2年ぶりに名古屋で「愛知・岐阜・三重制作者フォーラム」開催 作り手のあるべき姿勢を深掘り 放送文化基金

編集部
2年ぶりに名古屋で「愛知・岐阜・三重制作者フォーラム」開催 作り手のあるべき姿勢を深掘り 放送文化基金

愛知・岐阜・三重の放送局と放送文化基金が共催する「愛知・岐阜・三重制作者フォーラム」が2021年12月17日、名古屋市のCBCホールで開かれた。地元局の若手制作者らが自身の番組を通じて交流し、ゲストとともに議論を深めるこの催し。2021年度は全国5地区でのフォーラムを予定していたが、コロナ禍により名古屋のみでの開催となった。CBCテレビ、東海テレビ、名古屋テレビ、中京テレビ、テレビ愛知、岐阜放送、三重テレビの民放テレビ7局に加え、NHK名古屋・岐阜・津の各放送局から約80人が参加した。

ミニ番組コンテスト


「テーマ自由」「15分以内」「1社1作品」のミニ番組コンテストで幕開け。報道・情報系を中心に、19年11月1日から21年10月31日までに放送された10作品を上映した。ゲストの西田二郎・読売テレビビジネスプロデュース局チーフエキスパート、五百旗頭幸男・石川テレビ記者、上出遼平・テレビ東京制作局プロデューサーの3氏が作品ごとにコメント。番組のバランスを崩してでも作り手としてのこだわりを盛り込むことの大切さや、日本語の楽曲をBGMに用いる際に求められるナレーションとの兼ね合いなどについて、忌憚のない意見を述べた。

上映後、ゲストの審査により優秀3作品を選出。自転車の"ケンケン乗り"の起源を検証したCBCテレビの田原健太郎記者、コロナ患者の搬送に従事する介護タクシー運転手に密着したテレビ愛知の東惇記者、終戦間際の「西鉄電車銃撃事件」で父を亡くした男性を取材した東海テレビの髙山美月記者が表彰された。

ゲストによるトーク

後半は、ゲスト3人が参加者の事前質問に答えながらのトークセッション。若手時代に意識しておくべきことを問われ、「現場を第一とすること。想定外の魅力的な現実が目の前にあれば、そちらを優先すべき」(五百旗頭氏)、「上司や先輩のやり方をコピーしても新しいものはできない。自分の正解を曲げてはいけない」(上出氏)など、冒頭から作り手の信念を説く展開に。西田氏は、「スタジオの前で忙しそうにしたり、毎日編成部に足を運んだり、自己の"演出"にも注力した」と、制作現場に残るための若手時代のリアルなエピソードを明かした。

いわゆる停波帯に放送した実験的な番組「蓋」(21年9月)を手掛けた上出氏は、制作の背景を「停波帯がもったいないと感じていた。自ら制作費を集め、発信する場所を開拓した」と説明。「地上波には絶対に可能性がある。もっとわくわくして欲しいし、視聴者を驚かせることに執着したい」とこだわりを語った。

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<3人のゲストによるトークセッション。
左から上出遼平氏
、五百旗頭幸男氏、西田二郎氏

ネット時代の番組作りを巡って西田氏は「視聴率が低くても、熱意を持って作れば刺さる人はいる。後ろ指をさされることは気にはなるが、仕方ない。作り手自身が誰かを刺せる存在にならないといけない」と、制作者のあるべきスタンスを熱弁した。

また、五百旗頭氏は古巣のチューリップテレビ時代を「後発局と下に見られていたため、下剋上の精神がある」と振り返るとともに、「民放連賞の中部北陸地区は在名局を含め"強豪"が多い。そこで育ててもらったから今の自分がある」と、互いに刺激を与えあう地区の特徴を挙げた。
 
質疑応答では「企画が通らずにめげそうになる。どうすべきか」「現場で不測の事態が起きた際、被写体の優先度をどう判断すればよいか」といった実践的な質問がやまず、予定時刻を超過する盛り上がりをみせた。名古屋での開催は2年ぶりで、通常であれば参加者同士の懇親会で締めくくりとなるが、コロナ禍のため見合わせた。終了後は、番組制作のヒントをさらに得ようと、ゲストの前に参加者の行列ができていた。

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