ドイツで公共放送の改革に関するメディア州間協定の見直しの動きが進んでいる。公共放送への放送負担金の値上げ一時凍結をめぐる訴訟で、連邦憲法裁判所が7月20日、ザクセン=アンハルト州が値上げを定めた州間協定を承認しなかったことを違憲とする判決(8月5日付で公開)を下したのがきっかけ。判決は、「放送の自由」に基づいて、その役割を果たすための適切な資金提供を受けられる憲法上の権利が侵害されたとの公共放送連合などの主張を認めた。併せて、負担金を7月20日から暫定的に86セント増の月額18ユーロ36セントに引き上げることも定めた。
その後、ドイツ16州の放送行政の方針を決める放送委員会は、公共放送の改革に関する公開ヒアリングを11月19日から2カ月にわたり実施することを決定した。同委員会のメンバーから公共放送の近代化や効率化を進める提案が出されたことを受けたもの。提案には、ARDやZDFが運営するサブチャンネルについて、▽一部を停波してオンラインサービスに移行▽古いチャンネルの廃止や新チャンネルの立ち上げを局の裁量で可能に――などの柔軟性を与えることが盛り込まれている。公共放送サービスをネットで利用する国民が増えている中、時流に即した経営ができれば、負担金の費用対効果が上がるとの考えだ。また、物価の上昇率に対応して負担金額を自動的に変動させる仕組みの導入など、財源確保の方法も検討される。前述のザクセン=アンハルト州政府は自動的な値上げに反対し、公共放送の実質的な改革を求めている。
同協定の改正は2023年初頭にも発効する見込みで、ヒアリングの手続きの終了後、改正に向けた交渉が本格化する見込みだ。改革がどこまで進むかは不透明で、承認の際に再び問題が再燃するリスクが残っている。