放送技術者必見!第62回民放技術報告会 新企画「ポスターセッション」&MoIP特別企画を担当者が語る【Inter BEE同時開催】

編集広報部
放送技術者必見!第62回民放技術報告会 新企画「ポスターセッション」&MoIP特別企画を担当者が語る【Inter BEE同時開催】

民放連技術委員会(委員長=林泰敬・東海テレビ放送社長)は、11月19~21日に「第62回民放技術報告会」を千葉市の幕張メッセ・国際会議場3階で開催します(Inter BEE2025と同時開催)。民放技術報告会を企画・運営する民放連の「民放技術報告会ワーキンググループ」で2025年度主査の菊地裕介さん(テレビ東京・テック運営局テック業務部副部長、=写真㊨)と20日に開催される特別企画でコーディネーターを務める杉原賢治さん(テレビ東京・テック開発局システムイノベーション部長、=写真㊧)に、今年の見どころなどを聞きました。
民放技術報告会のタイムテーブルなど詳細はこちらからご覧いただけます。(編集広報部)


―――自己紹介と「民放技術報告会」での役割を教えてください
(菊地) テレビ東京の菊地裕介です。現在は、所属局の放送設備や諸費などの予算管理を担当し、局の活動が適正に実行されるよう会計面から統制とサポートを行っています。これまでは、カメラマンや放送設備の構築など、現場業務に従事してきました。ワーキンググループ(WG)で2025年度は主査として、報告会が民放各社の技術交流と発展に貢献できるよう、企画立案から運営までを担い、今年は新たにポスターセッションなどの新企画の導入・推進も統括しています。
(杉原) テレビ東京の杉原賢治です。社内では、将来の放送システムやIPシステムとの融合、さらなる効率化を目指した将来の仕組みの企画を担当しています。今回は、民放技術報告会の「特別企画」のコーディネーターを務めます。

――今年の報告会の概要と見どころを教えてください
(菊地) 今年の民放技術報告会は、新たな試みを取り入れ、例年以上に充実した3日間の開催を予定しています。核となる技術報告に加え、ポスターセッションという新企画を実施します。これにより、よりカジュアルかつ深い技術交流の場を提供できると考えています。
さらに、放送業界が直面する重要なテーマを取り上げる「特別企画」も見どころの一つです。新しい取り組みと、従来から続く質の高い技術報告が融合することで、民放技術の「今」と「これから」を体感できる場になると確信しています。

――そもそも報告会とはどのようなイベントですか?
(菊地) 民放技術報告会は、全国の民間放送局が日頃取り組んでいる放送技術の研究や創意工夫を発表し、その知見を共有することで、業界全体の技術水準を高め、放送業界の発展に貢献することを目的としたイベントです。
毎年Inter BEEと同時開催されているのも特徴で、実は報告会の方が歴史は古く、1965年の第2回民放技術報告会の開催時に、民放連の呼びかけで「放送機器展」としてInter BEEが始まりました。両者は、放送業界の発展のために60年以上にわたり共に歩んできた歴史があります。
今年は、計44件の技術報告を予定しています。技術報告は基本的に1コマ25分で、プレゼンテーションの後に質疑応答が行われます。制作技術や送出、CGといった放送に関する発表だけでなく、事業イベントなどで実施されたオンエアに直結しない取り組みも対象となっており、全国の技術者がどのようなテーマに取り組み、どのような技術分野の広がりがあるのかを実感できる、非常に重要な技術情報交換の場です。

――多様なテーマがあると思うのですが、注目の発表などはありますか
(菊地) 近年では、AIなどの新技術を放送分野に活用した取り組みの報告が増えており、業務に役立ちそうだと注目しています。特別企画のテーマでもある「Media over IP(MoIP)」も報告が増えてきた分野で、全国の放送局が関心を寄せているテーマだと感じています。
また、民放技術報告会では、部門ごとに技術報告がされます。例えば、制作技術に携わっている方であれば、初日19日(水)の11:00~16:45に開催される「制作技術部門」の発表がおすすめです。Inter BEEの会場に足を運び、報告会で興味のある発表を聴講するという流れを想定しています。
運営側としては、「いかに参加者の皆さんに効率よく、深い学びを得ていただくか」を最も重視しています。そのため、プログラム編成の段階で、なるべく近い分野のテーマを連続して配置することで、興味のあるセッションを続けて聴きやすいように工夫しています。
(杉原) 私自身これまで報告会に参加してきた経験では、狙っていた発表の前後のセッションも聴いてみると、新しい気づきが得られることがありました。同じ会場で関連するテーマが並んで発表されているので、ぜひあわせて聴いてみることをおすすめします。

