在京テレビキー5局とNHKが気候変動対策を呼びかける動画を共同制作し公開中だ。6局のアナウンサーや気象予報士、マスコットキャラクターなどが多数出演し、気候危機を食い止めるためにメディアが率先して取り組む覚悟を宣言するとともに、個人ができるアクションなどを促している。
動画は、国連と「SDGメディア・コンパクト」加盟のメディア有志によるキャンペーン「1.5°Cの約束―いますぐ動こう、気温上昇を止めるために。」の一環。世界の平均気温の上昇を産業革命以前と比べて1.5°Cに抑えるため、個人や組織に行動変容を促すことを狙いとしている。「メディアだからできること、まだやっていないことがある」などと宣言する短いバージョンと、各局の省エネ対策やリサイクルの取り組みなども紹介するフルバージョンがある。国連広報センターのユーチューブチャンネルのほか、各局のニュースサイトなどで公開しており、非営利目的でキャンペーンに賛同する取り組みであれば動画を自由に利用することができる。
6月に始まったキャンペーンの発起人の一人で、6局連携のコーディネーターを務めたNHKエンタープライズの堅達京子エグゼクティブ・プロデューサーは、「志を同じくする民放キー局の仲間たちと"言い出しっぺ"になり、各局が連携する姿を示すことでキャンペーンの牽引力になりたいと思った」と立ち上げの狙いを語る。テレビ離れが進む中で、テレビの力をあらためてアピールしたいとの思いもあったという。キャンペーンには多数の民放局に加え、新聞社、通信社、ウェブメディアなどが名を連ねており、開始当初の108社から10月5日現在で145社まで参加メディアを増やした。
9月25日にはNHK総合で特番(10・05―11・00)も放送した。動画に登場したキー局のアナウンサーらがNHKのスタジオに集まり、各局が気候変動にまつわる動きをリポート。干ばつや水害など世界で進行している影響に加え、二酸化炭素削減のための最新技術や脱炭素ビジネス、再生エネルギーの最新動向などを紹介した。さらに、「個人でできる10の行動」に基づいて一人ひとりのアクションの重要さを語り合った。番組の制作統括も務めた堅達氏は「6局は防災・減災プロジェクトで連携した前例があったため、スムーズに動くことができた。キャスターが声を揃えて訴える映像には、危機感を共有して自分ごとにするうえでインパクトがある」と振り返る。
動画に対しては、企業や自治体などから「研修で使いたい」とのオファーが寄せられたほか、国連本部からも高い評価を得ているという。「キャンペーンはCOP27最終日の11月18日まで続く。動画の拡散に一層努めたい」と堅達氏。「今回の連携を次につなげたいと各局で話している。番組制作に伴う二酸化炭素排出の見える化と削減など、映像メディアに共通する課題も浮き彫りになった。これを機会に新しい連携の形を模索したい」と今後を展望する。