若い世代の挑戦広げたい~学生向けラジオ番組パーソナリティ座談会 ラジオをみんなの居場所に①

編集部
若い世代の挑戦広げたい~学生向けラジオ番組パーソナリティ座談会 ラジオをみんなの居場所に①

座談会当日の模様
(左上:三浦ちあきさん、右上:やきそばかおるさん、左下:大窪シゲキさん、右下:辻満里奈さん)


大窪シゲキさん
(おおくぼ・しげき)1979年生まれ。大阪府出身。2000年に開始した広島エフエム「9ジラジ」でADを担当した後、07年から「大窪シゲキの9ジラジ」メインパーソナリティ。同番組は20年日本民間放送連盟賞番組部門ラジオ生ワイド番組の最優秀を受賞。現在は同社「シネマ☆ボックス」のパーソナリティも務める。

三浦ちあきさん
(みうら・ちあき)1979年生まれ。富山県出身。2003年から北日本放送(KNB)契約キャスターとしてローカルニュース番組内のスポーツコーナーを10年間担当。14年、関西に拠点を移しフリーアナウンサーとして活動。16年の番組開始時から21年12月まで和歌山放送(wbs)「WA!ERA」メインパーソナリティ。

辻満里奈さん
(つじ・まりな)1996年生まれ。埼玉県出身。2019年、RKB毎日放送にアナウンサーとして入社。現在の主な担当番組は、テレビでは夕方ワイド番組「タダイマ!」と情報番組「まちプリ」。ラジオでは10代向け番組「カリメン」と、TBSラジオ「爆笑問題の日曜サンデー」内の企画・新番組選手権で3位を受賞した「ほめ×ほめナイト」。

司会:やきそばかおるさん(ラジオコラムニスト・ライター)


新型コロナウイルスの感染拡大によって活動が制限された学生同士の交流を応援する企画を、全国の中高生向けラジオ番組が積極的に行ってきました。コロナ禍ならではの企画を実現したパーソナリティのお三方に番組への思いを語ってもらい、学生向けラジオのあり方を考えます。(2021年11月28日、オンラインにて。構成=栗原紗代・機関紙「民間放送」記者)
※前編、中編後編の3回に分けて掲載します。今回は前編です。

やきそば ラジオで喋るようになったきっかけは?

大窪 音楽とコミュニケーションが好きだったからです。デモテープをいろいろなところに送り、「9ジラジ」のADから始めました。スタッフ側から見るうちにラジオの面白さを知り、そのまま約15年になります。初めは10代の番組をやるつもりはなかったのですが、多感な時期の青春に参加できる魅力から、一生の仕事としてのめり込んでいきました。

三浦 私は2003年に地元の北日本放送の契約キャスターになり、当時はテレビの仕事をしていました。ラジオには特番で出る程度でしたが、挑戦してみたいという気持ちはありました。フリーになるにあたって昔から好きだったラジオの世界に入ってみようと思い、私も履歴書をいろいろな局に送りました。「WA!ERA」は私とディレクターの2人だけでやっていますが、パーソナリティの個性が活かせるのですごく楽しいです。

 小学生のとき国語の音読が好きで、よくきょうだいに読み聞かせをしていました。そこで祖父に「将来アナウンサーになれるよ」と言われたことをきっかけに、ぼんやりと目指し始めました。大学生のとき、日本テレビで番組アシスタントの募集があると聞いて、ふと、私アナウンサーに憧れていたなと。それで応募し、実際にアナウンサーの方に会って、いろいろな方が携わる放送局の現場に憧れ、本格的に目指し始めました。

学生との接し方

やきそば 学生をスタジオに呼ぶことがありますね。どのように接していますか?

