米NABがFCCに請願 「地上テレビ放送のATSC3.0完全移行を」 2028年・2030年の2段階で

編集広報部
米NABがFCCに請願 「地上テレビ放送のATSC3.0完全移行を」 2028年・2030年の2段階で

米NAB(全米放送事業者連盟)は2月26日、FCC(連邦通信委員会)に現行の放送規格「ATSC1.0」を廃止し、次世代放送規格「ATSC3.0」に完全移行するよう求める請願書を提出した(冒頭画像はNABサイトのプレスリリース)。米国人口の70%を占める上位55市場は2028年2月までに現行のATSC1.0による放送を終了し、残りの放送局も2030年2月までにATSC3.0への移行を完了する2段階のスケジュールを示した。

FCCがATSC3.0導入を認可したのは2017年。以降、テレビ局の自主的な努力に委ねる形で普及が進められ、現在は80以上の市場と総人口の76%で受信が可能となった。しかし、対応テレビの出荷は1,400万台と視聴者側の普及はまだまだだ。

NABはあわせてATSC3.0導入のため、ATSC1.0とのサイマル放送義務づけなどいくつかのFCC規則を改定するよう求めた。▷ATSC1.0の完全終了後も消費者が問題なくテレビを視聴できるよう、ATSC3.0受信機器への規制を緩和すること、▷ATSC3.0への完全移行後も放送局側とケーブルプロバイダーが公平かつスムーズにMVPD(リニアケーブル/衛星テレビ)の再送信契約ができるようルールを調整すること――などである。

NABのカーティス・ルジェット会長は同請願について、「明確な移行計画を示し、米国民が次世代テレビが持つ可能性を最大限に享受できるようにする。これがメディア市場において既存メディアが対巨大IT企業との競争力を維持することにつながる」「FCCが今決断しなければ、ATSC3.0の普及は停滞し、実用化が難しくなる。FCCは今こそ移行完了の明確な期日を設定すべきだ」とコメントした。

FCCの対応が注目されるなか、全米民生技術協会(CTA=Consumer Technology Association)がこれに早くも反応。特に2028年2月までに全テレビにATSC3.0受信機能を搭載するというNABの提案についてギャリー・シャピロ代表は「消費者と家電メーカーに高額のコストを求めるのは時代に逆行している」と声明で強く批判した。CTAはこれまでも、AMラジオの全車搭載法案ほか、NABの議会への働きかけにことごとく反対している。

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