仏政府 公共放送の財源見直し表明 負担金を年内に撤廃か 

編集広報部

仏政府は5月11日、ロシアによるウクライナ侵攻などの影響で生じたインフレから国民を守るための生活支援策を発表。その中で、公共放送への負担金(いわゆる受信料)を年内に撤廃する方針を明らかにした。年間総額で38億ユーロに達する負担金は、フランス・テレビジョン、ラジオ・フランスや国際放送などの公共放送サービスと国立視聴覚研究所の財源となっている。

テレビを視聴する世帯に年間で一律138ユーロ(約1万9千円)の負担金を課す制度の撤廃は、4月の大統領選挙で再選したマクロン氏が公約としていた。制度自体には問題もあり、例えばパソコンのみで放送を視聴する世帯には負担金は課されない。そのため、近年、テレビ以外のスクリーンでの視聴が増え、徴収漏れが多く発生していた。また、これまで住居税と一緒に徴収されてきた負担金だが、国民の購買力向上を名目に同税が廃止される来年以降、どう集金するかめどが立っていない。政府案は、「公共放送の財源は多元性とメディアの独立性という憲法の目的に沿って確保される」とするが、代わりの方策やサービスの規模が現状維持されるのかは不明だ。

フランス・テレビジョンの第2、第3、情報チャンネルの記者組合は5月15日に共同声明を出し、「政府はフランス人の購買力を回復させることと、公共放送の財源を保証することを同時に行うことはできない」とし、「負担金の廃止は、公共放送のニュースの質と独立性を脅かす」と非難した。地元メディアは、政府は今月の総選挙で国民議会の議席が入れ替わるのを待って法案を正式提出すると報じている。マクロン大統領は、議会で過半数を獲得するために提携する連立政党を増やしており、負担金の撤廃が実施されるかどうかは、選挙の結果次第となる見通しだ。 

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