大窪 僕は見た目がロン毛でもじゃもじゃ、黒ずくめなので、第一印象で興味を持ってもらえること。あとはフランクに話しかけて、喋るのが楽しいという雰囲気作りを心掛けています。

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<大窪シゲキさん>

三浦 局に入った瞬間は、皆さん緊張しています。私は生放送をしているブルースタジオをみんなの部室にしたいと思っていて、番組が始まる前にみんなで黒板に絵を描いたりお菓子を食べたりして緊張をほぐします。

学生は放送局自体に興味があって、「放送部の部室のマイクと全然違う」と機材に興味を示してくれることも多く、番組が終わってから局内を一緒に見学します。憧れつつ身近な存在になってもらえればと思います。

大窪 10代には、本物を見ることを大切にしてほしいです。親や先生に言われてもなかなか努力できないけど、本物を見た瞬間に「がんばろう」って思える。スタジオに来るとみんな目がキラキラして、僕たちにとっては普通のことも喜んでもらえます。ラジオから聞こえるのはDJの声でも、スタッフやミキサーと一緒に作っている感じが伝わると、興味を持ってくれます。

 私はコロナ禍に「カリメン」のパーソナリティになったので、Zoomや電話を介してやりとりはしても、直接話したことはまだないんです。お二人は10代が興味のあることをどうやって仕入れていますか?

三浦 インスタグラムをチェックしたり、スタジオに来てくれる現役の高校生や大学生に「今はやっているものは?」「部内の流行は?」と聞きます。私たちが全然知らない話もしてくれます。

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<三浦ちあきさん>

大窪 ネット情報に頼りすぎず、とにかく学校で直接会っていっぱい聞きます。例えば最近の「キャパい」という言葉が本当にはやっているのか、学生に話してみてウケたら「はやっているんだ」とわかる。「カリメン」は「9ジラジ」と同じ平日夜の帯番組ですが、曜日ごとにパーソナリティが違いますよね。意識していることはありますか?

 週を通して聴くリスナーもいれば、日を決めているリスナーもいると思うので、あえて意識せず自分らしく話すようにしています。他の曜日の放送はちゃんと聴いて、パーソナリティ同士、共有しています。

大窪 帯番組だと熱を保てるのは強みですよね。学校で「今夜喋るけぇ、流れるけぇ」と言うと、その日に聴いてくれます。

三浦 「WA!ERA」には自ら配信しているリスナーや、メインパーソナリティの座を狙っている子がいます。私とディレクターがスタジオから出て、高校生だけがスタジオで5~10分喋るコーナーがあります。高校生の「せっかくスタジオに行くなら一人で喋りたい」「私たちの主張を放送に乗せてほしい」という意見から始まったのですが、こんな局、ほかにないですよね。

やきそば 普通は生放送だとちょっと怖いですね。

三浦 黙っちゃったら、NGワードを言ったら......と心配でした。でも、今の高校生はしっかりしていて、私たち喋り手が頭の隅に置いている基準をわかって、関西なのでしっかりオチをつけて喋ってくれます。自分の声が県内全域に届くのは高校生にも良い経験になると思うので、何かのきっかけになってほしい。かつては違う学校の子がコンビを組んで出演し、その場で仲良くなって、後日両校の放送部が合同練習したことも。良い相乗効果が生まれたらいいなと思います。

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<辻満里奈さん>

 私たちの方が気付かされることも多いですよね。コロナ禍で制限のある中でもポジティブに学校生活を送っていたり、SDGsについても大人より詳しく、自分の考えを持っているので、学ばせてもらっています。

学生と話すときに、どこまで言葉を崩すか迷います。あまりにもフランクだと上から目線に思われないか、敬語だったら距離が縮まらないかなと。

大窪 僕はやわらかい中にちょっと敬語を入れるようにしています。その人に興味があって話を聞くとき、年上でも年下でもリスペクトを持たないといけないと思います。ただ、名前はニックネームで呼んだりもします。

三浦 私は会った瞬間から「どうもー」「ニックネームなに?」とフランクに接します。下の名前やニックネームで呼ばれると学生もうれしそうですし、「学校でもそのニックネームで呼ばれるようになりました」と言ってもらえることも多いです。

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<やきそばかおるさん>

やきそば 皆さんは自分のニックネームもありますね。大窪さんはオオクボックス、三浦さんはちあっきー、辻さんはつじまり。

大窪 AD時代、ラジオっていろいろなものが入って飛び出す箱みたいだから「オオクボックス」と。街でもオオクボックスと声を掛けられることが多いです。

 元々は「RKBアナウンサーの辻満里奈です」と言っていましたが、リスナーとの距離を縮めるためニックネームにしました。アナウンサーの立場で話すときと違い、ニックネームの「つじまり」だと自分の意見を言える気がします。

中編に続く)

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