防災の日 ラジオ各局が特別企画 いつもの声、編成で届ける

編集広報部
防災の日 ラジオ各局が特別企画 いつもの声、編成で届ける

今年も多くのラジオ局が取り組んだ防災の日(9月1日)の特別企画から、いくつかの事例を紹介する。


当日の各ワイド番組内で特集

FMヨコハマは当日の各生ワイド番組内で防災企画を展開した。毎年9月1日、防災・減災を意識した情報や、非常持ち出し袋の用意の呼びかけ、神奈川県知事からの啓発メッセージなどを放送している。関東大震災の震源地で、海・山・川があり土砂災害などの危険が考えられる神奈川県の放送局として、「常に備えよ」という意識をリスナーに持ってもらうために取り組んでいる。

今年は「災害から自分の身を守るために」がテーマ。『ちょうどいいラジオ』(月―木、6・00―9・00)は地元出身の気象予報士・防災士の木原実さんを迎え、ハザードマップの確認など多岐にわたってアドバイスを行った(=写真㊤)。木原さんは備えについて「備蓄品を3日~1週間分用意してほしい」と呼びかけた。『Kiss & Ride』(月―木、12・00―15・00)では防災教育学会会長の諏訪清二さんや社会応援ネットワーク代表の高比良美穂さんらをゲストに、事前準備や災害後の対応、避難時の心のケアなどを紹介した。諏訪さんは「避難場所には、自分の心をホッとさせるものを持っていってほしい」と語った。

加藤直裕・制作部長は「地元で想定される自然災害は多くあるので、リスナーに飽きられたとしても繰り返し伝えていく」との方針を示した。同局をはじめ県内16局のコミュニティFM、神奈川新聞社と神奈川エフエムネットワークを組んで、年2回情報交換会を開き、災害時の情報共有ができるよう連携を深めている。

9月1日と3日、各レギュラー番組内で防災企画を行ったのはCBCラジオ。東海豪雨から20年たった2020年からワイド番組で1コーナーずつ実施している。ラジオが防災を伝えるだけでなく、災害時の情報インフラであることをなじみのパーソナリティの声で伝えることを目的に、レギュラー番組内で取り上げている。

愛知県が東海豪雨や伊勢湾台風(1959年)の被災区域だったことから、風水害から身を守るための方法などを紹介し、『北野誠のズバリ』(月―金、13・00―16・00)には災害ボランティアの活動をしているNPOのレスキューストックヤード代表の栗田暢之さんが出演し、豪雨被害の現地の様子を説明しつつ、「避難する時は判断をためらわないことが生死を分ける」と話した。『ドラ魂キング』(月、16・00―18・00、火―金、16・00―19・00)や『若狭敬一のスポ音』(土、12・20―16・15)では防災・非常食やグッズなどを取り上げた。番組内ではリスナーから東海豪雨時に役立ったことや困ったことなどを募り、貴重な体験や知恵を共有した。

「何年に一度の猛烈な台風」という言葉が多用されていることを受け、同局ではリスナーがそういった表現に慣れないよう呼びかけているという。また、ラジオは避難時のライフライン情報の発信に価値があるため、情報の精査と共有の方法が課題だとしている。

「"水都"大阪、水害の備え」と題し、4つの生ワイド番組内で防災企画を実施したラジオ大阪。18年の大阪府北部地震をきっかけに、災害の記録を伝え今後の防災に役立てようと防災企画『明日のために、今できること。』を不定期でスタート。21年の「防災ラジオステーション」宣言後、年4回の特別企画を行っている。いつもの番組編成でいつものパーソナリティが呼びかけることにより、防災が特別なことでなく日常生活の一部になることを目指している。

当日、和田麻実子アナウンサーが大阪・難波から住吉公園までの約6kmの道のりを歩き、道中4カ所のスポットから防災に関する情報を、番組をまたいで中継でリポートした。また、『Hit&Hit!』(月―木、14・00―16・55、金、14・00―16・30)では原田年晴アナウンサーが大阪市の管理する水門を取材。水位上昇の危険がある時の対応や、市職員の思いと呼びかけを届けた。

企画を継続してきたため、パーソナリティは通常の放送でも防災について話すようになったという。放送をきっかけに情報や支援のネットワークを作ることも同企画の狙いで、実際に同局から取材を依頼するだけでなく、SNSを通じて防災関連の企業や団体からコンタクトがあったことも。今後は、「災害時にリスナーから寄せられる情報を共有できるネットワークや環境をどのように作っていくかが課題だ」と担当者は語る。

