Jリーグに聞いてみた 30周年を迎えるいま、ローカル戦略を語る サッカー応援番組を民放30局で放送中

編集広報部
Jリーグに聞いてみた 30周年を迎えるいま、ローカル戦略を語る サッカー応援番組を民放30局で放送中

日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)は5月15日に開幕30周年を迎える。Jリーグは成長戦略として「トップ層がナショナル(グローバル)コンテンツとして輝く」「60クラブがそれぞれの地域で輝く」という2つの柱を掲げている。後者の実現のために、4月からサッカー応援番組「KICK OFF! 〇〇」(〇〇は地域名)が系列を越えた民放30局でスタートした。Jリーグの勝澤健・執行役員(=写真㊤)に、Jリーグの今後の展望や放送局との連携に関する考えをうかがった。


放送の発信力で関心を高める

――『KICK OFF!』をスタートした狙いは
Jリーグとして目指しているのは、露出を増やし関心を持ってもらうこと、次にスタジアム入場者の増加とクラブの価値向上です。地方では特にテレビの影響力が高いと考えています。ウェブサイトやSNSは、すでにJリーグに関心がある方へのアプローチには効果的ですが、テレビで広く発信することで、視聴者に興味を持ってもらい、スタジアム入場者数の増加につながる可能性があります。『KICK OFF!』ではJクラブの情報はもちろん、地元の少年・女子・シニアなど、地域のサッカー情報を取り上げています。いきなりJリーグ・クラブを好きになってもらうのではなく、まずはサッカーに興味を持ってもらいたいと考えています。静岡第一テレビで『KICK OFF!』という番組を過去に放送しており、当時「その番組に出たい」「番組に出ている選手みたいになりたい」と、子どもたちの憧れになっていたそうです。地元の選手を知ってもらうことで、地域でのサッカーの関心を高めていきたいです。

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――番組の手応えは
2022年10月に5地域(福島中央テレビ、チューリップテレビ、南海放送、テレビ熊本、鹿児島放送)で先行して番組を始め、手応えを感じています。熊本の事例を挙げますと、ロアッソ熊本のスタジアムは駅から離れていて、来場者は車で行くことが多く、近隣の駐車場がすぐにいっぱいになっていました。その課題を解決すべく、「パーク&バスライド」やシャトルバス増加に取り組みました。このことをテレビ熊本などで告知することで中村俊輔選手の引退と重なり、チケットが完売しました。その後もテレビや新聞がこのことを取り上げ、行政もこれに呼応する形となり、駐車場の増加や無料バスの運行につながりました。メディアの力によって、クラブが持つ課題を行政や県民に知ってもらえました。

――SNSなどでの反響は
ポジティブな反応が多かったです。YouTubeで配信していることを評価してもらっているのだと思います。ほかの地域に移っている人でも地元の番組を見られます。福岡と北九州では上位カテゴリーのアビスパ福岡の話題が中心になりますが、『KICK OFF!』ではギラヴァンツ北九州など他チームの情報も得られます。また、静岡の視聴者からは「『KICK OFF!』が復活した」という喜びの声が多く届き、サッカーファンに支持されていた番組だったということをあらためて実感しました。

さらなる連携を

――地上波での試合中継は
少しずつ増えています。元々地上波の放映権はJリーグが保有しています。ローカルだと、視聴率はNST新潟総合テレビやテレビ新潟放送網、新潟テレビ21、山梨放送、テレビ静岡、長崎国際テレビで10%以上も獲得しています(4月末時点)。地元のクラブを応援するために見てもらえていると思っています。現状に満足せずもっと数字を取らないといけませんが、まずは番組などで関心を持っていただくための取り組みを丁寧に進めていきたいです。

――スタジアム来場に向けて放送局ができることは
札幌テレビでの試合中継でテレビ画面の右上に、試合チケットを格安で購入できるキャンペーンサイトに飛べる二次元コードを表示しました。試合中に2回・計6分間ほど出し、試合前日は53件しかなかったアクセスが、1万5,000件まで増えました。JリーグID(試合チケットを買うために必要なID)の登録も2,000件ほど増えました。今までテレビ中継がどれだけスタジアムへの来場につながるかが定量化できませんでしたが、どれだけ試合に来てもらえたかを数字で把握しやすくなると思います。テレビの影響力が可視化されています。

――番組や試合中継以外に放送局と連携できることは
Jクラブは全国で年間合計25,000回以上の「ホームタウン活動」を行っています。その中でも自治体やNPO、学校など三者以上と連携して、健康や子育て、働き方などの課題解決を一緒に目指す「シャレン!活動」も2,000回を超えていますが、あまり大々的な告知をしていませんでした。ただ、私たちが取り組んできた地域の課題は、放送局にとっても同じ課題だと思います。シャレン!の活動を放送局の発信力で、大勢に知ってもらうことで、活動への支援が増えていくのではと思います。地域課題を改善・解決できるお手伝いができると思うので、放送局と一緒になって、シャレン!にも取り組んでいけたらなと思っています。

DAZN加入・スタジアム来場につなげる

――DAZNと放送それぞれをどのように活用していくか
DAZNは比較的コアな皆さんに視聴いただき、テレビは興味・関心層の拡大を目指すものだと思っています。なので、基本的にはすみ分けされた領域です。テレビで関心を持ってもらい、DAZN加入やスタジアムへの来場につなげるべく、今は火種を作っているところです。

――今後の展望は
ファンを増やすためには、地上波での試合中継や番組で関心を持ってもらう必要があります。Jクラブの中には地元の放送局と良い関係を持ち、試合中継を多く実施できるクラブもあれば、放送局に相談に行く時間がないフロントスタッフの人数も少ないクラブがあります。そこはJリーグがサポートしていきたいと考えています。また、地方だと車でラジオを聴いている人も多くいるので、ラジオでJリーグの話題を取り上げてもらうことで、スタジアム来場のきっかけになる可能性もあります。今後はラジオ局ともコミュニケーションを深めていきたいと考えています。

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(2023年4月17日、JFAハウスにて
/取材・構成=「民放online」編集担当・梅本樹)

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