かつてテレビのチャンネルを変えるだけだったお茶の間でのスポーツ観戦。ところが今、どのプラットフォームでどのスポーツを見られるのか視聴者が混乱を極めているという調査結果が話題を呼んでいる。「2023グローバル・スポーツメディア調査」を行ったのは、テレコム/メディア/IT戦略のコンサルティング企業アルトマン・ソロン(Altman Solon、本社ニューヨーク市)。今年7―8月、米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、メキシコ、中国の8市場で合計2,500人を対象に行われた。市場の規模によって参加人数や対象年齢、性別、年収などを考慮して人選している。
調査報告書は「今の配給システムではスポーツファンが見たいコンテンツを見つけにくく、見つけたとしても視聴しにくい構造になってしまった」と指摘している。回答者2,500人のうち59%が「見たいスポーツコンテンツを見つけることができない/視聴料を払えない」と答えており、それらの35%が「見たいスポーツを全部見ようと思ったら、お金がかかりすぎるので無理」、同30%が「どのチャンネルを見ればいいかわからない」、同28%が「どのプラットフォームにあるかわからない」と答えた。そして全体の56%が「もっとスポーツコンテンツを見たい」と答えている。
例えば米国では、アメフトのNFLや、サッカーのMLS、野球のMLBなど国内の人気スポーツリーグの放送権が年々リニアからAmazon Prime Video、YouTube TV、Apple+など大手配信サービスに移行している。そのため、シンプルに従来からの有料テレビ契約に頼っている高齢者などは、スポーツ観戦が困難になってきている。近年は英国のサッカー・プレミアリーグや女子バスケットボールリーグWNBAなどのように視聴できるスポーツも増えた。視聴者はこれらを、ケーブルか配信のどちらで見るのかでまず混乱し、次にケーブルならどのチャンネルか、配信ならどのプラットフォームかでさらに混乱する。配信の場合スポーツコンテンツは全て有料なので、別途契約料を支払わなければ見たいスポーツを視聴することもできない。
その解決策としてアルトマン・ソロンは報告書で、「業界で今後何らかの統合がなされていくだろう」とし、視聴の選択肢を増やすなど"コンテンツの民主化"も必要だと指摘する。業界と視聴者の両サイドに有益な解決策でなくてはならないということだ。さらに、今回は世界中のメディアエグゼクティブ150人を調査対象に含め、意見を聴取している。この150人は業界を変えていくための打開策トップ3として、「コンテンツを1カ所に集中する」(65%)、「コンテンツ視聴のPR方法を改善する」(64%)、「視聴料金をフレキシブルに設定する」(58%)を挙げている。
調査ではこのほか、
▷昔は地元チームや、家族代々同じチームを応援していたが、現代のスポーツファンはそうではない。個々の選手の実績や、その選手の試合中と私生活両方の言動から、好き嫌いを判断し、フォローしている。
▷多くのスポーツファンは、試合観戦しながら別のことも同時にやっている。回答者の57%がネットを閲覧し、50%がソーシャルメディアをチェックし、43%がメッセージのやり取りをしている。
▷若年層がオンラインでスポーツコンテンツを見る時間は、高齢層の1.5倍。リニアだけでなく、マルチプラットフォームでの試合中継の必要性が示された。
――といったことも明らかになった。
調査結果はこちらからダウンロードできる。