米バイデン政権 報道ビザ規制強化案を撤回 メディアの権利擁護へ

編集部

米国土安全保障省が7月6日、トランプ政権下の昨年9月25日に提案していた非移民ビザ規制強化案の撤回を正式に発表した。さらに7月19日には司法省が、ジャーナリストの通信・通話記録の押収を制限する新ルールを正式に発表。政権交代とともに、前政権の報道妨害とも言える規制強化を是正し、報道機関の権利擁護に方向転換が図られている。

前政権下で提案された非移民ビザ規制強化案は、報道関係者ビザ(Iビザ)、学生ビザ(Fビザ)、交流訪問者ビザ(Jビザ)で米国に滞在できる期間を大幅に短縮(Iビザの場合、従来の5年から最大480日に)する内容だった。さらに、ビザ延長には「延長申請」を義務付け、厳しい審査を行うというもの。目的は、これらのビザの乱用による実質的な不法滞在と、諜報行為の取り締まりだ。

今回の国土安全保障省の発表によると、提案に対して世界各国の機関・団体から3万2000件以上の意見が寄せられ、その99%以上が撤回を要求する反対意見だった。中でもIビザに関連した苦情が多く、▽最大480日の滞在期間では職務遂行がままならない▽米移民局によるビザ発行が滞った場合、その間の報道業務ができなくなり多大な損失を被る▽米国内雇用主にとっても申請のためのコストと時間が無駄になる▽ビザ制度の正当性を守るためとはいえ、提案内容はその必要限度を超えている――などの指摘があった。民放連も2020年10月23日付で反対意見書を提出している(「民間放送」20年11月11日号既報)。バイデン大統領は今年2月に移民法に関する行政命令を発しており、同省は今後、同命令を踏まえて各ビザの見直しについて検討していくとしている。

一方、司法省は今年6月に、情報漏洩の捜査・裁判の際、報道機関の通信記録を押収しないことなどを公表しており、今回はその正式発表ということで即時施行に踏み切っている。きっかけとなったのは、昨年ニューヨーク・タイムズ紙が「トランプ政権が秘密裏にタイムズ紙記者の電話通話記録を入手」、CNNが「トランプ政権がCNN記者のEメールを違法入手」と報道したことだ。ガーランド司法長官は、ニュースメディアを保護するための法律への支持も表明している。

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