米政府がアルファベット社傘下のGoogleの分割と解体を検討していると米各紙が報じている。連邦地方裁判所は今年8月、オンライン検索市場の9割を占めるGoogleを反トラスト法(独禁法)に抵触するとの判決を下し、司法省とGoogleの双方に是正案の提出を求めていた。これを受け、司法省はOS「Android」、ウェブブラウザの「Chrome」など保有する事業の一部売却を含む是正勧告措置をとる可能性があることを10月8日に明らかにした。
司法省はさらに詳細な勧告案を11月20日までに裁判所に提出する模様だ。これに対してGoogleは「判決の法的な範囲を超えた明らかな越権行為」と反発。対抗案を12月20日までに裁判所に提出できる。司法省の勧告が実現すればGoogleの主たる収入源が弱体化され、競合他社に参入の機会を促し、米国内でのオンライン検索市場が大きく様変わりする可能性も秘めている。しかし法廷闘争にもつれこんだ場合は、その実現は限りなく不透明に近いとの見方も強い。
今回明らかになった司法省の是正案ではデバイスメーカーへの多額の費用支払いを禁じる可能性もある。これまでGoogleは新しいデバイスでデフォルトの検索エンジンとしてGoogleが搭載されるよう、Appleなどのスマホやタブレット、PCメーカーに相当の金額を支払っていた。その額は2021年に総額263億㌦に上るとの報道もある。
将来的にはGoogleがAI分野を独占するのを未然に防ぐため、AIモデルの開発に際してGoogleだけが有利にならないようにする可能性もある。例えば、AI機能の拡大に用いる検索結果やこれまでに蓄積したデータを競合他社と共有することを義務づける、などだ。これによって市場競争をより健全なものにしていくことが狙いだ。これに対してGoogleは「これから大きな成長が見込まれるAI産業そのものを抑圧することになる」と反対姿勢を示している。
10月7日には、これとは別の訴訟でカリフォルニア州の裁判所がAndroidのスマホでアプリをダウンロードするために「GooglePlay」ストアの代替手段を提供することをアルファベット社に命じており、司法省も別の訴訟でGoogleのウェブサイト広告事業を解体・分割するよう求めている。株式時価総額が約2兆㌦を超え、世界第4位の企業であるアルファベット社は独禁法関連の訴訟が山積状態だ。
また米政府は、独禁法に抵触するとしてGoogleだけでなくMetaやApple、Amazonにも同様の訴訟を起こしている。ただ、今回のGoogle"解体"について業界専門家からは実現は難しいとの声が上がっている。米政府は1998年にもMicrosoftにOS「Windows」の市場独占をめぐる訴訟を起こしているが、2001年に和解に至り、政府の完全勝利とはならなかった。対Googleの今回はそれと同等、またはそれ以上の社会的影響力を持つとして業界内外の注目を集めている。