【インタビュー 稲垣吾郎さん】ラジオは生活のルーティーン ずっと大切にしたい場

豊田 拓臣
【インタビュー 稲垣吾郎さん】ラジオは生活のルーティーン ずっと大切にしたい場

稲垣吾郎(いながき・ごろう)
1973年12月8日、東京都出身。1991年9月9日にCDデビュー。その後、テレビのドラマ、バラエティなどで活躍し、国民的タレントとなった。文化放送では30数年前に夜ワイド内のフロート番組をレギュラーで持ち、現在は1人しゃべりの箱番組『編集長 稲垣吾郎』を担当している。2019年秋からはTOKYO FMで『THE TRAD』の月・火曜を担当


――テレビでは寡黙な印象でしたが、ラジオではご自分からさまざまなトークをされていますね。
それは言われることがありますね。グループのときは仕切ったり司会をする立場ではなかったし、テレビや芝居で演じた役のイメージもあるんでしょうね。ただ、昔からおしゃべりなんですよ。僕の中で何かが変わったとか、性格が明るくなったとかは全くないです。

――ラジオの方が声のトーンも明るく感じるのですが。
テレビとラジオで変えている意識はないですけど、ラジオで特に生放送を担当するようになって、言葉を明確に伝えなくてはいけないと思うようになりました。文化放送さんの番組では「(間違えても)編集してくださる」っていう甘えもあって、リラックスしてダラダラしゃべっている感じですが(笑)。

近づいてくる距離感がラジオの素敵なところ

――文化放送さんで番組を持たれて長いですよね?
グループでデビューする前、僕が14~15歳の頃からレギュラーを持たせてもらっているので、30年以上になるのかな......。もう大変お世話になっています。最初は生放送でやっていたんですよ。当時、テレビ朝日で『アイドル共和国』という生放送の番組に出た後、そのまま当時は四谷にあった文化放送に来て、また生放送という流れだったんです。それから収録で1人でやるようになって、環境が変わってもずっとやらせてもらっています。

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――1人でしゃべるようになったとき、どう思いましたか?
大変だという思いとかプレッシャーはありましたけど、急に1人になったわけではないので、違和感はありませんでした。番組が『編集長 稲垣吾郎』(水、21・30~22・00)になったときはドキドキはしましたけど、今も番組が続いているので大丈夫なのかなって(笑)。

僕もラジオの生放送を担当するようになって、車や家の中でラジオを聴くことが多くなりました。ラジコがあるので聴きやすくもなっていますし。それに、リスナーとパーソナリティの距離感は本当に独特ですよね。TOKYO FMでは、午前中から夕方までの複数の生ワイド番組で同じ1つのテーマを扱うことがあるんです。だから、参考のためにも午前に放送している住吉美紀さんの『Blue Ocean』※を聴いていたりするわけですよ。でも、住吉さんには実際には会ったことがないんです。たぶん会ったときに「あ、いつも聴いている人がいる」と思うんでしょうね(笑)。すごく不思議な感じです。

――稲垣さんでも、そういった感覚を抱くのですか?
この感じが、ラジオならではだと思います。「だんだん近くに感じてくるよね」とか、「クセも分かってくるよな」とか。近づいてくる、その距離感がラジオならではだと改めて最近、痛感しますし、自分の番組をそうやって聴いてくれている方もいるので、僕にとっては大切なものの1つですね。

――ラジオはしゃべり手の人間性がみえてきますよね。
より露わになるというか。不思議ですよね。本当に素敵なものだなぁ、変わらないものだなぁと思いますし、大切にしていきたいなと思うし。聴いている人と同士みたいな感じがしますよね。

――収録番組の『編集長 稲垣吾郎』でも距離の近さは感じていますか?
メッセージを送ってきてくれた方の名前を覚えたりとか、ファンの方がどのようにこの番組を聴いているかをSNSに書いてくれていると、すごく感じますよね。

スタッフもリスナーも「家族」と感じられる

――『THE TRAD』(TOKYO FM:月~木、15・00~16・50。稲垣さんは月・火曜パーソナリティ)では1回目の緊急事態宣言時(2020年4月)に、会議アプリでリスナーと直接話す企画をされていましたよね?
文化放送でも昔は届いたハガキに電話しましたけど、それもラジオならではですよね。リスナーの方と一緒に番組を作っていくとか、アクシデントも面白がってくれたりとか。臨機応変に対応できるところもラジオの良さだと感じます。

あと、より「スタッフの方と一緒に作っている感」はありますね。テレビは何百人ものスタッフがいるので、なかなか全員とコミュニケーションをとったりとか、全員の顔を思い浮かべることは難しいので。もちろん、テレビでもみんなと作っているという意識はありますけど、ラジオはより少数で、構成作家さんがブースの中に入って放送することもありますから、家族みたいな感じはあるかもしれないですね。リスナーの方も含めて家族というか。それが本当にラジオの素敵なところだなと思います。

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コロナ禍の今はリモートが増えて、番組パートナーやゲストもリモートが多いですから、もうこれがノーマルの1つの形になってきたのでしょう。最初はやりづらさや伝えづらさも少しあったし、聴いている方も違和感があったかもしれませんが、今はスタッフの方も慣れてきて、リモートでラジオを放送するのがうまくなってきているんですよ。吉田明世(『THE TRAD』アシスタント)さんなんて、めちゃくちゃうまいですよ(笑)。

リモートのタイムラグも感じなくなってきましたけど、何が起こるか分からないところはありますよね。回線のこととか、僕もテクニカルなことは分からないですが、相手が昨日と同じ部屋の同じ場所にいて、僕も同じスタジオでやっていても、音声の良い日と悪い日があったりとか、切れちゃったりもしますから。僕らの仕事に限らず、リモートでスムーズにやっていくのは課題になっていますよね。その中で、相手をすごく近くに感じられるようになってきているのはありがたいです。

興味を広げる力がラジオにはある

――最後に、稲垣さんにとっての「ラジオの面白さ」をまとめるとどんなところですか?
人をすごく近くに感じられるところですね。例えば出演する企業の方やゲストの方とは初対面のことが多いのですが、こんなに一気に距離が縮まる、垣根がなくなるのはすごく素敵なことだと思うし、僕は相手の姿を見て話すのはすごく好きだし。今はなかなか人と会えませんよね。だから、ラジオによってコロナ禍のストレスから救われた部分もありますし。

――稲垣さん自身もですか?
そうですね。とはいえ、僕は仕事もしていましたし、ストレスというほど打ちのめされてはいませんでしたけど。
 
あと、日々生活していると、自分が興味のないことは吸収しなくなって、スタイルが決まってくるじゃないですか。でも、僕もラジオをやることで間口が広がって、すごく勉強になることも、新しい発見があって好きになることも多いし。『編集長 稲垣吾郎』では、いろんな方と電話で対談させてもらって、プライベートの広がりが出てきたりとか。僕の趣味や関心に応じてスタッフの方も対談相手を決めてくれるので、ありがたいです。

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あと、これもみんな感じることがあると思うのですが、話していると「あ、自分ってこんなことを考えているんだな」とか、自分と対話ができますよね。話すことで自分を知ることができるのはすごく魅力的だなと思います。ここまでラジオをいっぱいやる人間になるとは自分でも思っていませんでしたが、今は1つの生活のルーティーンになっているので、これからもずっと続けていきたいと思いますし、ファンの方との交流の場でもあるので、この場を大切にしていきたいです。

(2021年9月13日、文化放送スタジオにて)


※ TOKYO FMで月~金曜の9:00~11:00に放送されている番組。住吉美紀がパーソナリティを務める

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