民放連は7月29日、「民間放送におけるビジネスと人権対応ガイドブック(以下ガイドブック、既報)」説明会をオンラインで開催した。ガイドブックの活用方法などについてOURS小磯社会保険労務士法人代表社員の小磯優子氏(特定社会保険労務士)らが解説した。加えて、TBSテレビと南海放送から人権尊重の取り組み事例の紹介があった。民放連会員の162社から1,000人を超える参加申し込みがあった。
はじめに、民放連コンプライアンス検討部会の井上波部会長(TBSテレビ取締役)からあいさつがあり、「あらゆる企業で事業活動における人権尊重が求められているなか、特に民放業界の取り組みが注目されている。高い公共性を担う民間放送は、放送内容のみならず事業活動全般において人権尊重の責務がある。会員各社におかれては自社の実情に応じて主体的に人権尊重に取り組んでいただきたい」と述べた。
<特定社会保険労務士の小磯優子氏>
小磯氏は、ガイドブックに沿ってビジネスと人権の基礎知識として国際的な潮流や国内の対応を概説したうえで、民間放送各社が人権に取り組む意義や「ビジネスと人権」が企業価値を決定する状況にあること、各企業が人権方針を策定するだけでなく、人権方針を具体的に実践していくことが求められるとした。民間放送特有の人権リスクをあげ、人権デュー・ディリジェンスのポイントとして、企業が尊重すべき人権の主体は「ステークホルダー」であること、国内法だけでなく国際的基準への配慮が必要であると指摘した。続いて、人権リスクの洗い出し方を説明するとともに、自社の事業に関わる人権侵害リスクを網羅的に確認、把握するためのガイドブック付属資料の使用方法をOURS小磯社会保険労務士法人の福田秀正氏が説明した。
事例報告では、はじめに南海放送・取締役執行役員DX経営戦略本部長の小倉健嗣氏がリモートで登壇した。2022年に創設した「人権デューデリジェンス委員会」を中心に社内の人権尊重に向けた取り組みを紹介した。続いて登壇したTBSテレビ・取締役の井上波氏は、コンテンツ制作のステークホルダーに「人権DDアンケート」を実施し人権リスクマップを作成することで可視化したことを説明。"コンテンツ制作における人権尊重のための指針"を新たに策定し、取引先と共有したことなどを紹介した。
<報告する南海放送の小倉健嗣氏㊧とTBSテレビの井上波氏㊨>