【メディアリテラシー】千葉テレビ放送 高校生制作番組を放送 情報発信への意識高める

編集広報部
【メディアリテラシー】千葉テレビ放送 高校生制作番組を放送 情報発信への意識高める

民放連は、会員社が実施するメディアリテラシー活動に対して助成を行い、民放各社の同活動のさらなる発展と定着を目指している。詳細は、民放連ウェブサイトに掲載している。

民放onlineでは、通年企画として各社が実施しているメディアリテラシー向上のための活動を随時紹介していく。


今回取り上げる千葉テレビ放送(チバテレ)の「チバテレ ミライチャンネルプロジェクト」は、2022年度民放連メディアリテラシー活動助成事業の一つ。高校生が制作した地域課題を解決する番組を同社の第2チャンネル『チバテレミライチャンネル』で放送した。

民放onlineは、放送後に実施した振り返り会合を取材するとともに、担当した東京支社営業部の須賀裕彦氏(当時は業務局事業開発推進部)にオンラインで話を聞いた。

「チバテレ ミライチャンネルプロジェクト」の概要

チバテレは、2020年5月にコロナ禍で学校に通えない子どもたちに向けて第2チャンネル(サブチャンネル)で学習支援番組を放送した。2021年の開局50周年を機に、第2チャンネルの名称を『チバテレミライチャンネル』に変更し、千葉県内の学生・生徒に向けて教育・教養番組や青少年が制作した番組を放送している。

今回のメディアリテラシー向上のための取り組みでは、千葉県高等学校文化連盟放送専門部会を通じて集まった14校約50人の生徒に対して、2022年8月16日に番組制作に関する講習会を実施。チバテレの担当者が、客観的な視点や放送基準を意識することなど番組制作に関する留意点を説明した後、学校ごとに地域課題にアプローチする番組企画を立案した。このうち千葉西高校の企画が選ばれ、同校が番組制作を行うこととなった。22年12月―23年3月にかけて、同校放送技術部の生徒3人(2年生1人、1年生2人。いずれも当時)の取材や編集などにチバテレのスタッフが立ち会い、完成した番組『西高は避難所です!!』(=冒頭写真)を3月18日に放送した。

番組は、海の近くにある同校が千葉市の津波避難ビル・一時避難所に指定されていることに疑問を持った生徒が、同市の担当部署に指定の理由を確認するとともに、同校が避難所になっていることを他の生徒たちが知っているのかを調査。さらに、地元自治会に住民の防災意識や避難所運営、同校の教頭には学校側の取り組みなどをインタビュー取材し、防災について考えた。

また、同23日に千葉西高校で、番組を制作した放送技術部の生徒3人とチバテレの担当者2人が参加し、振り返りの会合を実施。生徒からは「テレビ(放送)で流れるという実感が湧いてきて、責任を感じた」「Twitterやインスタでは気軽に発信していたが、テレビとなると気が引き締まった」「誰もが見るという点では、テレビもSNSの投稿も同じなのだと感じた」「テロップや画面構成が気になるようになったので、今後の作品制作に活かしたい」などの発言があった。

担当者・須賀裕彦さんへのインタビュー

――これまでにメディアリテラシー向上のための活動に取り組まれた経験は?

約2年前に文部科学省のプロジェクトの一環として、今回のように高校生の番組制作に関わった経験があります。制作にあたって高校生に伝えたのは「偏った視点にならないこと」です。自分たちの主観だけで番組を作ってしまうのではなく、「いろいろな視点から考えてみよう」と助言しました。伝える側の立場で高校生が考えることによって、メディアリテラシー向上につながると考えました。

――「チバテレ ミライチャンネルプロジェクト」立ち上げのきっかけや経緯は?

新型コロナウイルス感染症の影響で小学生が学校に通えない時期に、千葉県と千葉市から授業をテレビで放送できないかと相談があり、第2チャンネルで放送しました。マスター更新で、第2チャンネルもHDに近い高画質で届けられるようになり、県民の役に立つ使い方をしようと考えたのがきっかけです。

また、私はイベント事業系の部署で、未就学児向けの教育エンターテインメント番組『チュバチュバワンダーランド』やプログラミングのイベントなどを担当していたので、教育関係者とやり取りすることも多く、以前から教育に関係する企画に関心を持っていました。

――「チバテレ ミライチャンネルプロジェクト」では、高校生に何を伝え、理解してもらおうと考えていましたか?

自分が作った番組が、不特定多数に見られていることを意識してほしいと考えました。また、いろいろな意見をもとに公正公平な視点で番組を作ること、そして、番組制作によって達成感を得たり、人に見られて褒めてもらえたりすることにより自己肯定感を高めてほしいと考えました。

――高校生に向けて本活動を実施するうえで、工夫されたことや苦労されたことは?

日頃は簡単に動画を撮り、SNSにアップして、"楽しい"で終わることが多いと思うので、番組を放送することで情報発信に対する意識を高めてもらいたいと考えました。制作面では、関連する映像やグラフを入れるなど、視聴者が飽きないような工夫をしてはどうかとアドバイスしました。学校行事の合間に実施したので、スケジュール面の調整は大変でした。

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<須賀さんと千葉西高校の生徒

――本活動に対する視聴者や学校関係者、社内外からの反響は?

千葉西高校の教員からは、「生徒が制作した番組が放送されることはめったにないので、感動を覚えた」「本当にいい経験をさせてもらった」との言葉をもらいました。生徒が取材した自治会の人からは、「話した内容を的確にまとめてもらったことや後継者不足など抱えている課題が世の中に発信されたことはうれしい」という声が寄せられ、社内でも「高校生が作った番組とは思えなかった」との感想が聞かれました。

――放送を通じたメディアリテラシー向上のための活動の意義や課題、そこから見えてきた放送に対する気づきは?

自分たちの学校が津波避難ビルに指定されていることへの疑問をもとに番組を制作した生徒たちの姿を見て、普段の生活での疑問や気づきを番組にするという感覚を私も忘れてはいけないとあらためて思いました。

ミライチャンネルプロジェクトの一環として今回の活動を行いましたが、放送局と学校教育との連携を深め、放送局の取り組みが教育の一助になればよいと考えています。第2チャンネルでコンテンツを作る際、教育委員会に話を聞く機会があり、中学入学時にスマートフォンを持つようになり、SNS関係の問題が発生していると知りました。放送とは違いSNSは手軽に発信できますが、今回のように自分たちが番組を制作・放送する体験を通じて、情報発信に対する意識が変わると思います。そして、不特定多数に発信するという意味ではテレビもSNSも同じだということに、生徒たちが気づいてくれることを期待します。

(2023年3月27日/取材・構成=「民放online」編集担当・松浦寛斗)

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