――ご経験から感じた報告会の魅力はどのようなことがありますか
(菊地) 報告者としての魅力は、日々の地道な研究や創意工夫の成果を、全国の技術者と共有できることに尽きると思います。社外の技術者から鋭い質問や新たな視点を得ることで、自分の取り組みを客観的に見直すことができ、その後の開発や業務を加速させるきっかけになります。
その裏返しとも言えるのが、聴講者としての魅力です。日頃接点のない他局や他分野の技術に触れることで、自社では思いつかなかったアプローチを発見できるなど、最先端の動向を俯瞰しながら、自社の技術課題解決のヒントを得られる点が魅力です。実際に私は疑問があれば積極的に質問をし、他局の技術者の方々と交流することで、多くの気づきを得てきました。
もちろん、現在携わっている業務に直接役立つヒントだけでなく、多岐にわたるセッションの中から、自分が知らなかった技術の広がりを感じられるのも、この報告会ならではの魅力です。
(杉原) 私はこれまでに2回技術報告をしました。会場で質問をいただいた後に名刺交換をし、社外の方とネットワークができるなど、コミュニケーションの機会につながりました。社外に仲間ができるという点でも、登壇は予稿集の作成など苦労もありますが、大きな糧になると思います。今年技術報告がない方も、来年はぜひ取り組みを発表してみると、きっと良い経験になると思います。

――しかし、会場での質問は少しハードルが高そうです
(菊地) 報告者と聴講者のコミュニケーションは、報告会の大きな魅力のひとつだと思っています。ただ、大勢の前で質問するのはハードルが高いと感じる方も多いようです。そこで今年からの新たな試みとして、報告者と聴講者が気軽に交流できる「懇談コーナー」を報告会場付近に設けます。スポーツ中継のミックスゾーンのようなイメージで考えました。報告会の質疑応答の時間内では聞けなかった込み入った話や、本音の技術談義を交わせる場として、より深い技術交流を促進することを目的としています。この取り組みによって、報告会が一層実りある交流の場になることを期待しています。

――冒頭、もう一つ新しい企画が始まると伺いました
(菊地) 今年から新たに始まるポスターセッション(=下図)は、従来の報告会とは異なり、報告者が展示スペースで研究内容を説明し、聴講者と対面で議論する形式をとります。場所は、報告会の各会場のすぐ目の前です。
口頭発表が「聴く」形式であるのに対し、ポスターセッションは「対話」と「交流」が中心です。これにより、興味のあるテーマについて、時間や周囲を気にせず、深く掘り下げて質問することができます。報告会本体とはまた違った、よりフランクで建設的な技術者同士の交流の場として期待しています。

――ポスターセッションを企画した意図はなんでしょうか
(菊地) ポスターセッションを企画した最大の目的は、民放技術の裾野を広げ、技術者同士の交流を促進することです。
従来の報告会では、部門に準拠した完成度の高い研究や、大規模な開発事例が中心でした。しかし、「どの部門で参加すればよいか分からない」といった相談を受けたこともありました。そこで、ポスターセッションを設けることで、従来の部門に当てはまらない新たな分野やテーマのエントリーを促しています。
また、報告のハードルを大幅に下げたことも重要なポイントです。まだ初期段階のアイデアや、オンエアに直結していない簡易な創意工夫、小規模ながらユニークな取り組みも歓迎しています。そのため、「民放技術報告会はハードルが高い」と感じている方や、予稿集の執筆が不要なため、忙しくて資料準備に時間を割けない方にも、ぜひ挑戦していただきたいと考えています。
報告会本体との違いは、こうした多様なテーマを扱える柔軟性と、先ほど申しあげた対話形式にあります。会場も工夫しており、報告会とポスターセッションの両方を自由に行き来できるよう設計しています。これにより、相互に刺激を与え合う相乗効果を狙っています。

