テレビ局が取り組む地域課題② 地元の未来を照らす/報道のその先

編集広報部
テレビ局が取り組む地域課題② 地元の未来を照らす/報道のその先

民放onlineは地上テレビ127社に、「地域課題解決に向けた取り組み」についてアンケートを実施。回答があった中から一部の事例を3回にわたって紹介する。第2回は、過疎化や仕事の担い手不足の解決を目指すものと、報道を通じた社会貢献を取り上げる。


全国的に少子高齢化や過疎化が進む中、南日本放送は鹿児島への移住や定住を考える人に向け、鹿児島に住む人の声を届けるウェブマガジン「かごしま暮らし」を2018年にスタート。人の心を動かして移住につなげるべく、「具体的・個人的なエピソードへの憧れや共感」を大切にし、これまでに51組の移住者の声を詳細に発信している。それに連動して、バラエティ番組『どーんと鹿児島』や平日夕方ワイド『かごしま4』でも、移住者の思いやライフスタイルを紹介する。

また、ウェブマガジンや番組だけでなく、移住相談会やセミナー、お試しツアーなどを実施。2023年11月には、鹿児島県と協力して、東京と大阪で相談会を開催(=冒頭写真)。移住者の体験談を伝えるトークセッションや、各市町村の紹介、移住交流会などを行った。編成局地域ネットワーク部の杉本涼氏は「相談会を通じ、実際に鹿児島へ足を運んだ人や、移住につながった事例もあった」と手応えを語る。十島村から依頼を受けて7つの有人島に住む移住者の暮らしを取材した企画「としまむら暮らし」を例に、「県内自治体とタイアップした企画も広げていきたい」とコメントした。

仕事の担い手不足を解決すべく、新潟テレビ21は開局40周年記念スペシャル「あとつぎ発掘支援プロジェクト『ツグツグ』」を12月23日(土)に放送する。仕事の担い手不足に悩む企業と学生とのマッチングをサポート。地場産業が盛んな燕三条地区の製作所や米農家など5社が学生へプレゼンを行うイベント「ツグツグFES」を7月に実施。各社の担当者による説明に加え、新潟テレビ21が制作した紹介VTRを通じて企業の魅力を伝えた。その後の夏休み期間に、仕事に興味を持った6人の学生を現場に迎え入れるインターンシップを実施。番組では、この模様を中心に取り上げる。

参加した企業と学生からは好評を得ており、学生からは「仕事へのイメージが変わった」「製品や作物をつくる苦労が分かった」などの反応があったという。佐藤輝利人プロデューサーは「番組では担い手不足の問題にフォーカスするだけでなく、新潟の企業やものづくりの魅力を届けたい」と語る。

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<「ツグツグFES」参加者と司会を務めたお笑いコンビ・ぺこぱと富山詠美アナ>

関西テレビは、報道番組『newsランナー』で取り上げた地域の社会課題解決に取り組む団体を支援するクラウドファンディングプラットフォーム「ぷらす8"(エイド)」を2022年9月からスタート。取材先を番組で紹介するだけでなく、実際に活動に関与したいという記者の思いから始まった。これまでに関西を拠点に6つの非営利団体がクラウドファンディングに参加し、このうち4団体で目標金額を達成。この4団体の活動は同局が追加取材し、寄付金を集めた後の活動をウェブで発信する。

1,400人以上から集まった支援金の総額は1,400万円を超え、一般的なクラウドファンディングと比べて目標達成率は高いという。経営戦略局経営企画部の草場克氏は「活動内容や支援金がどう使われるかを動画で伝えることで、支援を後押しできている」とコメント。今後について「関西地域でSDGsに取り組む活動を応援していく予定。放送した団体に限らず支援の輪を広げていきたい」と意気込む。

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<「ぷらす8"(エイド)」>

山口朝日放送は2017年から平日夕方のニュース番組『Jチャンやまぐち』で、ひきこもりの当事者や支援者の特集「シリーズひきこもり」を続けてきた。20年には「テレメンタリー」で全国放送し、放送後の動画配信の再生数は約585万回に達した。放送をきっかけに、特集で取り上げている山口県宇部市のNPO法人「ふらっとコミュニティ」に相談が殺到。就労の機会を与えたいと申し出る企業も現れ、40年間のひきこもりを脱し、働き始めた男性も。高橋賢ディレクターは「『ひきこもり』とは個人の問題だけでなく、社会全体で解決すべき問題だという認識が広まる一助になった」と手応えを語る。

また、2019年にひきこもりが背景とされた「川崎市登戸20人殺傷事件」と「元農水事務次官長男殺害事件」が発生し、多くの報道でひきこもりが「犯罪予備軍」のように語られることに危機感を覚えたという高橋氏。「自分の取材経験から、ひきこもっている人はむしろ犯罪とは縁遠い人だと分かっていた。ひきこもりへの偏見や差別の助長にならないよう支援者たちに語ってもらった」と振り返る。

高橋氏は今後について「ひきこもりの問題はまだ解決していない。ひきこもりから就労したが、職場で傷ついて逆戻りした人を何人も見てきた。あるべき就労を取材していきたい」とコメントしている。

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<自宅にこもる当事者>

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