複数のEVメーカー、AMチューナー非搭載に 米NABや行政が警鐘 災害時の必要性強調

編集広報部

電気自動車(EV)が発する電磁波がAMラジオ波を妨害し、雑音で聞きにくくなることを理由に、米国では自動車メーカーによってはすでにEVモデルからAMチューナーを非搭載としている。この問題が浮上してから、AMラジオ業界は強く反発していたが、業界団体や行政、米連邦緊急事態管理庁(FEMA)も一斉に警鐘を鳴らし始めた。

全米放送事業者協会(NAB)のカーティス・ルジェット会長が3月8日(現地時間)、声明文をウェブ上で発表している。「災害で避難する際、人々の移動手段は主に車だ。携帯電話もインターネットも繋がらない時、避難民の情報源であり命綱となるのはAMラジオである」「しかし、フォード、テスラ、BMW、アウディなどの自動車メーカーは、EV車からAMチューナーを排除してしまっている」などと、緊急事態におけるAMラジオの必要性を強調し、非搭載としたメーカーを批判した。また、「2021に年世界中で行われた車の購入調査の結果、地上波ラジオは全車に搭載するべき規格だと考える消費者は10人中9人に及び、10人中8人がそれ以外の車は購入やリースをしないと答えている」と、消費者サイドの需要にも触れている。さらにFEMAが、「AMラジオが車に搭載されなくなれば、将来、緊急対応時に深刻な問題が起こる」と、米運輸長官あてに文書を送っていることにも言及し、政府介入の必要性を示唆した。

同時にルジェット氏は、EVモデルにAMチューナーを搭載するために、必要な対応策を講じている自動車メーカーも多いとし、そのためのテクノロジーが存在することにも指摘した。

エドワード・マーキー連邦上院議員(民主・マサチューセッツ州選出)はこの問題を重要視し、昨年12月、世界中の主要自動車メーカーに質問状を送っている。それに対する返信が、メーカーによって全く異なる内容だったという。すでにAMチューナーをEVから除外しているテスラは、「EVの電磁波がAM波を妨害するため仕方がない」との返信だったという。一方韓国メーカーのKiaは、「AMラジオを削除するつもりはない。当社のEVではAM波妨害問題については聞き及んでいない」と、真逆の内容だった。

マーキー上院議員は、「緊急時におけるAMラジオの重要性を理解していない自動車メーカー」として、8社を名指しして挙げている。同議員は、「これら自動車メーカーは一様に、デジタルラジオがAMの代わりになると主張するが、災害・緊急時にドライバーがインターネットにアクセスできるとは限らない。AMラジオはかけがえのないもの」と主張している。

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