米連邦議会下院で7月20日、MEDIA (Measuring the Economics Driving Investments and Access)ダイバーシティ法案と関連決議案が圧倒的多数で通過した。いずれも、人種的マイノリティや女性のメディア市場参入を支援するためのもの。また、6月には下院で、7月末には上院でそれぞれ「ローカルジャーナリズム・サステナビリティ法案」が超党派の議員によって提出された。誤った情報の氾濫が民主主義をも脅かしている昨今、国民に正しい情報を伝えるためにも、米議会が信頼できるローカルメディアの支援に乗り出そうとしている。
MEDIAダイバーシティ法案
この法案が成立すれば、米連邦通信委員会(FCC)は"社会的に不利な立場にある個人"による市場参入、つまり人種的マイノリティに属する個人や女性がメディアを所有する際に直面する社会的な困難・障害を考慮し、必要な措置を講じることを求められる。全米放送事業者連盟(NAB)のゴードン・スミス会長は、法案通過に称賛の意を表明。「現在の米国にとって、メディア業界がよりふさわしい形で運営されるよう、NABは今後も引き続き行政とともに尽力していく」と述べた。
さらにスミス会長は、かつての「税制優遇制度」の復活を目指すことにも言及。これはFCCが1978年から導入していた制度で、テレビ事業者が過半数の株式を人種的マイノリティや女性に売却した場合に税制上の優遇措置を与えるもの。95年に廃止されるまで、マイノリティのテレビ局所有率を5倍以上増やした実績があった。
ローカルジャーナリズム・サステナビリティ法案
米国で近年経営難に陥っていた新聞、テレビ、ラジオなどのローカルメディアはコロナ禍でさらなる打撃を受け、人員削減はもとより、閉鎖に追い込まれる社が相次いでいる。今回上下両院に提出された法案はいずれも、税額控除を通じてローカルメディアの経営を支援するもの。例えば上院の法案では今後5年間で、▽地元の新聞を購読する場合、初年度は購読料の80%、続く4年間は50%▽ローカルメディアが記者を雇用する場合、その報酬の一部(初年度50%、以降4年間30%。年間の上限5万㌦)▽中小企業が地元のメディアに広告を出稿する場合、出稿額のうち初年度は上限5000㌦、以降4年間は2500㌦――をそれぞれ税額控除の対象とする。
両院ともまだ提出された段階で、法案通過の可否が今後注目される。スミス会長は声明文で、「テレビ・ラジオは、誤った情報がネットに溢れる時代の信頼できる情報源として、役割を果たし続けている。早急な法案通過を望む」と述べている。