編集広報部は毎年春と秋のローカル新番組について、地上民放テレビ127社にアンケートを行っている。ここでは、この春の結果を2回にわたり紹介する。今回は午前・午後帯の番組について。自社アーカイブの活用やエリアのCATV局との連携といった特徴的な取り組みのほか、週末を中心とした情報番組の刷新が目立った。
地域で培ってきた制作力を活かした番組が始まった。青森放送(RAB)の「ERAB(えらぶ)~時代を記録し続ける青森放送」は、来年で開局70年となる同社の過去と現在の作品を選んでオンエア。民放連賞をはじめ各種コンクールに輝いた作品や、現在制作中の単発番組などを1時間程度で編成している。番組タイトルはERA(時代)にRABを掛け合わせた。初回は、津軽三味線奏者の高橋竹山を描いた芸術祭賞受賞作の「寒撥(かんばち)」を放送。今後も、民謡や手踊りといった青森の郷土芸能にフォーカスした新作など多彩なラインアップが控える。内外からは懐かしさや番組の時代性を評価する声があるという。
<青森放送「ERAB」の初回に放送した「寒撥(かんばち)」>
平日の夕方ワイド「ももち浜S(ストア)特報ライブ」に代わり、報道色の強い「報道ワイド記者のチカラ」を組んだのはテレビ西日本(TNC)。ネットニュースやSNSの台頭から、ニュースを"すぐに詳しく、分かりやすく知りたい"との視聴者ニーズが高まっており、さらに福岡地区内での同時間帯の競争が激化する中、他局との差別化を狙い企画した。海外特派員経験もある川崎健太記者をMCに据え、記者自身がニュースを深掘りし、自分の言葉で伝える。TNCは昨年、「すくえた命〜太宰府主婦暴行死事件」が民放連賞最優秀を受賞。これを受け、調査報道のさらなる充実を図りながら日常的な報道体制を強化することで、視聴者に一番にチャンネルを合わせてもらう番組を目指す。現状、視聴者からの厳しい指摘などもあるが、独自ネタを複数報じたことで期待も寄せられており、一層の視聴者獲得に向けて内容に磨きをかけていくとしている。
長野朝日放送(abn)は、県内のCATV局が制作した番組を週替わりで放送する「ケーブルTVのつぼ」を開始。長野県ケーブルテレビ協議会の協力により5局から参加を得た。CATV局とはこれまでにも、高校野球や桜、紅葉の中継での制作協力、各局のアナウンサーによる番組ダイジェストの紹介などで連携を重ねており、abnを通じて地元愛溢れる情報を県内全域に届けたいと立ち上げた。各局が放送した素材にCM枠などの編集を加え、スポットCMをオンエアしている。地域の人々との触れ合いやゆったりした構成、地上波では取り上げられないニッチな話題の新鮮さなどから、「肩肘張らずに楽しく見られる」と好評。参加局はこの夏にも増える見込みで、県内での情報連携の強化を進めていく。
<長野朝日放送「ケーブルTVのつぼ」>
週末の情報番組に新たな顔ぶれが多数並んだ。午前中は、九州朝日放送が「アサデス。GOLD」を開始。月―木の同時刻に九州・山口ブロックネットで放送している「アサデス。7」のローカル版との位置付けで、福岡・佐賀に特化した情報を発信する。週末の気分を上げるような楽しさを前面に出しており、平日早朝の「アサデス。KBC」と合わせて、午前帯の「アサデス。」のベルト化により視聴者のさらなる認知向上を期待している。岩手めんこいテレビは「サタデーファンキーズα」「サタデーファンキーズ」の2番組を連続放送。A.B.C-Zの面々が生放送でMCに挑む。テレビ山口も、番組リニューアルによる「ちぐまや家族plus」に続けて「ちぐまや家族plus²」を組み、若年層の獲得を狙う。
夕方では、東日本放送が平日帯に組んでいる「チャージ!」が「サンデーチャージ!&スポーツ」として日曜に進出。自社サイトのアクセスランキングに基づいたニュースなどを伝える。テレビ愛知は、MCにお笑い芸人の小島よしおを起用した「キン・ドニーチ」を開始し、週末の地元を盛り上げる。TSKさんいん中央テレビは、25年半続いた「ヤッホー!」を3月に終了。新たに「SOUP」を立ち上げ、料理やエンタメなど山陰のホットな情報を届ける。
このほか、ビジネスに着目した新番組も。テレビ大阪は、これまで不定期または月一回放送してきた「日経スペシャル『もしものマネー道もしマネ』」と「日経スペシャル『関西リーダー列伝』」をレギュラー化。静岡放送は開局70年を記念した「五郎丸歩が学ぶ〜ビジネスの流儀」をスタートし、RKB毎日放送は「ミライアングル」でエリアの産・学・官の取り組みを紹介する。