仏公共放送の負担金制度を撤廃 国民の経済負担軽減を目的に 長期的な資金源は「先送り」

編集広報部

フランスのマクロン大統領が今春の大統領選挙で公約していた公共放送の負担金(いわゆる受信料)の徴収制度が正式に撤廃された。8月17日付の官報発行をもって改正法(改正財政法)が発効となったが、負担金(年間138ユーロ)については今年1月に遡及して撤廃が実施されるため、前納分は全額が払い戻される。

フランスの受信料制度は、ラジオ放送時代の1933年にまでさかのぼる。戦後(1949年)にテレビとラジオの両方で負担金を課せられたが、のちに「放送」として一本化され、近年は住民税と一緒に徴収されていた。

90年近く続いた制度を撤廃した直接の動機は、国民の経済負担の軽減だ。負担金をなくすことは国民の経済負担の軽減になるとの考えで、今回、政府は「フランスの一般家庭の購買力を高める」ために、複数の負担軽減措置をまとめて法制化した。

下院では、7月の法案提出からスピード可決されたものの、制度撤廃や消費税(付加価値税)の一部を撤廃後の公共放送の資金源とすることの是非について議論が紛糾。上院は、消費税を資金源とするのは2024年末までとの時限をつけて可決。長期的な安定した資金源の確保は「先送り」となった格好だ。

その後、受信料制度の撤廃を不服とする野党議員ら120人以上(上・下院)が、憲法評議会に異議を申し立てて法制化をブロックした。公共放送事業が国税で賄われると、憲法で保障された言論の自由が脅かされるなどと訴え、「撤廃」を認めた改正法の違憲審査を求めた。

憲法評議会は、公共放送の創設にあたり「収入を放送経費に充てるため、放送受信設備の使用権に対する免許料を設ける」とする負担金制度ができたが、「料金の徴収」は公共放送の基本原則にはならないとし、これまでと別の方法で財源を確保することを認めた。

そのうえで1789年のフランス人権宣言は「思想と意見の自由な伝達は、人間の最も貴重な権利の一つである」と規定しているとし、負担金制度の廃止は「自由な伝達」に寄与する公共放送が独立性を確保できる資金調達に影響を与える可能性が高いとの意見を表明。今後2年間および25年以降の予算編成で、「公共サービスの使命を遂行できるよう資金源を確定することは、立法府の責任である」とし、最終的な決定を憲法評議会が評価するとしている。裁定は、将来的な資金源の確保のあり方については最終判断を「保留」したものの、今回、負担金制度の廃止を認めたことは、大きな転機と捉えられる。

負担金制度は、これまでフランス・テレビジョン(FTV)、ラジオ・フランス、アルテ(独仏共同放送事業)、国際放送(TV5Monde)などの事業の主要財源となっていた。制度が撤廃となった今年については、消費税収入の振り分けにより、本来の徴収総額である32億ユーロよりも多い、37億ユーロ(約5,800億円)が国からの財政援助として拠出されることになっている。以降2年間も議会で減額されなければ、同様に支給される見通し。

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