福島中央テレビ ポッドキャスト番組を配信! テレビとネットの循環目指しアナウンサーが懸け橋に

石井 佑弥
福島中央テレビ ポッドキャスト番組を配信! テレビとネットの循環目指しアナウンサーが懸け橋に

福島中央テレビは2023年1月に『おのとゆうやのほのぼのゆうやけラジオ』(※以下『おゆらじ』)というタイトルの"ラジオ番組"をスタートさせました。

番組パーソナリティは夕方情報ワイド番組『ゴジてれChu!』(月―金、15・50―19・00)のメインMCを務める小野紗由利アナウンサーと私(石井佑弥)が担当しています。2人の名前をもじった番組名で、夕方のテレビ放送が終わった後に収録し、水曜日と土曜日の週2回配信しています。正確にはポッドキャストによる音声コンテンツの配信ですが、映像を伴わない番組ということで「ラジオ」とネーミングしています。

テレビ単営局が"ラジオ番組"を始めたワケ

きっかけは、「テレビ局だけど映像のない音声コンテンツに挑戦したい」という入社3年目の若手ディレクターからの発案でした。インターネット配信の多様化で主に若者層のテレビ離れが進み、全国の多くのテレビ局がSNSやYouTubeを活用して地上波コンテンツのマルチユースに取り組んでいます。当社でも自社制作番組の"宣伝"のためにさまざまなネット配信を行っています。見逃し配信のほかに、番組の裏側を見せるオンラインバックヤードツアーやオンライン飲み会など、テレビで放送する内容とは全く違ったオリジナルコンテンツも数多く制作してきました。

そうした中、SpotifyやApple Podcastなどのポッドキャスト市場が急速に伸びていると言われています。いまやYouTubeと同様に誰もがポッドキャストで番組を持てる時代になり、通勤や移動中の車や電車でYouTubeではなくポッドキャストを聴く人が増えています。そのポッドキャストで、夕方情報ワイド番組のメインMCを務める2人が新たな番組を立ち上げることになったのです。

テーマは「アナウンサーなんてこんなもん」

地上波放送のスピンオフとして「2人の"素顔"を全面に出して」と若手ディレクターに言われるがまま、『おゆらじ』では地上波ではあまり話さないゆるいトークを展開しています。言葉遣いもテレビ向きではなく家族や友達と話すときの口調で、高校時代の恋愛話や休日の過ごし方など、私生活の出来事や交友関係などを赤裸々に話しているので、普段テレビを見ている人にとっては「石井アナウンサーってこんなキャラクターだったの?」と驚く人も多いかもしれません。しかし、それこそが『おゆらじ』をやる狙いでもあります。

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<小野アナウンサー㊧と筆者の収録風景

視聴者との距離を近づけるため、これまでもテレビの枠を超えてYouTubeやInstagramなどで積極的にライブ配信を行ってきましたが、ポッドキャストはそれとは全く違うことに気づきました。

YouTubeなどで動画配信を担当するときには、テレビと同様の言葉遣いや仕草で視聴者に情報を伝え、コミュニケーションを図っています。家に帰ってスマートフォンでその内容を見直すと、アナウンサーっぽく立ち居振る舞っている"石井アナウンサー"が映っています。そこにあるのはパジャマ姿でビールを片手に、はやりのビーズクッションに横たわっている素の自分とのギャップ。まるで別人を見ているような気持ちです。映像の中にいる自分は、アナウンサーの型にハマっているような感覚です。

しかし、ポッドキャスト番組では、情報を伝えるための手段が声しかない代わりに、見られるという感覚はありません。声のみでの表現力や映像で伝えられない情報を補足するための細やかなリアクションは求められますが、私はカメラが無いとこんなに話しやすいのかと驚きました。

リスナーからの投稿を受けてトークを展開していく中で、用意していなかったエピソードもどんどん頭に浮かんできます。向き不向きもあると思いますが、私の場合は自分らしい言葉遣いや表現を使ってトークができている気がしています。ビーズクッションに横たわりながら自分のトークを聴き直しても、ギャッブを感じることはありません。そして、番組を配信してしばらくすると、リスナーにも変化が現れてきたのです。

リスナーからの反響続々!新たなイベント展開も

当初、『おゆらじ』にメールを送ってくれるリスナーは『ゴジてれChu!』の視聴者がほとんどでした。しかし、回を重ねるにつれてテレビ視聴者ではないリスナーや県外からのメールが増えてきました。中には練りこんだ文章を寄せてくれる"ハガキ職人"と呼ばれるリスナーまで誕生しています。

そうしたリスナーたちから「公開収録をしてほしい!」という声が多く寄せられるようになり、当社が実施する大規模イベント「中テレ祭り」で公開収録をすることになったのです。スタートして2カ月足らずのコンテンツで人が集まるのだろうか......。不安の中で迎えた当日、公開収録が行われる会場には200人以上のリスナーたちがステージを取り囲むように集まっていました。テレビではなく音声コンテンツの企画にこんなに多くの人が注目してくれていることに驚きました。さらに、イベント会場までのシャトルバスの車内で『おゆらじ』の限定トークを流すという取り組みも行いました。限定トークを聴くためにシャトルバスに乗ったというリスナーも多く、駐車場の混雑緩和に貢献することもできました。

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<中テレ祭りでの公開収録

テレビだけじゃないアナウンサーの役割

『ゴジてれChu!』のスピンオフ企画としてスタートした『おゆらじ』ですが、アナウンサーの素顔を発信することでテレビの放送をもっと身近に感じてもらえる存在になれたらいいなと感じています。テレビに出ているアナウンサーを近所のお兄ちゃんお姉ちゃんくらいに思ってもらいたいです。

そのためには、『おゆらじ』をもっと多くの人に知ってもらわなければいけません。そこで地上波で『おゆらじ』のCMを放送することにしました。新規リスナーを獲得し、テレビとネットコンテンツとの循環を生み出すためです。テレビを見る人の数が年々減少傾向にあり、家にテレビが無い人も多くなっています。そんな私も普段からYouTubeをよく見ていて、お気に入りのユーチューバーのチャンネルを登録し、興味のないネタだったとしても毎日何となく見てしまいます。ファンだから見てしまうのです。

今後、数あるコンテンツの中からテレビを選択してもらうために必要なことは何なのでしょうか。さまざまな要素があると思いますが、私は番組のファンになってもらうことだと感じています。アナウンサーとしてできることは、視聴者との距離を近づけ、親近感を持ってもらうことだと思います。そのための新しい取り組みとして『おゆらじ』がスタートしました。まだまだ駆け出しのコンテンツではありますが、より多くの人に楽しんでもらえるようにほのぼのと頑張っていきたいと思います。

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<直川貴博アナウンサー㊨の出演回

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