TVQ九州放送『園芸させてもらえませんか?』 コロナ禍、「園芸」で明るい話題を届けたい!

結城 亮二
TVQ九州放送『園芸させてもらえませんか?』 コロナ禍、「園芸」で明るい話題を届けたい!

ゴーヤにカボチャ、ピーマン、サトイモ、キュウリ、ズッキーニなどが植えられたプランターの数々。そして手作りのウッドデッキの上に置かれた大きなビオトープ(水槽の中にさまざまな生き物が生きる環境を再現した空間)には、水草の隙間を縫って元気に泳ぐメダカの姿が。さらに、今にもほころびそうなバラのつぼみが、時おり吹く風に揺れている.......。今、福岡市博多区にあるTVQ九州放送(テレQ)福岡本社の屋上は、緑あふれる癒しの空間となっています。

収穫した夏野菜.png

<収穫した夏野菜

会社の屋上に菜園を作って収穫することを画策

全ての事の始まりは2020年の春先。コロナ禍で社会全体が閉塞感に包まれる中、私たちテレQアナウンサーズが、何か明るい話題を提供できないかと、殺風景だった会社の屋上の片隅にいくつかの花や野菜を植え、その様子をSNS上にアップし始めたのがきっかけでした。とはいえ、園芸知識はゼロの全くの素人。できた野菜は貧弱で、咲いた花は何だか弱々しい。あげくの果てには虫に食い荒らされる始末......。

それなら、その道の専門家にアドバイスをもらって、この苦境から抜け出し、ステキな屋上菜園を作っていく姿を番組にしよう! できた野菜はたくさん収穫をして、自分たちの家計の足しにしてしまおう!と、少々不純な動機?でスタートしたのがこの『園芸させてもらえませんか?』です。ちなみに番組タイトルは、この番組の前枠で放送されていた、出川哲朗さんが電動バイクにまたがり充電しながら旅をする、あの人気番組にあやかってつけました。(現在は枠移動しています(涙))。

番組が始まって痛感したのは、「知識」の大切さ。「夏は地熱で根がやられるのでプランターは直に置かない」「トマトは脇芽を取る」「鳥よけには不織布が最適」など、番組指南役をお願いしたホームセンター「グッデイ」の國分豊さん(園芸の専門家です)がアドバイスしてくれるのは、私たちの知らないことばかり。適切なご指導のおかげで、プランターの植物や野菜たちが見違えるように元気になりました。

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<國分さんからアドバイスを受ける中嶋 空アナ

失敗も成功もそのまま放送

番組の中で大切にしていることは、「演出」と「リアル」。両者のバランスを取りながら構成することで、子どもから大人まで親しみやすい園芸番組を目指しています。

例えば、植物の育て方のコツや成長具合には、一切ウソはありません。OAでは大豊作の収穫シーンばかりを見せたいところなのですが、虫やカラスによる被害や、植物が枯れてしまったというようなアクシデントも、全てありのまま放送しています。ジャガイモの葉が、「ヨトウムシ(夜盗虫)」という芋虫にあらかた食い尽くされてしまったこと、せっかくできたスイカが収穫間近というところでカラスに突つかれて割れてしまったこと、涙が出そうなほど悔しい事件も多々ありましたが、失敗も成功も包み隠さず放送することで、これから園芸を始めようという視聴者とも同じ目線で、番組を身近に感じてもらえるのではないかと思っています。

一方、演出の部分では、「昭和の香りのするコント仕立て」の寸劇を必ず入れるようにしています。私が大阪出身なこともあり、吉本新喜劇のような分かりやすいノリで、いわゆるベタなボケを交え、放送の冒頭、導入部分を紹介するようにしています。コマツナを植える回では「こまっつな~(困ったな~)」と周囲のスタッフを困惑させ、ワケギを紹介する際には自らの脇の毛をのぞき込む小ボケを挟む......といった具合です。無理やり出演してもらった当社社長は「勘弁してくれよ~」とテレつつ、カメラが回るとノリノリで迫真の演技を披露してくれました(笑)。そんな現場の楽しい雰囲気が伝わるのか、テレビを見てくれた子どもたちにも好評で、ほかにはない園芸番組になっているのではないでしょうか。

