【G7広島サミット2023①】地元放送局はどう報じたか 生中継にこだわる/生活者目線で

編集広報部
【G7広島サミット2023①】地元放送局はどう報じたか 生中継にこだわる/生活者目線で

5月19―21日、G7広島サミット2023(以下、G7サミット)が開催された。岸田文雄首相が議長を務めた今回は「ロシアによるウクライナ侵攻」「核軍縮」「AI」などをテーマにセッションが行われた。G7首脳の広島平和記念資料館(原爆資料館)訪問や、急きょ決まったウクライナのゼレンスキー大統領の対面参加など、印象的な場面が数多くあった。

中国放送(RCC)テレビ・ラジオ、広島テレビ、広島ホームテレビ、テレビ新広島、広島エフエム放送)とNHK広島放送局はどう伝えたのか――。民放onlineは各局に当日の自社制作番組の放送などについてアンケートを行った。その結果を「期間中の放送対応」「周知・広報などの取り組み」に分けて紹介する。今回は「期間中の放送対応」。「周知・広報などの取り組み」はこちらから。※写真は外務省のG7広島サミット公式ウェブサイトで提供されているものを使用。


1日目:各国首脳による原爆資料館訪問

19日午前に、岸田首相が各国首脳を広島平和記念公園で出迎え、G7サミットは開幕。首脳がそろって広島平和記念資料館(原爆資料館)を訪れたのは今回が初めてで、岸田首相が案内して原爆の悲惨さなどを伝えた。その後、首脳たちが公園内にある原爆慰霊碑に献花し(=冒頭写真)、黙とうを捧げた。

午後からはセッションが始まり、デジタルや世界経済、ウクライナ情勢を議論したほか(=写真㊦)、夕方には廿日市市・宮島にある世界遺産の厳島神社を訪れ、その後の夕食会では安全保障や核軍縮などをめぐり意見を交わした。

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各局、自社制作番組と全国ネット番組を通じてG7サミットの動向を伝えた。このうち、テレビ新広島は平日ワイド『TSSライク!』(16・50―19・00)を、朝(9・50―10・50)、昼(14・45―15・45)にも拡大。朝は首脳の平和公園到着までの一挙手一投足を中継し、被爆地での開催の意義をモーリー・ロバートソン氏や元原爆資料館館長の畑口実氏がスタジオで解説した。昼には、原爆資料館で首脳たちと面会した被爆者の小倉桂子氏を急きょゲストに招き、面会直後の感想や会話などを振り返った。当初は朝に出演する予定だったが、直前で面会が決まったため、昼の生出演になったという。担当者は「変動要素が非常に多かったが、柔軟に対応できた」と振り返っている。

NHK広島放送局は全国ネットのニュース番組にあわせ、夕方ワイド『お好みワイドひろしま』を時間変更して放送(17・00―18・00、18・05―18・20、18・53―18・59)。解説委員とともに初日の議論を振り返ったほか、県内各地の声や様子を伝えた。また、中国地方向けに『コネクト「開幕!G7サミット"ヒロシマ"の思いは届くのか」』(19・57―20・42)を放送。核廃絶を訴えてきた市民や、専門家などを迎え、初日の動きを振り返りながら、G7サミットの意義を考えた。

広島エフエム放送はレギュラー番組『柏村武昭のだんRUNラジオ』(11・30―12・55)や『Satoruman50』(金、13・30―18・00)などでG7サミットにちなんだ楽曲をオンエア。前者ではアメリカやイギリスなどの音楽を、後者では「上司やボス、リーダーに届けたい曲」を届けたほか、交通情報枠内で交通規制情報を伝えた。

2日目:ゼレンスキー大統領が来広

ウクライナのゼレンスキー大統領がG7サミットに対面で参加することが急きょ決定し、午前に日本政府から公式発表があった。この日は「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国・途上国やG20などをテーマとしたセッションなどが組まれた。招待国8カ国の首脳や7つの国際機関の代表らが出席して行ったセッションもあった(=写真㊦)。

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15時30分ごろ、ウクライナのゼレンスキー大統領が広島空港に到着し、17時50分ごろからイタリアやフランス、イギリスの首脳らと会談。さらに招待国であるインドのモディ首相とも意見を交わした。両首脳が対面で会談を行うのはウクライナ侵攻が始まって以来初めてだった。

2日目に、首脳らによる討議の成果をまとめた首脳宣言を予定よりも1日早く発表。「ウクライナ支援継続」「中国の東・南シナ海における軍事化への懸念」「核なき世界の実現」などを宣言した。

RCCラジオは『Veryカープ!RCCカープデーゲーム中継 阪神―広島戦』に割り込みで、ゼレンスキー大統領の動向や、想定外の交通規制について交通情報センターにつないで伝えた。翌21日にも広島東洋カープの試合中継を実施。交通規制の開始や岸田首相の議長国会見の音声をオンエアした。また、レギュラー番組の対応については「生活者目線を大切にし、サミットの影響を受ける交通情報を繰り返し呼びかけた」と手島啓介ラジオ局編成業務部長はコメントしている。

広島テレビは夕方ワイド『テレビ派』のスペシャル版(11・55―13・30、16・35―16・55)を編成。各国首脳の動静やセッションの様子などを生中継で伝えた。ゼレンスキー大統領の参加が発表されてからは、この話題を厚く取り扱った。味元崇編成部長は「サミット期間中、各国首脳に何か動きがありそうな時間帯は極力生中継で放送できる編成体制を整え、視聴者からは多くの称賛をいただいた」と振り返る。

広島ホームテレビは『ひろしま深掘りライブ フロントドア』の拡大版(13・00―14・30)を放送。広島市内から中継を交え、サミットの最新情報を届けた。田村洋子編成グループ長は「スタジオで映像を見ながら実況する場面が多く、実況力の重要性を再認識する機会になった」とコメント。また、番組MCを務めるロザンの2人を議長に見立て、広島在住のG7各国出身者ら6人で「KG7サミット(勝手にG7サミット)」を開催し、世界から見た広島の魅力などを討論した。

3日目:議長国会見、そして総括へ

この日は、G7首脳に加えてゼレンスキー大統領も出席し、平和などをテーマとしたセッションが開かれた(=写真㊦)。午後にはG7広島サミットが閉幕。岸田首相は平和記念公園で記者会見を行い、サミットの成果などを説明した。

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RCCテレビは21日、『広島サミットの日』(13・54―15・00)を放送。3日間、同タイトルで生中継や振り返りを放送しており、この日は岸田首相による議長国会見の生中継やサミットの総括を伝えた。小林康秀報道制作センターニュース担当部長は「サミットに伴う事象をリアルタイムで追いかけながら、解説を適度に入れて視聴者が理解しやすい内容を心がけた」と振り返る。「各国首脳が広島で顔をそろえたという点でサミットは成功だった。内容や実効性については今後検証していきたい」とコメントした。

また、後日に検証番組を放送する局も。このうち、広島ホームテレビは「テレメンタリー」で『原爆資料館 閉ざされた40分~検証 G7広島サミット~』を放送(同社では6月10日放送)。被爆者から疑問の声が上がっていた首脳たちによる原爆資料館視察の「完全非公開」について、関係者の証言をもとにサミットの裏側に迫る。NHK広島放送局は5月27日、『コネクト「検証G7広島サミット」』(20・15―20・50)を組み、被爆者をはじめとする市民に密着し、今回のサミットを検証した。また、RCCテレビは6月18日、記録を残すことを目的にした番組『記録~2023年G7広島サミット~』を放送予定だ。

「周知・広報などの取り組み」はこちらから。

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