東京2020オリンピックが8月8日に閉幕した。米NBCUは17日間の同大会期間中、テレビ放送と配信で過去最高の7000時間に上る中継を行った。米国でのプライムタイム視聴者数は、両媒体を合わせて大会平均1,550万人。前回の16年リオ大会に比べ42%減となり、NBCUが米国で独占中継を始めた1988年以降、夏季大会で最低の視聴者数。それでも、広告収益面では中継史上最高を記録したとNBCUは発表している。
NBCUは今回、地上波2局、ケーブル6局、それにピーコックのほか複数のデジタルプラットフォームを駆使して中継した。ライブ・録画中継の主軸にこれだけ配信が駆使されたのは東京大会が初めてだ。ピーコック、YouTube、TikTokのほか、NBC五輪アプリなどを合わせた配信サービスでの延べ視聴時間は60億分超と、記録的な数字となった。
一方で、あまりにもあちこちで中継したため、視聴者に混乱をもたらしたのも事実。開会式はNBCの放送のみで、ピーコックでは配信しなかった。さらに、ピーコックでは生中継を無料プランで視聴できたが、録画の試合や人気の種目は有料プランでしか見られないなど、わかりづらいシステムに歯がゆい思いをした視聴者も多かった。
オリンピックの視聴者数は、12年ロンドン大会が3,110万人、リオ大会が2,670万人と、毎回減少傾向が続いている。これを受けてNBCも「今回の視聴者数減は織り込み済み」とコメント。1年の延期と、コロナ禍での開催による人気選手の欠場なども減少の理由に挙げている。時差もマイナス要因の一つ。米国とほとんど時差がなかったリオ大会に比べ、最大17時間の時差がある東京大会では中継に工夫が必要だった。加えて、16年から21年にかけてケーブル・衛星テレビの解約(コードカット)が進んだ背景も無視できない。これらの契約世帯数が確実に減少する中で視聴者数を単純比較することはできないと、米メディアは指摘する。
視聴者数が減ったとはいえ、されど五輪。NBCは大会期間中、毎晩のテレビ視聴者数で他局を圧倒した。広告収益でも、リオ大会の12億㌦を遥かにしのいだとし、東京大会がいかに大きなドル箱だったかをNBCUは強調している。ただ、視聴者数減の結果を受け、NBCはすでに広告主に追加広告枠を提供するなどの対応を取っている。半年後の22年2月に北京冬季大会とNFLスーパーボウルの中継を控えているNBCに対し、大手広告主がこれら2大イベントの広告枠の割引要求を検討しているとの情報もある。