沖縄からアーカイブを考える 放送番組センターがセミナー開催

編集広報部
沖縄からアーカイブを考える 放送番組センターがセミナー開催

放送番組センターは6月26日、公開セミナー「放送アーカイブで語る沖縄の今」を那覇市の沖縄県立図書館で開催した。放送ライブラリーで公開されている沖縄関連番組の一部が同図書館で視聴できるサービス「サテライト・ライブラリー」が3月に始まったことを記念したもので、沖縄民放3局の制作者が沖縄から発信する上で心がけていることやアーカイブの意義などを語り合った。司会は上智大の音好宏教授が務めた。

琉球放送でラジオのワイド番組『MUSIC SHOWER Plus+』を担当する狩俣倫太郎氏は、昨今のウクライナや台湾をめぐる動きに触れ、「沖縄にいると国際情勢を肌で感じる。ラジコのおかげでエリア外への発信も可能になっており、沖縄に軸足を置きながら、全国に向けてどうすれば分かりやすく伝えられるかを常に考えている」と述べた。映画『ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記』を手掛けた沖縄テレビの平良いずみ氏は、「沖縄に生きる人の本音を描く」ことが制作の根底にあるとし、「『基地問題は全国の問題』という世論を喚起するのがメディアの役割。番組がアーカイブとして残り、教育現場などで活用されるのはありがたい」と語った。米軍に由来する環境問題を追い続けているのは琉球朝日放送の島袋夏子氏。土壌汚染に始まり、現在は生活に密着した水の問題を取り上げている。「沖縄の放送局にとって基地問題は最初からあるテーマ。それを見てもらえる番組にどう仕立てるかが問われている」と作り手の姿勢を提起した。

今年、本土復帰から50年を迎えたこととアーカイブの関係をめぐっては、「復帰の瞬間も含む自社のアーカイブ音源を多数聴き返した。人々が複雑な思いで復帰を迎えていたことが分かり、当時の空気や雰囲気が伝わった」(狩俣氏)、「復帰について何も知らないことに10年前に直面し、シリーズ企画を立ち上げてアーカイブを掘り起こした。人々の思いや悲しみ、社会の動きを映像で刻むことの重要さに気付かされた」(平良氏)、「今の時代、国内外の公文書館収蔵の映像が容易に検索できる。復帰前の社会背景や構造が見える映像、インタビューは宝物だ。当社は開局30年足らずでアーカイブは少ないが、社内になくともパソコン一つで探すことができる」(島袋氏)とそれぞれに述べた。

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<左から音氏、狩俣氏、平良氏、島袋氏

沖縄県立図書館での「サテライト・ライブラリー」の開始については、「客観的な情報をアーカイブで確認できる意義は大きい。県民の財産だ」(狩俣氏)、「教育現場には、復帰を子どもにどう伝えるか、悩みとともにニーズがある。面白く見てもらえるよう番組を作っている自負はあるので活用してほしい」(平良氏)、「自分の番組も見てほしいが、昔の番組や、噂に聞いていた他のエリアの番組が見られるのも有意義で楽しみだ」(島袋氏)とその意義を挙げた。

最後に今後の活動を展望。狩俣氏は「戦争からカルチャーまで、幅広く紹介していきたい。それが沖縄で暮らす人々のプライドにもなり、それを発信するのが放送人の仕事だ」と説き、平良氏は「"人間賛歌"を作りたいと思ってきた。人々の声を届けることが原動力。地道に続けていきたい」と意気込みを語った。島袋氏は「自分の家族や友人が知りたいと思うようなことを、手間と時間をかけて調べ、分かりやすく伝えるのが仕事だ。これからも成果を積み上げ、世代を超えて共有できれば」とアーカイブに即して話した。

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