日本女性記者協会(JWJA=Japan Women Journalists Association)の設立記念フォーラムが11月22日に東京都内で開かれた。秋山理砂代表理事(神奈川新聞社理事)は「日本の組織メディアのほとんどはニュースの価値判断を男性が担っている。性別や年齢、地域など多様な背景をもつ読者に必要なニュースを届けるにはニュースルーム(編集現場、報道部門)にも多様性が必要」と述べ、「そのことがメディアの信頼性の復権につながる」と協会の使命に理解を訴えた。
JWJAは地方紙、放送局、通信社の記者らが所属の組織を横断して2024年11月に一般社団法人として設立。6人で立ち上げた会員も60人に増え、本格的な活動を始めたのを機に、お手本にした韓国女性記者協会のハ・イムスク会長をはじめ、日本新聞協会の中村史郎会長、日本経済団体連合会(経団連)審議員会副議長の魚谷雅彦・ダイバーシティ推進委員長らも招いて催された。
在英ジャーナリストの小林恭子氏が欧州における政治やメディアへの女性の参加状況について講演、JWJAからは今年8~9月に女性記者を対象に行ったアンケート結果(有効回答数271人)の概要が紹介された。アンケートからは「長時間労働を前提とした働き方」と「社会に根強い性別役割分業意識」が女性の活躍を阻んでいることが浮き彫りになり、これらの改善も視野に協会の今後の活動を考えたいとの認識が示された。
小林恭子氏と秋山代表理事に加え、日本新聞新聞協会の瀬口晴義・ジェンダー・多様性に関する協議会座長(中日新聞東京本社総務局長)、伊藤順子・民放連ジェンダー平等推進プロジェクト委員(東海テレビ放送・社長室長)、正木義久・経団連ソーシャル・コミュニケーション本部長が登壇したパネル討論では、初めに新聞協会と民放連、経団連それぞれの取り組みを報告。新聞協会は有識者へのヒアリングや新聞社で働く3万2,000人を対象に意識調査を実施中で、民放連はジェンダー平等推進プロジェクトが2026年6月までに提言をとりまとめることを報告した。
意見交換では、「読者・視聴者の半数は女性。"ボーイズクラブ"といわれるような男性の論理から見直す必要がある」(瀬口氏)、「日本のDEI(多様性・公平性・包括性)への取り組みはグローバル企業から始まった。価値観を乗り越えるところから始めるべき」(正木氏)、「メディアがなぜ他業界より遅れてしまったのか。それを検証したうえで、世界からの"変わらない"というイメージから脱却してほしい」(小林氏)、「私たち女性が日々の職場で感じている違和感をのみこんでしまわず、しっかりと言語化し、声にすることで対話しながら変えていかねばならない。これからどういう社会にしていきたいかを考えながら民放連のプロジェクトに取り組みたい」(伊藤氏)などの発言があった。これらを受けて秋山氏は「メディア企業で働く女性たちが"つながり""学ぶ"場にJWJAを育てていきたい」と結んだ。
JWJAは今後、メディア企業で働く女性記者のネットワーキングや勉強会、海外団体との交流、キャリア研修や経営層をめざす女性の育成などに取り組んでいくという。対象は日本新聞協会、民放連に加盟する企業や団体に所属する記者経験のある女性。会費は月額500円。くわしくは公式サイトを参照(外部サイトに遷移します)。