米ニールセンが毎月発表している全米のテレビ視聴シェアに関するリポート「The Gauge」の開示データが今年4月分から拡大し、メディア企業別の視聴者リーチを示す「Media Distributor Gauge」が追加された。これまでの「地上波」「ケーブル」「配信」「その他」という4つのカテゴリー別シェアを示す円グラフに加え、視聴者にリーチしたメディアのランキングを示す棒グラフが加わっている。これによって視聴者がどのメディア企業のプラットフォームを見ているかが一目瞭然。各社のクロスプラットフォーム・リーチが明確になったと業界関係者から絶賛されている。パンデミックを機に視聴者数の過小評価問題などで業界から反発もあるニールセンだが、アンチ・ニールセン派のメディア企業からも新データは高評価されているようだ。
5月14日に発表された新データ「Media Distributor Gauge」の初回結果(4月分)によると、ディズニーが全米テレビ視聴シェアの11.5%でトップ。これはディズニーの全メディア資産――地上波のABC、ケーブルチャンネルのESPN、FX、ナショナルジオグラフィックなど、配信のHuluとDisney+ほか――を総合した結果だ。同じ日にアップフロントを開いたディズニーは直ちにこの結果をプレゼンテーションで高らかにアピールした。
2位以下は、YouTube(9.6%)、NBCU(8.9%)、パラマウント(8.8%)、ワーナーブラザーズ・ディスカバリー(8.1%)、Netflix(7.6%)、FOX(6.1%)、Amazon Prime Video(3.2%)、Scripps(2.3%)、Weigel Broadcasting (1.5%)、Roku チャンネル(1.4%)、A+E(1.3%)、ホールマーク(1.2%)、AMC(1.1%)と続く。今回ランク入りしたのは、1社で1%以上のシェアを持つメディア企業のみで、ディズニーを含む前記全14社。これらで全米のテレビ視聴全体の72.6%を占めるという。小規模ネットワークであるScrippsとWeigelが2社合わせて4%近いシェアを獲得したことが業界では驚きを持って受け止められた。
単一のプラットフォームしか持たないYouTubeやNetflix、Amazon Prime Video、唯一の単独FASTチャンネルのRokuはいずれも大健闘と言える。しかし、地上波からケーブル、配信にまたがる従来からの大手メディアはそれらを総合するとかなりの視聴者リーチを獲得していることもあらためて示された。
米メディアのアップフロントに合わせて新データ追加を発表したニールセン。カーティク・ラオCEOは「視聴者がどのメディア企業のプラットフォームを見ているかを知ることはこの時代に必要不可欠。テレビ視聴状況を示す業界随一のデータになるだろう」と声明で自信を見せている。ニールセンへの批判はまだ根強いが、今回の新データ追加が信用復活への追い風となるかも注目される。