Inter BEE 2022 幕張メッセとオンラインで開催

編集広報部
Inter BEE 2022 幕張メッセとオンラインで開催

電子情報技術産業協会(JEITA)が主催するInter BEE 2022(国際放送機器展)が11月16―18日、千葉市の幕張メッセでオンラインを併用して開催された。放送機器や技術の展示のほか、民放関係者らが登壇した講演なども行われた。オンライン上の会場は12月23日まで公開されており、一部を除いたコンファレンスのアーカイブ配信などが行われている。


17日の基調講演「IPTV Forum コネクテッドTV ―国内サービスの現状とこれから―」では、井田俊輔・総務省情報流通行政局情報通信作品振興課長、須賀久彌・TVer取締役、西村規子・NHKメディア総局デジタルセンター長が登壇。村上圭子・NHK放送文化研究所メディア研究部研究主幹がモデレーターを務めた。

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<左から村上氏、西村氏、須賀氏、井田氏

はじめに井田氏が「放送コンテンツ流通に関する現状と課題」と題した講演を行い、放送事業者によるネット配信の取り組みやネット空間における諸課題などを説明した。次に、VTRで江﨑浩・IPTVフォーラム代表理事が「Digital Native Media/Infrastructure への進化」をテーマに講演。新しいインフラ上で「従来とはレベルの異なるコンテンツ展開や利用が始まりつつある」と語った。

続くパネルディスカッションでは須賀氏、西村氏がそれぞれTVerとNHKプラスの「現状とこれから」を説明。須賀氏は今後の取り組みとして、▷TVer対応デバイスの増加、リモコンボタン獲得▷広告セールス▷ローカル局との連携を挙げた。西村氏はNHKプラスの番組配信率について、総合テレビが96%、Eテレが85%と紹介。また、今年10月から関東甲信越と関西の地域局11局の18時台ニュースの配信を開始し、残りの局についても「来年の早い段階で配信できるよう準備を進めている」と語った。コネクテッドTVについて井田氏は、テレビデバイスがインターネットにつながることで、利用者がアテンションエコノミーの影響を受けることとなると指摘。信頼できるコンテンツを届ける仕組みを「テレビメーカーを含めて検討する必要がある」と述べた。

18日の特別講演「ラジオの向こうに何があるか?!」は、パネリストに川喜田尚・大正大教授、大沼耕平・MBSラジオ『MBSヤングタウン』プロデューサーに加えて、デジタル音声広告事業などを行うオトナルの八木太亮・代表取締役が登壇。音好宏・上智大教授がモデレーターを務めた。

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<左から音氏、川喜田氏、大沼氏、八木氏

はじめに、音氏がこれまでのラジオ経営に関する議論について整理。川喜田氏はゼミ生が行ったradikoについての研究を取り上げ、無料で聴取できるエリアのブロック化や料金プランの充実など学生の提言を紹介した。大沼氏は『MBSヤングタウン』の事例を説明。放送だけでなく、イベントの実施や番組グッズを制作してマネタイズしていると語った。八木氏はデジタル時代のラジオについて、市場の変化やポテンシャルを踏まえ、「今後どうあるべきか」を提言。「ラジオは広告単体を売るのではなく、オーディオ戦略(デジタルの複合的なソリューション)を提供していく必要がある」と海外のラジオ局経営者の言葉を紹介した。

最後に音氏が今後のラジオの展望について提起。「ラジオは宣伝において外せないメディアと広告主に認識してもらえるかが重要」(川喜田氏)、「コンテンツを制作し続けることが使命」(大沼氏)、「放送を主軸としたうえで、コンテンツの出し方を多角化することでリーチできる層は広がる」(八木氏)とそれぞれ語った。

同日の企画セッションでは「ローカル局の意義・役割を、放送の外側から考える」も開催。TVQ九州放送の永江幸司氏がモデレーターを務め、楽天グループの柘植正基氏、メディアを活用した企画や事業の立案・制作などを行うトーチの佐野和哉氏、JリーグのサッカークラブFC今治を運営する「今治.夢スポーツ」の矢野将文氏が登壇した。

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<左から永江氏、佐野氏、柘植氏、矢野氏

永江氏が、ローカル局を取り巻く現状についてプレゼンテーションを行い、本セッションの狙いとして「ローカル局の存在意義・役割をアップデートするヒントにしたい」と語った。続いて各氏が地域と関わる取り組みを紹介した。

続くディスカッションでは、「なぜ地域にこだわるのか?」という問いに対して、「需要を掘り起こして発信できるポテンシャルがある」(柘植氏)、「人口50万人の松山市に対して、今治市は15万人で"隠れる場所がない"。こだわりではないが、"主人公感"があり、面白さが確実にある」(矢野氏)、「視聴率などこれまでの指標では測れない価値がある」(佐野氏)と考えを示した。

ローカル局に感じる「強み」や「もっとやれること」ことについては、「過去を含めた地域情報の蓄積、企画やコンテンツ制作力、地域とのネットワークが強み。一方で、視聴後に、購入や体験に繋がらないと媒体としての価値が見出されない。テレビとネットの強みを掛け合わせることで新しいものが生まれる」(柘植氏)、「企画のプロデュースや情報のポイントを伝える技術が強み。共感によって成り立ち、"求められるもの"を提供する時代になっているので、変化への対応が求められる」(矢野氏)、「テレビに対する信頼感が強み。発信するだけでなく、発信を含めた活動を視聴者と一緒に行うことが必要」(佐野氏)とローカル局に対する思いを語った。

放送機器の展示では、NECとTOSHIBAがクラウドマスターの展示を行った。両社ともに開発は約1年前から開始、展示物のクラウドはAWSを使用していた。実用化目途の想定について両社の説明員はそれぞれ「2030年ごろ」(NEC)、「2030年代」(TOSHIBA)と語った。いきなりクラウド化とするのではなく、IPマスターを経てクラウドマスターを導入という流れになる見込みだという。

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