テレビ局の制作力をメタバースにも活用 コンテンツツーリズム学会シンポジウムで中京テレビが講演

編集広報部
テレビ局の制作力をメタバースにも活用 コンテンツツーリズム学会シンポジウムで中京テレビが講演

コンテンツツーリズム学会は6月12日、「メタバースにおける新たなツーリズムの可能性」をテーマにシンポジウムをオンラインで開催した。コンテンツを活用した観光振興および地域活性化の研究と実践に取り組む同学会が、IoTの飛躍や新型コロナの影響で浸透し始めたVR(仮想現実)、メタバース(インターネット上で提供される仮想空間や仮想現実の世界)を用いた観光について意見交換を行うため企画した。

基調講演で、中京テレビの市健治・ビジネスプロデュース局ビジネス開発部長から同社が手がけるメタバースの活用とビジネス展開について説明があった。2018年から新規事業としてVTuberのプロデュースなどに取り組み、そこから派生的にメタバース事業もスタートしており、これまでに行ったVTuberのファンミーティングや観光ツアーなどの実績を紹介した。過去の取り組みから、メタバースはリモート通話と同様、物理的な距離を越えてつながる喜びを提供できるうえ、「同時多発的な交流を生む」「顔が見えないアバター同士で接するため、初対面でもリアルほどの恥ずかしさはない」といった特徴を持つと語った。

meta2.jpg

VTuberのファンミーティングは100人規模で行われた>

さらに同社が企画制作した事例として、人口減少に伴う教育格差や不登校生徒の増加といった学校の課題解決を目指し、高校2校と大学1校とともにバーチャル空間で一緒に行った授業を紹介した。生徒1人ひとりがアバターとなって授業に参加し、グループディスカッションや大学生への取材、それらを踏まえた発表に取り組んだ。高校の先生からは、「リアルの学校生活でシャイな生徒が、VR授業では積極的に発言している姿を見て驚いた」などといった声があったという。

<VR課外授業を紹介する動画>

市氏は「メタバースじゃないとできないことに取り組み、リアルの生活を豊かにすることを目指している」と事業に取り組む意義を語った。また、中京テレビがメタバースの企画から運営まで請け負うサービス「エブリバース」についても解説があった。

講演後、市氏、清水麻帆・文教大学国際学部准教授、伊藤大河・共栄大学国際経営学部准教授の3人に、モデレーターとして岩崎達也・関東学院大学経営学部教授が加わってディスカッションを行った。岩崎氏からの「テレビ局がメタバースに取り組む意義は」という質問に対し、市氏は「これまで番組やイベント制作で培ってきた企画制作力などがあるため、テレビ局はメタバース上で行うイベントの内容を考えるのは得意だと思う。テレビ局が持つアセットは活用できる」と答えた。

地域活性化については、「メタバースで地域イベントを行う際、そこで使えるデジタル通貨などがあれば地域に還元できると思う」(清水氏)、「現地に行ってもらうための入り口としてメタバースは活用できる」(伊藤氏)などの意見があった。また、聴講者との質疑応答では「顔が見えない環境だと、相手に不快な思いをさせる人も出てくるのでは」との質問に、清水氏は「ユーザーのメディアリテラシーが重要になる。社会全体が早い段階で議論しておくべきだ」と考えを示した。

最新記事