ラジオ関西は1月27日に東京・銀座ブロッサム中央会館で、ポッドキャスト番組『マユリカのうなげろりん!!』のイベント「ミルキングくんくんくん~祐太のお人形彼女と一緒に流行語の発表するからねぇ~~」を開いた(2月17日まで見逃し配信)。会場チケットは即日完売し、オンラインチケットは10,000枚以上(1月31日時点)を売り上げた。
男性お笑いコンビ・マユリカの中谷さん(=冒頭写真㊨)と阪本さん(=同㊧)が出演する同番組。1月のポッドキャストの月間ダウンロード数は約200万に至り、Apple Podcastの総合ランキングで1位になったことも。これまでにビキニ写真集『Perfect!!』(発行部数5,500部※1月29日時点)や、中谷さんが1人で脚本・演出・出演・作曲を務めたミュージカル公演『七里、山越えて』など、話題に事欠かない。これらはすべて番組内で"冗談半分"に話したことで、それを実行してしまうのが番組の特徴でもある。※写真はすべて「ラジオ関西/吉本興業」提供
番組内での"冗談"を実現
イベントでも、番組内で出た話を回収する仕掛けが多く見られた。
開演前には、席に着く人やグッズ販売に並ぶ人のほか、何かを探して会場内を歩き回る人たちがいた。来場者に楽しんでもらうため、中谷さんは会場内に私物のブーメランパンツ6枚を隠しており、それを探し回っていたのだ。また、阪本さんの「ドレスアップしてきてくれると、流行語大賞が格式の高いものになる」という呼びかけから、ドレスやジャケットスタイルの来場者が多くいた。ドレスアップした人たちがブーメランパンツを探すという、ここでしか見られない光景を目の当たりにした。
イベントは阪本さんが自力でタネから考えたマジックショーで幕が開けた。番組で行ったクイズ対決で負けた阪本さんが罰ゲームとして行うことになったもので、大きな箱を使った瞬間移動や脱出マジックではタネがバレてしまい会場は爆笑に包まれたが、剣刺しマジックでは観客から本気で驚く声が聞こえた。
<剣刺しマジックに挑む阪本さん>
続いてラジオブース風のセットで2人がトーク。阪本さんが「大事件が起こりまして」と切り出し、「隠しブーメランパンツ1枚が盗まれました」と発表。盗まれた黄色のパンツはお気に入りだったという中谷さんは「俺が下着泥棒の被害者になることがあるんや」と嘆いた。また、中谷さんは「まだ実現できていなかった」と、自作した紙芝居を披露。移動中に会話したい中谷さんに対し、阪本さんが「紙芝居でも用意してくれたら聞く」と提案したことを受けて作成したという。話したかった4つのことを比喩的に話に盛り込んだ紙芝居は思わぬバッドエンドを迎え、観客たちを困惑させた。
その後、メインプログラム「うなげろりん!!流行語大賞2023」がスタート。2人はタキシードに身を包んで登場し、「番組を自由にプロデュースできる権利」をめぐり予想対決を行った。10―5位の発表は、ラジオ関西の林真一郎アナウンサーが務めた。ランクインする流行語のユニークな言い回しから、林アナが読み間違えてしまう場面もあった。
<マユリカ㊨に対し、読み直しを申し出る林アナ㊧>
イベントの最後には、事前に告知していたとおり、中谷さんから阪本さんへ誕生日プレゼントが贈られた。サーフボートや撮影機材を渡し、「サーフィンに挑戦する様子を撮影・編集し、YouTubeにアップしてもらいます」と、また新しい企画が動き始めた。
「過程」を見せる
後日、番組プロデューサーを務める神吉将也氏にリモートで話を聞いた。2020年、吉本芸人の番組枠「よしもと☆のびしろアワー」で地上波番組『マユリカのうなされながら見た夢のあとで!』を月1回放送で開始したが、21年4月から3カ月に1回に。芸人の人選に携わっていた神吉さんはマユリカの番組を存続させるべく、同年7月にポッドキャスト番組『マユリカのうなげろりん!!』を立ち上げ、制作費をグッズやイベントの収益で賄うことを目指した。
――今回のイベントの成果はいかがでしたか
ありがたいことに、チケットはすぐに完売し、配信もすでに1万人以上の方にご覧いただいております。グッズも大好評で、普段と比べてかなり多くの数を用意しましたが、すでに再発注をかけた商品もあります。特に「流行語アクリルキーホルダー」は初めて作りましたが、とても好評でした。
――今回のグッズやビキニ写真集など、これほどグッズが売れる理由は
