米ミシシッピ州のローカルテレビ局 冷静な事実報道、実況中継で地元の窮地を救う

編集広報部

米ミシシッピ州北部の町トゥペロで9月3日の午前中、小型機を操縦していた男が上空から「スーパーマーケットに機体を突入させる」と脅迫し、買い物客や周辺住民に避難命令が出る事件が起こった。幸いこの男は、捜査当局の説得で数時間後に小型機を畑に着陸させ、けが人はなかった。この事件で、地元のテレビ局WTVA Tupelo(アレン・メディア傘下)が一部始終を冷静に事実報道したことで、地元住民をパニックから救ったとの寄稿が、放送業界のニュースメディア「TVNewsCheck」に掲載された。

寄稿したのは、メディアコンサルタントのハンク・プライス氏。その著書「Leading Local Television」は、米テレビ局経営層のバイブルとなっているという。

プライス氏自身、WTVAの実況中継を見ていた視聴者の一人だ。事件発生とほぼ同時にWTVAが小型機の位置を追跡し、テレビ画面で住民に正確な位置を知らせ始めたという。実況を担当したのは、アンカーのクレイグ・フォードと、気象担当キャスターのマット・ローブハン。プライス氏は、「トルネードが頻発するこの地域で気象を担当するローブハンは、周辺の地理に精通している。そのため小型機の位置を正確に住民に知らせることができた。地元テレビ局にしかできない仕事だ」とし、局側の人選も良かったことを指摘している。 

この間、実況を見ていた地元住民とWTVAの連携も見られた。住民が互いに「9チャンネル(WTVA)をつけろ」と連絡を取り合い、WTVAが小型機の位置を伝えると、当該地区の住民が小型機の写真やビデオを撮影しWTVAに送り、それらがテレビで放送された。そして犯人が逮捕された際には、WTVAのレポーターが現場から自分のスマートフォンで撮影した映像をすぐさま局に送り、放送した。

プライス氏は、「こうした事件が起こると、正確な情報の欠如が恐怖を煽り、根拠のない噂がパニックを起こす。今回そうさせなかったのがローカルテレビ局。ほかのどんなメディアにもできなかった仕事だ」と指摘する。そして、次のように締めくくった。

「テレビ業界が劇的に変化し、TikTokばかりに世界中の関心が集まったとしても、ローカルテレビ局のコアの役割は決して揺らがないことを再認識した出来事だった。全米各地のローカルテレビ局は常に地元の出来事に注意を払い、住民に正しい情報を提供することを生業としている。今回はWTVAだったが、これがどこで起きようとその土地のローカルテレビ局が同様の仕事をしてくれたはずだ。ローカルテレビ局はこれからもずっと、地元住民の生活に貢献していく」

最新記事