石川テレビのドキュメンタリー『裸のムラ』 10月8日から劇場公開

編集広報部
石川テレビのドキュメンタリー『裸のムラ』 10月8日から劇場公開

石川テレビのドキュメンタリー映画『裸のムラ』が10月8日(土)、東京のポレポレ東中野と石川のシネモンドを皮切りに全国で順次公開される。監督は富山のチューリップテレビ時代に『はりぼて』(2020年)を手掛けた五百旗頭幸男氏(=写真㊤)。「石川県知事を中心とした県政をめぐる動き」「県内に暮らすムスリムの一家」、そして「バン(車両)を生活の拠点とするバンライファー」という一見無関係な題材を通じて、コロナ禍の石川を包む空気を描いた。

映画は、2021年5月に放送された『裸のムラ』と、今年5月に放送された続編『日本国男村』という2つの80分番組を2時間に再編集した。『日本国男村』は、日本民間放送連盟賞番組部門のテレビ報道で最優秀に輝いている。

制作のきっかけは「肌感覚」「野生の勘」だったという。20年春に石川テレビに移った五百旗頭氏は、県政取材の中で居眠りや議員同士の雑談が横行する「学級崩壊のような」議会に直面。それを撮影するよう指示したカメラマンから「いつものこと」と返され、違和感を覚えた。同じ時期、コロナ禍のムスリムに何か困りごとはないかと取材を始めたところ、「皆がコロナに手一杯で、自分たちに意識が向いていない。とても過ごしやすい」と意外な答えが返ってきた。ここから、「今の社会の本質を映像に収められるのではないか」と直感。さらに、対照的に"社会=ムラ"の中で自由に生きる人としてバンライファーを見つけ、夕方ニュースでの特集などを経て番組化に至った。

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<作中のワンシーン。知事選にまつわる石川テレビのアーカイブを掘り下げた点も見どころだ。 🄫石川テレビ放送

民放連賞の審査講評に「テレビ報道を定型のものとして閉じ込めず、センスある映像選択で視聴者を触発」とあるように、独特な視点で日常を切り取った点が本作の特徴のひとつ。県議会の議場に置く水差しの水滴を丁寧に拭く女性職員、監督の執拗な取材にうんざりして顔を背けるムスリム一家の少女、自由を求めながらも疲労の表情が隠せないバンライファー......。脈絡なくみえる切り口に、試写などでは「なぜこのように取材対象を選んだのか」との疑問が寄せられた一方、「すごいものを観た」と熱い反応もあったという。「舞台は石川だが、全国に通じるものを描いた。程度の差こそあれ、保守王国と言われるような場所では同じようなことが起きているのでは」と指摘する監督。「コメディタッチで制作したので若い人でもすっと受け入れられる。積極的にアプローチしたい」と意気込む。

配給は東海テレビのドキュメンタリーシリーズで知られる東風が担った。「作品を守るために社員が闘い、作品を大事にしてくれる会社と組みたかった」と初タッグの狙いを明かす。また、音楽プロデューサーは『はりぼて』に続いて矢﨑裕行氏。打楽器を効果的に使ったアフリカの音楽のようでありながら、日本の祭囃子も彷彿とさせ、「言葉ではない言葉を音楽で紡いだ。『何だこれは』という反応を狙った」とこだわりをみせた。

10月8日にポレポレ東中野で監督の、翌9日にはシネモンドで出演者や監督の舞台あいさつを予定している。

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