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――今年の特別企画のテーマと、そのテーマを選定した理由を教えてください
(菊地) 今年の特別企画のテーマは、放送システムのIP化「Media over IP(MoIP)」です。実はこのテーマは、WG内で数年前から候補に挙がっていました。MoIPを選定した最大の理由は、現在、放送業界が従来の伝送規格であるSDIからMoIPへと大きな変革期を迎えており、この技術の進化と導入が放送技術者にとって非常に興味深く、かつ喫緊の課題となっているためです。
本企画では、現場の技術者が直面するリアルな課題や実践的なノウハウを共有する場とすることで、MoIPに対して不安を感じている方々が、具体的なヒントを持ち帰れるような内容を目指しています。
(杉原) 今年の特別企画のテーマとコーディネーターのお話をいただいたとき、「まさに今、このタイミングで取り上げるべきテーマだ」と感じました。私自身も、MoIPの検討に取りかかっているところで、SDIでのシステム構築であれば「こうすればよい」というノウハウがありますが、IPで構築する場合は「何が正解なのか」と悩みながら取り組んでいる状況です。各社の本音を聞いてみたいと思っていたところでした。
「放送システムIP化のリアルと本音 ~もう悩まない!MoIP導入の必勝パターンを探る~」というタイトルで、聴講に来ていただく皆さんの関心に応えたいと思っています。

――IP化にあたって放送局の多くが悩みを抱えているのでしょうか
(杉原)放送システムのIP化にあたっては、これまで培ってきたノウハウの延長線上で考えられることと、新しい技術に対応するために変えなければならないこと、その両面を踏まえて導入を進める必要があります。
現在、民放各社の中では、MoIPに関するノウハウが徐々に蓄積されてきている段階です。これからプロジェクトチームを立ち上げて本格的に動き出す局も多いと思いますので、今回の特別企画が、そうした局にとって参考になるような内容になることを目指しています。

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――特別企画の見どころやイチオシポイントを教えてください
(杉原) 今回の特別企画では、パネリストとして7人の方々をお迎えします(=上図)。いずれも、IP化の最前線で取り組まれている各局のエンジニアの方々です。実体験に基づいたお話を伺いながら、現場で感じている課題についてディスカッションを行う予定です。
当日は、全社的にIP化を進めた局や、段階的に導入した局の事例をもとに、実践的な知見を会場の皆さんと共有します。システム導入や運用の課題、人材育成まで含めて、さまざまな観点から2時間半かけて深掘りし、「これが放送局目線の必勝パターンだ」と思えるものを探っていく予定です。

――最後に報告会をどのような場にしていきたいですか
(菊地) 今年の報告会は、新たな試みであるポスターセッションの導入により、より多様な交流が生まれる場にしたいと考えています。今年の報告会の核となるメッセージは、「技術者同士のつながりの創出」です。
ポスターセッションや発表後の懇談コーナーといった新しい仕掛けは、技術者がフランクに交流できる「人」と「人」のつながりを深めるために導入しました。また、特別企画でMoIPを取り上げたのも、技術がSDIの「1対1」からIPの「汎用ネットワーク」へと進化する中で、技術的な「つながり」のあり方を探るためです。
従来の聴講者だけでなく、「まだ報告会に来たことがない放送関係者」や「自分のアイデアを試してみたい技術者」、そして「社外との交流の場を求めている若手技術者」など、幅広い来場者に参加していただくことで、技術の化学反応が起こる場にしたいと考えています。また、放送業界に興味を持ってくださっている学生の皆さんも大歓迎です。
最終的には、この民放技術報告会が、全国の技術者が技術の面白さを再認識し、新たな一歩を踏み出すための「出発点」となるような、活気に満ちた未来志向の場にしていきたいと思っています。
(杉原) 特別企画では、MoIP、つまり放送システムのIP化にフォーカスして深掘りしますが、例えば、▼「IP対応を考えないといけないけど、どうすればいいのか」と悩んでいる放送現場の方、▼IP化を通じて、どのような計画や投資効果を目指すかを検討している戦略・企画担当の方、▼放送局が何を考えているのかを知りたいベンダーの方――などIP化が気になる方・関心がある方は、360度どの方向から来ていただいても、今後に役立つ気づきの場にしたいと思っています。特別企画は、11月20日木曜日の13時30分から、ぜひ、幕張メッセ・国際会議場にお越しください!


■「第62回民放技術報告会」(事前予約不要)

開催日程:2025年11月19日(水)~21日(金)
場  所:幕張メッセ・国際会議場
詳細は以下のURLからご確認いただけます。
https://j-ba.or.jp/category/houkokukai/

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