもいいと思います。安くてボリュームのある絶品料理、壊れかけの看板や色あせた食品サンプルなど年季が入った外観、入り口にはスポーツ新聞やマンガが並び、手書きメニューの紙が壁中そこかしこに貼られた店内、そこにはどこか懐かしい雰囲気が漂い、昨今の昭和レトロブームもあってか、老若男女、幅広い世代に受け入れられているのではないでしょうか。

テレビでは町中華の特集や企画が放送され、書店に行けば町中華に特化した雑誌が並び、YouTubeには中華料理店を訪れる動画が無数にあります。番組でも、ロケを行っていると至るところで"『町中華で飲ろうぜ』いつも観てるよ"という声をいただくことが増えました。番組のSNSには、ここの店がおいしい、あそこの店は店主のこだわりがすごいなど、連日たくさんの情報をいただくようになりました。これは、番組の放送が始まった2019年には想像できなかった光景です。

番組が立ち上がったのは、ちょっとしたタイミングや縁でした。当時、偶然にもBS-TBSでは"オヤジの飯テロ"を番組企画募集テーマの一つにしていました。どこか寂しい、どこか哀愁漂う世のオヤジが、心の底から楽しめ、元気になれる番組を作ろうとこのテーマを掲げ、数多く集まった企画のなかでひときわ輝きを放っていたのが「町中華で飲ろうぜ」だったのです。

当時、「町中華」ブームの予兆に目をつけていた、番組の演出・プロデューサーを担当している奥田幸紀氏と、放送作家の栗田智也氏が企画提案をしてくださいました。こうして誕生したのが『町中華で飲ろうぜ』です。その時の企画書1ページ目にはこんな記載が――どの町の駅前にもある、メシがあり、ツマミもあり、酒も飲める「昭和な町中華」。そう、冒頭にも書いたように、これが今なお番組のコンセプトとして、変わらず続いているのです。

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<樋口日奈さんはお酒はかなりいける口?>

番組開始当初は人気がなかった!?
さらにコロナが......

今でこそ人気番組となった『町中華で飲ろうぜ』ですが、放送開始から順風満帆であったわけではありません。特に、放送開始から最初の1~2年は苦戦が続きました。番組立ち上げ時の放送開始時刻は月曜23時。地上波放送とは異なり、実はBS放送ではかなり視聴率が下がる時間帯。さらには新番組とあって、いくら町中華ブームが到来しているとはいえ、いきなり視聴率が上がるわけでもなく、低空飛行が続きました。それでも、自分たちの信念を貫き、こだわりを大切に、じっくり育てていこうと地道に努力を重ね、放送から2年がたとうとする頃から、徐々に視聴率が上がり始めたのです。この間、何かを変えたのではなく、何も変えなかったことが功を奏したのだと思います。

しかし、喜びもつかの間。やっと軌道に乗ってきたと思ったら、今度は新型コロナウイルスが世の中を襲いました。緊急事態宣言下では何しろ"飲ること"すらできなくなってしまったのだから、それは大変でした。それでも、そこはこの番組らしく信念やこだわりを大切に、それまで訪ねたお店のなかからチャーハンSPや焼きそばSPなど料理で括った特別企画や、リモートを駆使した家飲み企画「ウチ中華」にチャレンジ。そして、コロナが番組に一つの変化をもたらしました。お店の選定方法です。

取材するお店はどうやって決まる?

実は、番組開始当初は玉さんや秋ちゃん、茜ちゃんがスタッフの事前交渉なくお店を突撃訪問していました。大まかなエリアだけ決めて、あとはよろしくお願いします、ということです。当然、断られるお店もあり、予定調和ではないハラハラドキドキも、この番組の見どころだったのかもしれません。苦労しながら撮影OKをいただいたときは、喜びもひとしお。

しかし、コロナでこのやり方ができなくなり、それ以降はあらかじめ撮影交渉を行い、貸し切りで撮影をさせていただくようにやり方を変えました。毎回、町や駅、沿線を決め、その周辺にある町中華を片っ端からリサーチし、同時に番組スタッフが実際に足を運び、町の様子やお店の雰囲気を肌で感じ、料理を味わい、候補を絞り込む。それでも、いざ取材交渉となって断られることも多々あって、心が折れそうになる時も......。今年に入ってから、久しぶりにお客さんがいるなかでの撮影を再開しました。貸し切りでは感じることができなかった、突撃訪問をしていた時の想い出がよみがえりました。

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<ビールは最近覚えたばかり!という清田みくりさん>

これが人気の秘訣!?
番組が大切にしている「こだわり」

言うまでもありませんが、グルメ番組や街ブラ番組は、地上波・BS・配信などに乱立しています。しかし、この番組は、単なるグルメ番組でも街ブラ番組でもありません。お店選びはもちろん、番組がそれ以上に大事にしているのは「町選び」。どうすればこの町の魅力を伝えられるかが一番のテーマ。そこの町には何があり、どんな人が暮らしているのか、町の個性によって、町中華のお店もさまざま。よって、ロケで出演者には「今日はこの町のこのお店に行きます」程度のことしか伝えません。ロケという形式ばったことではなく、日常の延長でその町を訪れるという雰囲気を大切に、自由にやってもらうスタイルです。ロケ台本と言うほどのものはなく、グルメドキュメンタリーと言う表現がぴったりと当てはまります。

5年間の集大成!
ビッグイベントの開催が衝撃の結果に

500店を超える町中華を訪ねていると、ラーメンはどこの店がおいしい? レバニラはどこが一番? おすすめのお店は? などとよく聞かれますが、順番がつくものでもありません。町中華は、お酒や料理はもちろん、お店のご主人や従業員、常連客、町、これらが掛け合わさって創り上げられるもので、"十店十色"だからです。

それでも、印象に残る出来事の一つは、2023年11月に開催した「町中華フェス」。番組を代表して4つのお店に出店していただきフードフェスを行いました。お店の方々にはご負担をおかけしましたが、どのお店からも"番組のために協力したい"と、とても温かいお言葉をいただきました。そして何よりも、来場いただいた方の多さに衝撃を受けました。キッチンカーやグッズ売り場には長蛇の列。トークショーでは朝から並んでいる方がいて、立ち見でも観られないぐらい、多くの方にお越しいただき、あの時の光景は今でも目に焼きついています。

日本各地の町中華の魅力を発信していきたい

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<6年目に入り"黒帯"の玉さんも絶好調>

繰り返しになりますが、ここ最近は番組を観ていただく方が本当に増えてきたことを実感します。これもひとえに、玉さん、秋ちゃん、茜ちゃんをはじめ、番組に関わってくださる全ての方のおかげ。まずは放送10周年を目指して、首都圏の町中華はもちろん、全国津々浦々の町中華にも、どんどん訪れていきたいと思います。

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