英・エリザベス女王の「葬儀中継」 打ち立てたさまざまな記録 史上最大級のメディアイベントに

編集広報部

9月8日に死去したエリザベス女王の国葬(9月19日)は、英国内だけでも52チャンネルが生中継を行った。視聴率トップとなったBBCが、「3,250万人の視聴者が少なくとも3分間はBBCを視聴していた」と報道するなど、史上最大級のメディアイベントとなった。

生中継の視聴ピークは、葬儀の締めくくりとなる黙祷、国歌斉唱が終わり、女王の棺が葬儀場(ウェストミンスター寺院)から運ばれるタイミングで、全国民(約6,750万人)の4割にあたる2,800万人がこの模様をテレビで見守ったという。同国の視聴率を測定する機関(The Broadcasters' Audience Research BoardBARB)は、その際のリーチは2,902万人で占拠率が95%という記録的なレベルに達していたと公表している。

歴史的という点では、視聴率で予想外の「出来事」があった。BARBのデータ集計を担当するカンターメディアは、葬儀の翌日「国葬の異常な高視聴率のため配信が遅れる」とし、定時で視聴率データが出せないと詫びたほか、10月4日にもBARBが「視聴者数は変わらないが、チャンネル配分で誤りがあった」と訂正した。これは52のチャンネルが葬儀をCM抜きで生中継をしたことが要因。BARBは、チャンネル検出にテレビの音声出力を部分的に追跡する音声マッチング技術などを使っているが、「これほど多くのチャンネルが同時に同じ番組を放送し、音声の差がほとんどない状態が長時間続いたことは、かつてないこと」とし、チャンネル別視聴の割り当てで誤りがあったと説明した。

前出の視聴データにはネット配信での葬儀の視聴が含まれていないが、イギリスのネット調査会社UKOMによると、約210万人がBBCの動画視聴アプリ「iPlayer」にアクセスしていたとのことだ。実のところ、記録的な19日のアクセス数は女王の死去当日とほぼ同じだったのだが、葬儀当日のアプリの利用総時間は約11,500万分で、女王の死去当日よりも45%も多かった。女王の死去をネットでフォローするのとは異なり、人々は葬儀の模様をより長く視聴したようだ。興味深いのは、葬儀前日と比較して、スマートフォンでの視聴者の伸び(+79%)がタブレット視聴(+45%)よりもはるかに高かったこと。葬儀の日に国内各地でパブリック・ビューイングが設けられたほか、最後のお別れをしようと大勢が女王の棺の移送ルートに詰めかけたことなどもスマホの利用増に影響を与えたことも考えられる。ちなみに、葬儀当日のITVのオンラインサービス(ITV Hub)での視聴者数は25万人、有料テレビSkyGoは42.6万人だったとしている。

葬儀前日比でオンライン視聴が増えたのは女性(+75%)だったが、年齢別に見ると、「iPlayer」利用者時間が最も伸びたのは25~34歳の層で+262%となり、45~54歳の利用増(+259%)を上回った。テレビを見ないとされる若者層(15-24歳)は、さらに多くがBBC Newsアプリを通じて葬儀にアクセスしていた。アクセス数は前週比で44%増だったが、アプリの利用時間は4倍以上、305%という驚異的な伸びを示した。有料テレビSkyのニュースアプリも、15-24歳の視聴者で前週比277%増となった。同様に、新聞社のウェブサイトへのアクセス数も記録を更新しており、タブロイド紙のミラーは前週比82%増となったほか、硬派ニュースサイト、ガーディアン紙へのアクセスも83%増え、ページビューは前週の約870万から1790万と、倍近い伸び(+105%)をみせた。

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