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<筆者(左)と櫻井譲士アナ、ブルーベリーで「ベリーグッド!」

もう一つ、この番組の大きな特徴は専任ディレクターがいないという点。出演するアナウンサー自らが演出、台本作成、小道具の製作から編集まで、全て行っているんです。番組オリジナルテーマソングの歌詞も、自分たちで考えました。番組台本は出演する結城(筆者)、櫻井譲士アナ、中嶋空アナが持ち回りで担当しています。私以外の2人は大阪に縁もゆかりもありませんが、「コント仕立て」の部分を必ず入れるよう強要......いや、リクエストをしています。そのこともあり、普段のニュースや実況、ナレーションといった仕事とは一味違った、それぞれのアナウンサーの素の部分、新たな一面を見ることができる、個性が「立った」番組になっていると思います。

3年目、壮大なプロジェクトに挑戦

2020年9月にスタートした『園芸させてもらえませんか?』は、いよいよ3年目に突入しました。視聴者からは、「番組を機に園芸を始めました!」「トマトをきょうは○個も収穫できました!」などうれしい報告も寄せられていて、昨今の園芸ブームの火付け役の一端を担うことができているのかな? などと、勝手にニンマリしております。

最初の1年目は、会社の屋上でさまざまな植物を育てることが中心だったのですが、2年目になると活動の幅も急拡大。福岡ソフトバンクホークスのファーム施設に番組の畑を作ったり、福岡市が進める「一人一花運動」の花壇づくりとコラボしたり、近隣高校の園芸部生徒たちと寄せ植え対決をしたり、さらにはハロプロのアイドルグループ「OCHA NORMA(オチャノーマ)」のメンバーととともにお茶の木を植えたりと、屋上を飛び出した新たな展開にも挑戦しました。また、地元のラジオ局・エフエム福岡のパーソナリティを屋上菜園に招き、一緒にイチゴを植えるなど、メディアの垣根を越えた交流も始まり、番組としての広がりも見せています。

3年目の今年はさらなる壮大なプロジェクトも動き出しました。福岡市からほど近い島の広大な敷地を借り、地元の子どもたちと一緒に野菜作りに挑戦する計画が進行中です。この番組は、毎月2回、5分間のミニ番組(第1・第3日曜日の12時55分~13時)なのですが、今でさえ盛りだくさんな内容なのに、新展開が実現すると、もう枠に収まりきらないのではないかと、ドキドキしています。そうなると、放送枠を週1回にするか、放送時間を30分に伸ばすか......。

私の本業は野球を実況するスポーツアナなのですが、最近は球場にいる時間よりも、植物と過ごす時間の方が多くなっているような......。それは冗談としても、2年前、屋上の一角で、私たちだけでひっそりと園芸をしていたことを考えると、日の光をたくさん浴びた植物のように、ここまで番組がスクスクと成長したことに感無量の思いです。

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<番組とともに成長したテレQ産スイカ

過去に放送した番組は全てアーカイブされ、番組ウェブサイトまたはYouTubeの番組チャンネルから閲覧が可能です。これから家庭菜園に挑戦してみようという皆さん!番組を見て、園芸知識を身につけていただき、私たちの寸劇にクスリと笑っていただければ幸いです! タネをまき、花が咲く喜び、収穫する喜び、この番組を通して、園芸の輪が広がることを願ってやみません。園芸って楽しいですよ~!!

最後に、『園芸させてもらえませんか?』の番組オリジナルテーマソングの歌詞をどうぞ。

「幸せのたねをまこう 喜びのたねをまこう

愛情いっぱい育てたら きっと笑顔の花が咲く」

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