防災ラジオ付き自動販売機 コミュニティFM局が発案 県域・広域放送局も参画

編集広報部
防災ラジオ付き自動販売機 コミュニティFM局が発案 県域・広域放送局も参画

自動販売機に取り付けたラジオから街中にいる人々に緊急情報を発信する、"街かど安心安全ラジオ"「飲む防災、飲む防犯」(=冒頭写真)が全国で少しずつ普及している。自動販売機にラジオ受信機とスピーカーを取り付け、放送局から緊急情報が出されると自動的にラジオのスイッチが入り、事前に設定した局の電波を受信して音声が流れる。ラジオ受信機にはバッテリーを内蔵しており、停電時でも約2日間は情報伝達を継続できる。災害のほか、不審者などの防犯情報や行方不明者捜索の協力の呼びかけなど、防災・防犯に関わる情報を届ける。

三重県鈴鹿市のコミュニティFM局「鈴鹿ヴォイスFM」を運営する鈴鹿メディアパークの加藤正彦代表取締役社長が発案。同局と、コミュニティ放送局向け番組制作などを手がけているミュージックバード、自動販売機の運用などを行うコカ・コーラボトラーズジャパン社(以下、コカ・コーラ)、FVジャパン社の協力のもとで普及に取り組んでいる。

2017年2月に鈴鹿市役所に置かれた第1号機を皮切りに、2023年10月19日時点で全国に100台ほどを設置している。参加しているコミュニティ放送は43局。さらに、県域放送局も、地元の三重エフエム放送のほか、広島エフエム放送やラジオ福島、エフエム愛媛など計13局と、参加が進んでいる。

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<エフエム愛媛が9月14日に四国第1号を設置>

加藤正彦社長に、防災ラジオ付き自動販売機の狙いなどをうかがった。

――発案したきっかけは
災害時に一人でも多くの命を救いたいという思いがありました。ラジオを聴く人が昔と比べて少なくなっている中、街中にいる人々に防災・防犯の情報をどう届ければよいか......。街中にありふれているものにラジオを付けられないかと、▷低コスト▷風に飛ばされない▷電気が通っている――というものを街中で探したところ、自動販売機を思いつきました。自動販売機にラジオを付け、そこから災害などの緊急情報を発信できると考えました。

――事業化に至るまでの経緯は
私が運営している商業施設に設置しているコカ・コーラの自動販売機に、飲み物を入れ替えに来ているスタッフに提案してみました。そこから話が進み、コカ・コーラの協力のもと実現に至りました。自動販売機にラジオを付帯する方法を試行錯誤し、自動販売機の上部にラジオ受信機を強力な磁石で取り付けることにしました。

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<加藤正彦社長>

――現時点での運用状況は
使い方は各局に委ねています。鈴鹿の事例でいえば、すでに数百件の情報を発信しています。防災だけでなく、不審者などの防犯情報も届けており、不審者の抑制につながっていると思います。年配者の行方不明情報も発信することで、実際に見つかったという事例もあります。

――県域・広域放送局が取り組むメリットは
日本全国、ほぼすべてのエリアをカバーできることです。全国にコミュニティFMは342局ありますが、全体の約19%の市町村にとどまっています。残りの約81%のエリアの人々にも届けるためにも参加してもらいたいです。また、コミュニティFM局はきめ細やかな情報を伝えられますが、放送エリアが狭いこともあり、緊急地震速報などの第一報をいち早く広いエリアに発信できる県域局の強みを活かしてほしいと思います。また、事業に協力する自動販売機の運用会社がすべての費用を負担しますので、局側の負担はなく、なおかつ飲料の売り上げの一部は放送局に還元されます。また、放送局のロゴが自動販売機に入るので、PRやCSRにつながります。

――今後の目標は
目標は2万台です。全国にたくさん増やしていき、防災ラジオ付き自動販売機が全国で当たり前になることが夢です。「ラジオは必要だ」「ラジオの音声で人の命を救える」と世の中に伝えたいです。また、こういった事業を通じて、コミュニティ局と広域局とのネットワークを構築し、日ごろのコミュニケーションを大切にし、情報共有などの連携も行っていきたいです。

(2023年10月19日、オンラインにて)

【お問合せ先】
鈴鹿メディアパーク 059-378-6267
ミュージックバード 03-3261-8184(取り扱い代理店)

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