水防碑.jpg

<大阪市住之江区の「水防碑」からリポートした和田麻実子アナ

FM AICHIは1日、「FM AICHI 防災・減災スペシャル」と題し、全ての生ワイド番組で特集をオンエアした。東日本大震災から10年となる21年3月に、社員の中から自発的に企画が発足。4回目となる今回は、この時期に想定される台風や水害を中心としつつ、南海トラフ地震に対する備え、行政や企業の最新の取り組みなどを電話で聞いた。

このうち「DAYDREAM MAGIC」(月―木、11・30―14・30) には、昨年3月の1回目にも出演した名古屋大学の福和伸夫名誉教授が出演。10年以上実施している防災セミナーの狙いを紹介し、「災害は必ず来る。自分が住む場所の地理や歴史的背景を理解し、自分ごととして考えてほしい」と呼びかけた。また、高校生の頃に阪神・淡路大震災を経験したパーソナリティの吉川朋江さんも「避難生活のストレスと不安は強かった。心の栄養として、ラジオやトランプなどをぜひ避難袋に入れて」と実感を込めて語った。

特集ではこのほか、県や市、地方気象台の担当者らが、家庭でできる南海トラフ地震への対策、河川の治水プロジェクト、長周期地震動の予測情報提供の動きなどについて説明。「MORNING BREEZE」(月―木、8・20―10・50、金、8・20―11・00)では、愛知工業大学の横田崇地域防災研究センター長が地域で展開している防災の取り組みに触れ、「連携拠点としてセンターを活用し、地域の人材育成も担いたい」と述べた。

1週間かけて展開

四国放送は、防災ウィーク企画として8月29日―9月2日に生ワイド番組『ラジオ大福』(月―金、8・30―11・30)内のコーナーで「JRT防災ウィーク"まさか"への備えが命を守る!」を放送した。

事前復興やボランティアグループの活動、豪雨災害での避難、防災食などと1日1テーマを取り上げ、専門家や担当者が番組に出演してそれぞれの取り組みを紹介した。さまざまな立場の人に出演してもらうことで話の幅が広がり、防災について理解しやすくすることが狙い。取り上げる内容は、他県で発生した災害を参考に各曜日を担当するディレクターが決めた。最終日は「私の防災」をテーマにメールを募集。リスナーからは、背負って運べる重さか、期限切れのものはないかなど非常用持出袋を確認したことや、東日本大震災での実体験を踏まえて「水は余って損することはない」などの声が寄せられた。

同社は16年から防災の日の週に、防災に関する話題をラジオとテレビの生番組で取り上げており、今年で7回目。大和あゆみ・編成局ラジオ編成制作部長は「毎年、新たな取り組みに出会える喜びがある。先延ばしにしがちな防災について、放送をきっかけに日々の生活でできるところから取り組んでもらえるよう心がけている」と語った。

文化放送は、8月29日―9月4日に「文化放送 防災キャンペーン~ラジオにできること~」を実施した。例年、9月1日に特番を放送しているが、キャンペーンとして1週間展開したのは今回が初めて。生ワイド番組で防災に関連した特集や展開を行ったほか、9月2日に特番『文化放送防災ウィークSP 大竹まこと×佐野玲於 〜ラジオにできること〜』を放送した。

特番は、東日本大震災発生時に生放送を担当した大竹さんと、3月16日の福島県沖で起きた地震の後に生放送を担当した佐野さんが、災害が起きた際にラジオは何ができるのかを話し合う対談形式。災害後の放送では、どういうことを意識しているかとの佐野さんの問いかけに、大竹さんは「いつもの声がラジオから聞こえることが大事。聞いている間は和んでほしいと思っている」と語った。番組の趣旨に照らして意義があるとの考えから、あらかじめ注意喚起したうえで東日本大震災発生時の2011年3月11日14時46分の音源を初めて放送した。

特番について、村田武之・コミュニケーションデザイン局コミュニケーションデザイン部長は「ワイド番組では、時事問題や他の生活情報も入ってくるため、1つのテーマに絞った1時間を創出し、2人の対談からさまざまな年代が防災について考える時間を作れればと企画した」と語った。

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