『日本統一』エグゼクティブ・プロデューサーに聞く なぜ今地上波で任侠ドラマなのか

編集広報部
『日本統一』エグゼクティブ・プロデューサーに聞く なぜ今地上波で任侠ドラマなのか

2013年からスタートした任侠ドラマ『日本統一』は、現在シリーズ累計60作を超える。主人公の氷室蓮司と田村悠人が日本極道界の頂点を目指すサクセスストーリーだ。オリジナルDVD作品での展開から始まり、現在は動画配信サービスでも展開しており、人気を集めている。2022年10月に北海道文化放送(UHB)と連続ドラマ『北海道編』を共同製作し、初の地上波放送を行った。今年4月13日から日本テレビと共同製作する『関東編』(木、24・59―25・29、全10話)を放送する。『日本統一』のエグゼクティブ・プロデューサーを務める鈴木祐介さん(=写真㊤※撮影セットで取材・撮影)に、地上波放送の狙い、放送と配信の違いなどをうかがった。


――UHBとの共同制作の経緯は
「もっと作品を外に出したい」という思いがありました。『日本統一』はもともと人気はありましたが、任侠作品のファン向けにしか勝負できていませんでした。もっと外に作品を出すために一番効果的なのは、放送ではないかと考えました。これまでDVDや配信、劇場版で作品を展開していましたが、そこに共通しているのは「ユーザーが選ばないと見てもらえない」ということです。放送は、ザッピング(チャンネルを切り替えながら視聴)すれば作品を見てもらえる可能性があります。そんな時に、UHBからお話をいただき、『北海道編』(=写真㊦)の共同製作に至りました。

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©「日本統一 北海道編」製作委員会

放送には"ざわつき"がある

――制作面で普段との違いは
『日本統一』はレギュラーシリーズがメインなので、その世界観は壊したくないという思いがあります。UHB側には『日本統一』の色を出してほしいと言ってもらったので、普段どおりに作れました。もともと『日本統一』は、配信を意識した作り方をしています。尺はほとんどの作品が70分で、冒頭10分でいかに物語の中に入り込んでもらうか、締めではいかに次が気になるような終わり方にするか、を意識しています。『北海道編』でもその作り方がそのまま使えました。ただ、放送時間の尺には苦労しました。23~4分で起承転結をつけるのは至難の業だと感じました。また、レギュレーションには気を遣いました。血はたくさん出さないとか、カメラに銃口を向けないとか......。ただ、そういったシーンがなくても物語の本筋は大きく変わらないので問題ではなかったです。

――放送後の手応えや反響は
放送後に視聴者の"ざわつき"がありました。放送だと、みんなが見ているタイミングが一緒です。配信はバラバラなので、SNSでのざわつきには、やはり違いがあります。一般の方がざわつけば、作品が世に出るので、放送はその力がすごく強いと感じました。「初めて任侠ドラマを見た」という声が多かったです。一方で「任侠作品に抱いていたイメージと違う」とのリアクションもありました。地上波放送には本作の視聴者を増やす狙いがあり、実際に増えました。

――なぜそのようなリアクションが多かったと思いますか
僕はほかの映画作品の製作も担当しており、『日本統一』は中盤からプロデューサーを担当しています。何本も映画を作る中で、物語に「必要がない」と感じる要素があります。濡れ場や無駄な暴力シーンなど、過激さを安易に描くことが好きじゃなくて、『日本統一』では一切なくそうと決めています。そういったシーンがなくても物語を表現できると思っています。そういった過激さをなくすことで、任侠作品を毛嫌いする人が減ると考えています。また、もっと女性に見てほしい、好きになってほしいという思いがあります。

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――女性ファン獲得のための取り組みは
『日本統一』を知ってもらうためにコラボカフェやSNSに取り組んでいます。一つ一つをビジネスとして成立させようと思うと苦しくなるので、あくまでも宣伝として捉え、作品に視聴者が流れてくれればと考えています。存在を知ってもらえれば、いつか見てもらえるはずなので、『日本統一』を知っているけど見たことない人がたくさんいたらうれしいです。

作品を知ってもらうために

――間口を広げるための工夫は
「何のためか」を忘れないようにしています。これまでLINEスタンプやグッズの作成、コラボカフェに取り組みましたが、それは『日本統一』を知ってもらうためにやっていることです。いっぱい売ってもうけようということではなく、知ってもらうことを常に考え、そこからぶれないようにはしています。『日本統一』は中毒性を持たせる作り方をしているので、一度見てもらえば止まらない作品という自信があります。なので、手に取ってもらうために何が必要かというところからさまざまな企画を始めています。

――中毒性を持たせる作り方とは
海外には、70分ほどで中毒性のある作品が多くあります。ライツキューブでは海外作品の買い付けを行っており、韓国や台湾といったアジア諸国や欧米の作品などに触れる機会が多いです。その中でも、今は韓国ドラマに勢いがあります。その理由をひもといていくと、尺は短いよりは長いほうが良かったり、長すぎるとだめだったりということが分かりました。『日本統一』でも、尺に関して試行錯誤を繰り返し、今の70分ほどに落ち着きました。

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――配信サービスの中で自社のコンテンツを選んでもらうためには
はじめからマスを狙うと良くないと思います。いろんな人がいて、それぞれ好みがあるので、全員が面白いと感じるものは絶対にないです。その中でニッチな部分やエッジを出せるとファンができると考えています。テレビドラマでも『エルピス』(関西テレビ)やWOWOWのドラマには、"攻め"を感じます。作品の色を前面に出せると、好きな人たちが必ず見ると思います。

――海外と日本の違いは
韓国の制作者から話を聞いていると、日本と韓国では考え方などが違います。一番の違いは、制作者の年齢だと思います。みんなめちゃくちゃ若いです。感覚が鋭いから、"ハマった"時のパワーがすごいと感じます。昔の日本のドラマ、特に1980年代後半から90年代ぐらいのものすごい時代がありましたが、当時の俳優に聞くと「当時の制作者が若かった」と言います。当時の日本と今の韓国では、同じように若手が活躍していたのだと思います。今はインドネシアやタイなどもクオリティが高く、つい最近できたような会社が製作し、作り手も若いです。

日本でも、深夜に放送しているドラマで面白いものが多かったりするのを見ると、若手に予算を渡せば良いものができるのではと感じます。『日本統一』でも極力若手の意見を聞いて作っていこうと思います。

最後に

――日本テレビで4月から放送する『関東編』への意気込みは
たくさんの人に見てほしいです。いつものスタッフ・キャストに加え、ゲストを呼んで作っています。さらに進化させた形になっているので、今までのファンにも、初めての方にも楽しんでもらえると思います。われわれができることは、面白い作品を届けることだと思うので、そこは自信を持っています。

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©「日本統一 関東編」製作委員会

(2023年3月23日、ライツキューブ オフィスにて
/取材・構成=「民放online」編集担当・梅本樹)


鈴木 祐介
ライツキューブ常務取締役
主な作品『ベイビーわるきゅーれ』『夜明け前までバス停で』『生きててごめんなさい』などがある。新人監督からベテラン監督の作品まで幅広くプロデューサーとして参加。韓国、台湾映画を中心に映画バイヤーも務める。

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