アナログだけどワクワクする企画で
リスナーを巻き込みたい!
2022年、開局30周年を迎えたエフエム徳島。このアニバーサリーイヤーに"長年聴いてくださっているリスナーに感謝を届けたい"、そして"まだ見ぬ新しいリスナーとの出会いを広げたい"。その両方を実現するための企画を考え、「旅するノート」が生まれました。
「ラジオとの思い出」「地元自慢」「今行きたい場所」「大切にしている言葉」など、手書きのメッセージを自由に書き込んだノートを、家族でも、職場でも、旅先で出会った見ず知らずの方でも、誰でもいいので次の人へ手渡しでつないでいくというあてのない旅......。
<近藤アナウンサーと「旅するノート」>
人の善意に頼りきったアナログな方法で、果たして旅は続くのか、何冊のノートが私たちのもとへ帰ってきてくれるのか、全くの未知数でしたが、だからこそ予想だにしない展開が生まれてくれるのではないかという淡い期待がありました。
何より、手書きのメッセージが顔も名前も知らない誰かに届くかもしれないスタイルが古き良きラジオの性質にも通ずるものがあるように感じて、スタッフはもちろん、企画を発表した際にはリスナーからもどこかワクワクしている反応が感じられたのです。
旅のはじまり
「旅するノート」は、エフエム徳島で毎年恒例となっている阿波おどりの公開生放送の会場からスタートしました。開局30周年にちなんで、用意したのは全部で30冊。ノートの1ページ目は「公開生放送会場の観客」「参加募集にエントリーしてくれたリスナー」「エフエム徳島のパーソナリティ」などに託しました。
最初こそ放送関係者や常連リスナーなど、エフエム徳島と縁の深い面々の間を旅していたノートでしたが、時がたつにつれ、北は北海道、南は九州まで、普段ラジオを聴く・聴かないにかかわらずさまざまな人の手に渡っていきました。
<ラジオネーム:まどねえさんからのメッセージ>
ありがたいと思ったのが「旅するノート」というタイトルをおもんぱかって、実際にノートを持って地元の観光名所を旅してご当地スタンプを押してくださったり、地元のB級グルメの写真を貼ってくださったり、その旅の様子をTwitterで「#旅するノート」「#FM徳島」を付けて呟いてくださったり......、このノートに愛着を持って参加してくださった方が多かったことです。中には、県外にお住まいで、この企画をきっかけにradikoでエフエム徳島を聴き始めたという方が番組にメッセージを送ってくれることもありました。
こうした全国各地からのあたたかい思いが詰まった「旅するノート」は、約半年間の旅を終えて、最終的に4冊のノートが私たちのもとへと帰ってきてくれたのです。
<ラジオネーム:ねこやなぎさつこさんからのメッセージ>
特別番組「旅するノートのおみやげ話」
全国のリスナーと徳島のラジオ局がつながった不思議な旅
30冊中4冊......、ちょっと少ないと思われるかもしれません。実は、(私個人としては)企画をスタートさせた頃は「1冊でもいいから帰ってくれさえすれば番組化できる!」と思っていました(よくこんな不確定要素の多い企画が通ったものだと)。そこから考えれば実に4倍! 万々歳です。
開局30周年を締めくくる今年3月には、このノートの旅を報告するべく特別番組『旅するノートのおみやげ話』を制作しました。
<特番の収録風景>
帰ってきた4冊はそれぞれ面白い旅をしていました。例えば「No.1」のノート。リスナー同士でSNSを通じて参加を呼びかけあい、北海道から九州まで最も長い距離をあちこち旅してくれました。放送では北海道や愛媛県、茨城県でノートを受け取ってくれた方に電話をつないで、ノートを受け取った時のお話やお互いの地元自慢などを繰り広げました。
「No.9」のノートは三重県に渡っていました。受け取った方は、三重のラジオリスナーが集まるお店に交渉し、元々置かれていた雑記帳の隣に「旅するノート」を"ホームステイ"させるという予想外の旅をしていました。さすがラジオ好きな方が通う店ということもあり、あっという間にノートは裏表紙までいっぱいにメッセージが書き込まれていて、遠く離れた三重の地のラジオ愛の熱さを感じました。
<ラジオネーム:モーニング・チャイさんからのメッセージ>
ノートに書き込まれたメッセージや、受け取られた方々との電話つなぎを通じ、まさに「旅のおみやげ話」は番組内には収まりきらないほど尽きませんでした。新たな出会いとあたたかいご協力にあらためて心から感謝の気持ちがこみ上げてきました。
いまだ旅の途中にある残りのノートも、いつか巡り巡って帰ってきてくれるかもしれないし、何年後かにリスナーの家から発掘されるかもしれない。それはそれで新たなドラマを生んでくれそうな、未来への楽しみが残る旅になったと思います。
10年後、20年後......新たな旅へ向けて
当たり前ですが、いくら普段の放送で「ラジオを、エフエム徳島を聴いてね!」とアピールしたところで、すでに聴いてくれている人にしか届きません。そういった意味では、実際に関わりを持った数という意味では少ないかもしれませんが、今回のような一風変わったアクションでこれまで接点のなかった"未来のリスナー"と接触できたことは大きな収穫だと感じます。
旅の方法こそアナログでしたが、ノートをきっかけに県外のリスナーがradikoを利用して番組を聴き、メッセージを送ってくれるようになる流れは近年のデジタル化があってこそ。40、50周年を迎える頃にはラジオを取り巻く環境がどのように変化しているかはわかりませんが、それぞれの良さを享受しつつ、魅力あるコンテンツを創り、提供していくことが私たちラジオ局の変わりないあり方であると「旅するノート」は教えてくれました。
エフエム徳島は開局30周年。
まだまだ旅は始まったばかりです。