総務省東海総合通信局と東海情報通信懇談会は8月27日、「今こそラジオ!〜人に寄り添うメディア その先にあるもの」と題したセミナーをオンラインで開催した。関係者ら68人が参加。コロナ禍により聴取環境などが変化する中、ラジオが果たす役割と可能性を検討した。ラジオの現状と将来を探るシリーズの5回目で、今回が最終回となる。
登壇者がそれぞれの立場から講演。CBCラジオの細井麻郎常務取締役は「"トークって近い"~ラジオが紡ぐコミュニティ」と題し、9月1日で開局70周年となる同社の番組を紹介した。中日ドラゴンズのマニアックな話題が中心の「若狭敬一のスポ音」、SNSを駆使した"見せるラジオ"「カトリーナの全部全力!」など、リスナーと特定の価値観を共有できるラインアップを示し、「これからは個性を持った番組がより必要になる」と展望。「必ずしも聴取率が高くなくても、小さなコミュニティを大切することにラジオの役割がある」と述べた。
愛知県瀬戸市を拠点にコミュニティFM局・RADIO SANQを運営する尾張東部放送の牧治代表取締役社長は、全国に330余りあるコミュニティFMの現状を概観。コロナ禍で飲食店の応援やワクチン接種情報の発信などに取り組んできたことを説明し、「コンテンツは地域に豊富にある。目の前で起きていることを伝えられるのがコミュニティ局だ」と語った。
TBSラジオの萩原慶太郎UXプランニング部長は、音声メディアは人々の生活の未来を創れるか、という視点で講演。コロナ禍で変容したメディア接触に関する数々の調査結果を踏まえ、「信用でき、価値のある情報」や「課題を考えるきっかけ」を人々が求めており、時間の質を高める体験価値がメディア選別の決め手となっているとの見方を示した。その上で、これからのラジオは▽番組はコミュニティで、パーソナリティはコミュニティのリーダー▽価値観やビジョンを共有するコミュニティを生み育てていく▽「何を」ではなく「なぜ」それをやるのかが問われる――と強調した。
後半では、情報科学芸術大学院大の金山智子教授の進行で意見交換を行った。コミュニティづくりを巡り、細井氏はリーダーを担えるパーソナリティ育成の重要さを指摘。「東海地方のローカルスターを輩出し、あって良かったと思われる絆の強い番組を作りたい」と意気込んだ。萩原氏は、話題の著名人にマスメディアが頼りがちな傾向にあるとし、「"仲間が集う"というそもそもラジオが持っている強みをアップデートすることに可能性を感じる」と主張。マネタイズの手法は充実してきており、それらを活用しながら「何を実現したいのかを徹底的に考えるのがラジオの生きる道だ」と述べた。
総務省東海総合通信局と東海情報通信懇談会は8月27日、「今こそラジオ!~人に寄り添うメディア その先にあるもの」と題したセミナーをオンラインで開催した。関係者ら68人が参加。コロナ禍により聴取環境などが変化する中、ラジオが果たす役割と可能性を検討した。ラジオの現状と将来を探るシリーズの5回目で、今回が最終回となる。