NHK放送文化研究所は3月1ー3日、「文研フォーラム2023」をオンラインで実施した。「多様性と激動の時代のメディア」をメインテーマに、計7つのプログラムを通じて、メディアの現在と未来を考えた。
そのうち、「デジタル情報空間とメディア "信頼"のフレームワークをどう構築するか」と題した企画では、ネット上で健全な言論空間を再構築をするために、メディアやプラットフォーム(PF)事業者が果たすべき役割などを検討した。パネリストは民放、新聞社、NHKから計5人と、立教大大学院の宮本聖二・特任教授が一堂に会した。民放からは日本テレビの三日月儀雄氏(報道局デジタルグループ専門副部長)、テレビ朝日の郭晃彰氏(報道局クロスメディアセンター―AbemaNews現職出向)、フジテレビの寺記夫氏(FNNプライムオンラインプロダクトマネージャー)が出席。進行はNHK文研メディア研究部の村上圭子・研究主幹が務めた。
冒頭で宮本氏が、「アテンションエコノミーの傾向が強まり"、書き起こし記事"や"釣り見出し"が増えることで、結果的にユーザーがニュース全体を忌避してしまうのでは」と問題提起。三日月氏は、「多くの人に読まれるべきと考えるニュースは、(見せ方を)工夫することがあってもよい」としながらも、制作者だけでなく、PF事業者も責任ある対応を取らなければ、情報が氾濫すると指摘した。また、「自社で抱えている問題は他社も同様」として、ネット空間の課題をメディア各社で共有する必要性を説いた。不正な広告への対応などを提起したのは寺氏。こうした問題を乗り越えてマネタイズすることで、報道活動を支えたいとした。郭氏はネット向けのコンテンツ制作について、「誰もが自由に発信できるのがネットのよいところ。原点に立ち返り、メディアももう少しのびのびと発信できる場と捉えては」と提言した。
このほか、放送アーカイブの「公共利用」、「市民力」を活かすジャーナリズムの挑戦などをテーマとしたプログラムが組まれた。