フランステレビジョンは撤退表明 放送連合のSVOD「salto」アマゾンプライムビデオと提携

編集広報部

フランスの公共放送フランステレビジョンと民放2社(TF1とM6)が立ち上げた有料動画配信サービス「salto」は、4月12日、アマゾンプライムビデオと長期契約を結び、5月から「salto」のコンテンツを同プラットフォーム内で提供すると発表した。この提携により、「salto」はフランスにいる数百万人のアマゾンプライムの会員に、月額6.99ユーロでサービスを利用してもらう機会を得る。Prime Video Channelsの中に「salto」のコンテンツが表示され、1クリックで視聴できるようになる。これには27の放送チャンネルのネット同時配信も含まれる。

「salto」はネットフリックスやアマゾンなど米大手配信事業者に対抗するため、放送局が一致団結して立ち上げたサービスだったが、この提携でライバルに統合される道を選択。背景には「salto」の事業不振がある。仏国立映画センター(CNC)が今年2月に公表した調査結果では、VODの利用ランキング(2021年12月)で「salto」は11位(利用シェア8.6%)と低迷を続けており、契約者数も約50万人と横ばい状態とされる。

さらに視聴デバイスの利用変化がマイナス要因に。昨年のVODの視聴デバイスの利用1位はテレビで、シェアは88%とスマホの約2.5倍だ。「salto」は、テレビ受信の60.5%を占めるIPTVとの連携不足が課題だと指摘され、セットトップボックスに「salto」のサービスがないために利用者が増えないようだ。「salto」はアマゾンとの提携で仲介プラットフォーム不足の解消を目指しているが、ネットフリックスに次ぐ人気のプライムビデオは全てのIPTVと提携しており、リモコンにプライムビデオボタンまである。

勢いに便乗する戦略が「salto」の経営改善につながるか注目されるが、同社は今、別の事情で存続が危ぶまれている。事業パートナーの民放2社(TF1とM6)が昨年合併に合意したことから、残りの事業者であるフランステレビジョンが、合併が成立した場合に「salto」からの事業撤退を表明した。3月24日には、民放側と株の買い取りで合意したと報じられており、関係者は競争委員会の承認を待っているところだ。結果が出るのは今年秋だが、事業立ち上げ2年を待たずに放送連合「salto」は崩れる可能性がある。

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