取材・報道めぐり"現場"の議論深化 報道実務家フォーラム開催

編集広報部
取材・報道めぐり"現場"の議論深化 報道実務家フォーラム開催

記者やディレクターなど報道の実務者のスキル向上とよりよい報道の実現を目指す「報道実務家フォーラム2022」が4月29日―5月1日の3日間、早稲田大学国際会議場で開かれた。報道実務家フォーラムと早稲田大大学院政治学研究科ジャーナリズムコースの主催。3年ぶりにリアルで開催し、配信も行った。

放送、新聞、ウェブメディア、フリーランスなどさまざまな立場から、リアルで約200人、オンラインで約350人が申し込んだ。民放は約100人(20社)が参加。スクープや調査報道などの実例の背景、情報公開請求などを駆使した取材手法の共有、新聞のデジタル戦略とビジネスモデルや音声コンテンツによる報道の将来、さらにオンライン上の女性記者へのハラスメントを考える場など、多彩な50講座が設けられた。

このうち民放からは、2021年の日本民間放送連盟賞テレビ報道最優秀受賞作「すくえた命〜太宰府主婦暴行死事件」を手がけたテレビ西日本の塩塚陽介氏が講演。時間をかけてエリア外の案件に迫った苦労と、再現ドラマパートにおける工夫などを明かした。講演を終えて休憩時間に入っても質問はやまず、「全国の同業者に番組を見てもらえてうれしかった。参加者との熱い議論を通じて、報道機関が何のために力を与えられているのかを見つめ直す良い機会になった」(塩塚氏)という。

また、北海道放送報道部の山﨑裕侍氏の講座は、ドキュメンタリー番組「ヤジと民主主義~小さな自由が排除された先に~」を題材に権力と向き合う報道の本質を議論(=写真)。番組制作の背景に触れ、「ネット上の動画収集や当事者探しなどは難しい取材ではなかった。やるかやらないか、意志の問題だ」とフロアに投げかけた。山﨑氏もフォーラムについて、「日本のジャーナリズムの底上げにつながる貴重な活動だと感じた。デスクや記者がこの取り組みに参加しない理由はない」と本誌に意義を述べた。

初めてフォーラムに参加したテレビ信州の鈴木恵理香アナウンサーは「テレビ以外の媒体の取材手法を詳しく聞き、刺激を受けた」と本誌の取材に応じ、「特に災害報道の講座が印象的で、緊急時の取材活動を平常時から見直そうと思った」とした。さらに「女性記者同士の意見交換の場もあり、メディア業界の女性の働き方について活発に議論でき、持ち帰って報道部内で早速共有した」とその成果を振り返った。

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