スイスで国民投票 メディア支援法否決 ローカル民放に痛手

編集部

スイスで2月13日、国内報道を主な業務とする独立メディアの強化を目的としたメディア支援法の是非を問う国民投票が行われ、反対が総投票数の54.6%を占めたため否決された。

施行が取りやめになったのは、「メディア優遇措置のパッケージ連邦法」(独立メディア支援法)。昨年6月に連邦議会で114対76の賛成多数で可決されたが、反対派が国民投票を求めたため、是非が国民に問われることになった。同支援法は、政府による報道機関への補助金を最大1億5,100万スイスフラン(約190億円)増額し、新たに国内のオンラインメディアやジャーナリスト育成のために支給するほか、新聞・雑誌、ローカル局への支援を拡大したもの。

法制化の背景には、米大手SNSなどに広告収入を奪われたスイスメディアの台所事情がある。連邦環境運輸エネルギー通信局によると、2000年には20億スイスフラン(約2,525億円)だった紙媒体の広告収入は、20年には4分の1以下に落ち込んだ。加えて、ネットの普及や、それに伴うフェイクニュースのまん延がある。地元に根ざした新聞や民間ラジオ・テレビ局などは、それぞれが地域との信頼を築いており、「正確・公平なメディア報道を各地域や言語エリアで、国が将来にわたって保障する」というのがメディア支援措置の狙いだ。反対を表明したのは保守や右翼系の政党で、補助金を受けるメディアは国から完全に独立した存在にはなれないと主張。また、経営不振で多くの中小メディアが大手出版社の傘下に入ったことから、支援金は大手をもうけさせるだけだとの反論も出た。

公共放送の受信料から補助金を受け取っているローカル民放(テレビ13局、ラジオ20局)にとって、国民投票で支援法が取り消された痛手は大きい。また、補助金反対の波に乗って、右翼系政党は公共放送の受信料を半分にすると主張している。スイスでは公共放送の受信料の一部がローカル局にも分配されるため、今後も不安材料が残る。

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