ラジオ局や番組がラジオをテーマにイベントを行うケースがよく見られる。今回、編集部では局や番組ではなく、一般のリスナーや、音声配信アプリ・ラジオクラウドが主催した2つのイベントに着目。それぞれの当日の模様や狙いを取材した。
リスナーによるフェスイベント
「ラジオリスナーフェス」
9月23日、東京・ユーロライブにてラジオリスナーによるラジオリスナーのためのトークイベント「ラジオリスナーフェス2021」が開催された。自身も一般のリスナーで、ラジオとは関係のない業界で働く会社員の岩井葉介さんが2019年からスタートしたものだ。今回は会場からのライブ配信も実施した。
このイベントにはラジオにゆかりのある芸人やアイドル、制作スタッフ、ハガキ職人などが出演(タイムテーブルは以下のとおり)。自由度の高いキャスティングで、観客に新しい番組や出演者と出会う機会を創出することが狙いだという。登壇者によるトークやコーナーが用意されていたり、合間に来場客や配信の視聴者たちのツイッターでの反応を紹介するなどイベント全体がラジオ番組のような構成にされていて、普段ラジオで行われているリアルタイムでの盛り上がりを生み出す工夫がなされている。
<当日のタイムテーブル>
ラジオリスナーに人気のある三四郎の相田、うしろシティの阿諏訪、アルコ&ピースの酒井の3名が登壇。序盤には3名が同期であるかという些細なトークテーマから話を大きく広げ、会場を楽しませた。その後はそれぞれのラジオ番組や若手時代の印象などを話題にした。観客や配信の視聴者からツイッターをとおして、質問を募集。「一緒にラジオをやりたい人は誰か」や「自分の番組の印象的な回」などの質問に答えた。そのほかにも令和ロマンや真空ジェシカといった現在ポッドキャストでラジオ番組をもつ2組や、ランパンプス、ザ・マミィの林田がコーナーMCとして登場し、それぞれの個性を活かしたトークを展開した。
<左から 三四郎の相田、うしろシティの阿諏訪、アルコ&ピースの酒井>
芸人以外にも、元「オールナイトニッポン」チーフディレクターの石井玄さんと放送作家の寺坂直毅さんが登壇するコーナーも。石井さんが刊行したエッセイ「アフタートーク」や「星野源のオールナイトニッポン」のイベントの裏側などを制作者ならではの視点で披露した。
<左から 進行役=岩井葉介さん、石井玄さん、寺坂直毅さん>
岩井さんはイベントを振り返り、「ラジオリスナーフェスはこれからも毎年開催していきたい。さらにプラネット賞というリスナーが選ぶラジオ賞も企画しており、そちらも含めて、また新たな企画も考えている。より一層、ラジオを盛り上げる活動をしていければと思っている」と語った。
局の垣根を越える
「月刊ラジオクラウドDXクロストークライブ」
9月24日、博報堂DYメディアパートナーズ(以下、博報堂DYMP)のラジオ番組配信アプリ・ラジオクラウドは「月刊ラジオクラウドDXクロストークライブ」をオンラインで開催した。全国の放送局から毎月1名のゲストを招き、ラジオ談議やユニーク番組の紹介などを行う配信コンテンツ「やきそばかおるの月刊ラジオクラウド」の拡大版として行われるイベントで、第1弾は今年3月に行われ、今回は第2弾となる。さまざまな音声配信プラットフォームがある中で、自分たちにしか作れないものを作りたい――その思いから放送局との関係性を活かしたオリジナルコンテンツの制作に至ったという。
今回は、
・山根あゆみ(北海道放送「カーナビラジオ午後一番」)
・近藤丈靖(新潟放送「近藤丈靖の独占!ごきげんアワー」)
・野口たくお(南日本放送「青だよ! たくちゃん」)
・山原麗華(ラジオ沖縄「山原麗華の元気なナツメロ(爆笑)」「華華天国」)
と地域色の濃い4名が登場。各地の方言や食べ物をテーマに盛り上がりを見せた。
また、イベント後半にはそれぞれに聞いてみたい質問を交わした。「生放送中にゲップをしたことがあるか」や「共演者と険悪なムードになったことがあるか」などラジオパーソナリティならではのユニークな質問から、「番組を長く続けるには?」など真面目な質問まで幅広い意見交換が繰り広げられた。さらに終盤にはそれぞれラジオへのやりがいやリスナーへの熱い思いを語った。
イベントを振り返って、企画を担当する博報堂DYMPの大塚直仁さんは「局の垣根を越えたトークに価値があると実感した。出演者からは他局のパーソナリティと話す機会がこれまで少なく、新鮮に感じた、互いに刺激を受けたととても好評だった」と手応えを語る。さらに「今後も続けていきつつ、ラジオパーソナリティに限らず、さまざまなジャンルの方々のクロストークイベントなども検討していきたい」と展望した。
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今回取り上げた2つのラジオイベントをとおして、普段耳で聴いているラジオを視覚的にも楽しむことができた。普段のラジオとはまた違った魅力を体験できるラジオのイベントは、リスナーとパーソナリティそれぞれに新たな発見を与え、よりラジオ愛を強めてくれるものだといえるのではないか。