なんででしょうね(笑)。理由は言語化できないですが、とにかくリスナーから「グッズがほしい」という声をたくさんいただきます。正直なところ、どういうものが欲しいのか僕には分からないので、SNSで単刀直入に聞いたり、ヘビーリスナーのデザイナーさんや製造会社さんに入っていただき、ファン目線で企画してもらったりしています。
――番組のターニングポイントはやはりビキニ写真集ですか
ターニングポイントとしては欠かせないですが、当初はこれほど売れるとは全く思っていなかったです。取り組みをメディアで取り上げてもらい、番組の存在を知ってもらうことが狙いでしたが、結果的に売れてしまったという......。写真集をきっかけに、▷番組で言った冗談を実際に形にする▷アイデアが生まれるところからそれが形になるところまでを番組で伝える▷それらをアーカイブする――この流れが『うなげろりん!!』の得意技になりました。この流れはほかのイベントやグッズなどの企画にもつながっています。「過程」を見せて、新規で入ってきたリスナーが「後追い」できるようにすることがポッドキャストでは大切だと学びました。実際、いまだに写真集は毎日のように売れています。
――熱量の高いリスナーが多くいますよね
2人のトークを熱心に聴いてくれているリスナーが多いです。開始当初から「2人の関係性やトークをただ聴いていたい」という声が多く寄せられました。一般的なラジオ番組だと"双方向性"が魅力ですが、この番組ではメッセージの読み上げや電話をつなぐなどはほとんどしません。「ラジオはこういうものだ」というより「『うなげろりん!!』はこういうものだ!」という意識を強く持っています。番組の魅力でもある2人のトークを切り抜いてショート動画で配信して、新規リスナーをアーカイブに誘引して『うなげろりん!!』の"沼"に落としてファンになってもらおうと考えています(笑)。
<イベントでも2人のトーク>
マユリカとリスナーに楽しんでもらう
――ローカル局がポッドキャストを成功させる秘訣は
3つあると思います。
まず「地上波を良い意味で忘れる」。当初は地上波の番組が念頭にあり、ポッドキャストは補完的なものだと考えていました。しかし、そんな考えでは勝てないと肌で感じました。ポッドキャストでは放送局だけでなく、メディアや企業、クリエーターがコンテンツづくりに取り組んでいます。地上波に関係なく、ポッドキャストだけで成立するコンテンツを作らないと人気は出ないと思います。
2つ目は「スポンサーに依存しない」。これにより、スポンサーが離れて番組が終わってしまうことを回避できます。番組のほか、グッズやイベント、配信などのコンテンツでファンに応援してもらい、番組継続の土台を作ります。ファンコミュニティを作れば、おのずとスポンサーも付いてくるはずです。お金を払ってでも応援したくなるコンテンツを作ることが大切だと感じました。
3つ目は「宣伝」。ポッドキャストを始める前は、「良いものを作れば聴いてもらえる」と思っていましたが、甘すぎました。ポッドキャストはAppleやSpotify、Amazonなどさまざまなプラットフォームに配信できるため、拡散できたと満足しがちですが、それは誰でもできること。アーカイブを聴いてもらうために、切り抜き動画や、話題になるグッズやイベント展開など、番組づくりに費やす時間以上に宣伝に注力する必要があります。
――今後の目標は
ラジオ関西はローカル局なので、マンパワー的に実現が難しいこともありましたが、今回のイベントは吉本興業との共催で900人収容の会場で開催できました。できることが増えてきたので、今まで番組で話が出ていた「前乗りツアー」など、実現できていないことに取り組んでいきたいです。これまでのグッズやイベントの売り上げをリスナーに還元するために、マユリカさんが楽しめてリスナーもその様子を聴いて楽しめるコンテンツをつくりたいです。
また、ポッドキャストの中でも存在感が大きくなってきて、リスナーが勤める企業からスポンサーになりたいといった話が来るようになりました。スカルプDとのコラボがそうです(2023年10月に実施。コラボ商品のまつげ美容液は即日完売)。2月にもイオンモールとの全国規模のキャンペーンが始まります。スポンサーもヘビーリスナーなので、リスナーが楽しめる企画をやらせてくださいます。このように自分たちの力だけではできないことにチャレンジし、リスナーに喜んでもらいたいです。リスナーに支えてもらっているから今があるので、リスナーに喜んでもらうことに尽きます。
<神吉プロデューサー㊧、中谷さん㊨>
(1月29日、オンラインにて/取材・構成=民放online・梅本樹)