米ハリケーン報道でローカル局が努力 ラジオの存在も際立つ

編集広報部

大型ハリケーン・イアンが9月末にフロリダ州を襲い、暴風雨のため被災地の放送・通信インフラにも相当なダメージを与えた。米連邦通信委員会(FCC)の発表によると、9月28日時点でテレビ6局、ラジオ21局(AM6局、FM15局)が停電や設備損壊の被害を受け、放送を停止。携帯電話の基地局も約11%がダウンした。影響は約53万世帯にも及び、契約しているテレビ、インターネット、電話を含むサービスを利用できない状態になった。そうした厳しい状況の中で、地元住民にハリケーン情報を提供するためのローカル局の努力が目立った。

ケーブルテレビのディレクTVはハリケーン接近に合わせ、専用テレビチャンネルSevere Weather Channelと、それとは別にSevere Weather Mixチャンネルを開設。24時間体制で、ローカルテレビ局やウエザーチャンネル(天気専門のテレビチャンネル)などと連携し、接近するハリケーンの様子をライブ報道した。視聴者がその進路や脅威レベルを知り、避難経路を確認できるよう必要な情報を流した。

気象報道に特化したFOXFAST(free ad-supported television)サービスFox Weatherも、ハリケーンが接近する様子を24時間体制で報道。Fox独自の気象予報センターと、タンパベイの地元局WTVTが共同開発した「Fox Model」と呼ばれる高解像度予測モデルを駆使しての、初の大型ハリケーン報道となった。

同州各地のローカルテレビ局はいずれも、ハリケーン上陸の前の週から報道体制を整え、テレビ画面だけでなく、あらゆるデバイスで視聴者に情報提供できるよう備えた。ハーストテレビジョンなどはローカルアプリ経由で、オーランドとウェストパームビーチの街の様子を隅々までライブ中継。タンパ=セントピータースバーグなど同州南西部のローカルテレビ局も、ハリケーン直撃後、停電しながらも非常用発電機を駆使し、テレビと自局のウェブサイトで住民にライブ放送・配信を続けた。

ハリケーン上陸後の急激な状況悪化に伴い、人命救助を最優先するにあたって際立ったのが、ラジオの存在だった。Coxメディアグループなどが所有する同州の各放送局は、「インターネットも携帯電話もつながらない時に、唯一頼れるのがラジオ」「ラジオ局はリスナーのために存在し、24時間365日、人命を救うための情報を提供する準備ができている」などとラジオメディアInside Radioにコメントしている。同州タンパにあるBeasleyメディアグループの局には、クラシックロックのWPBBや、カントリーミュージックのWQYKなど多数あるが、通常の番組進行をキャンセルし、ハリケーン情報の提供に徹したという。また、スペイン語を話す住民が多い同州において、スペイン語のラジオチャンネルも重要な役割を果たした。

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