米連邦議会にラジオ関連2法案が再提出 「ローカルラジオ・フリーダム法案」と「全車AM搭載法案」

編集広報部
米連邦議会にラジオ関連2法案が再提出 「ローカルラジオ・フリーダム法案」と「全車AM搭載法案」

米国のラジオをめぐる複数の法案で業界間の摩擦が激しくなっている。
2月13日にスティーブ・ウォマック下院議員(共和党、アーカンソー州)とキャシー・カスター下院議員(民主党、フロリダ州)ら超党派の議員100人以上が連名で連邦下院議会に提出したのが「ローカルラジオ・フリーダム法案(Local Radio Freedom Act)」だ。同法案はこれまでの会期で何度も提出されており、前会期で提出された際は下院で過半数、上院で25人の賛同を得た。

同法案の背景には、ライセンス収入拡大をもくろむレコード業界と、生き残りをかけるラジオ業界の対立がある。レコード業界は長年、ローカルラジオ局が楽曲やアーティストの生演奏・インタビューを放送した場合、新たな使用料、出演料などの支払いをラジオ局に義務づけるよう連邦議会に働きかけている。一方のラジオ局側は、すでに使用料や配信料をアーティスト側に支払っており、これ以上の支払いはリスナーに不利益をもたらすとの姿勢だ。レコード業界からの圧力を牽制しローカルラジオ局を擁護するため、同法案を繰り返し審議にかけている。

ウォマック下院議員は「レコード業界は新たな課金をラジオ局に一方的に要求するだけで、両者の合意形成の努力を怠っている。議会はこのような要求をのむべきではない」と法案提出にあたってコメント。ハリケーン被害が頻発するフロリダ州選出のカスター下院議員も「ローカルラジオは公共ラジオの緊急ネットワークを介して災害時・復興時の気候・道路情報など住民が必要とする情報を提供してくれている」とラジオが果たす公共的使命を強調した。

同法案があらためて提出されたことにNAB(全米放送事業者連盟)のカーティス・ルジェット会長も「両議員の努力に感謝する。米国民のラジオへの依存度は極めて高い。今以上の支払いを課すことは、特に災害時におけるローカルラジオの経営基盤と情報提供力を著しく損なう」とコメントした(冒頭画像はNABの公式サイトから)。

もうひとつが「全車AM搭載法案(The AM for Every Vehicle Act)」の動きだ。新たに製造されるすべての乗用車にAMラジオを受信できる機器を標準装備することを義務づける規則を米運輸省(DOT)が制定するよう求めるもの。ローカルラジオ・フリーダム法案が提出された少し前の1月29日に40人以上の議員が連名で連邦上院議会に再提出した。年明けにカリフォルニア州で起きた大規模な山火事も例に「カーラジオ(AMラジオ)は住民の命綱だ」としている。2023年に提出され上院の商業委員会を通過し、24年には下院の議会エネルギー・商業委員会を通過しているが、いまだに法律化に至っていない。

この法案にもNABのルジェット会長は「NABにとって最優先事項。125の関連団体が法案を支持しており、昨年は上・下院の委員会で大多数の賛成を得ている」とラジオ業界のニュースサイトRadioinkに寄稿し、早急な法律化を訴えている。しかし、こちらも自動車業界などからは強硬に反対されている。今回の再提出に際して全米民生技術協会(CTA=Consumer Technology Association)のギャリー・シャピロ代表はルジェット会長に「全車AM搭載法案が通過するようなら、CTAはAM・FMラジオ放送局のアーティストへの使用料の支払いを義務化するよう求めていく」との書面を送り、対決姿勢を鮮明化させた。ローカルラジオ・フリーダム法案と同様、こちらの法案でもレコード業界の思惑もからんで複雑な様相を呈してきたと言えよう。

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