WHO IS BANKSY?「バンクシーって誰?展」に行ってみた テレビ局が手がけるからこそ伝わる作品のメッセージ性

編集部
WHO IS BANKSY?「バンクシーって誰?展」に行ってみた テレビ局が手がけるからこそ伝わる作品のメッセージ性

「バンクシーって誰?」――と問いかける俳優・中村倫也さんのCMをたびたび見かけていた私。先日は残業中、ふとテレビ画面に目をやると、お笑い芸人のみなさんがアレコレ展示会の会場で自由にネタを披露する様子が映っている。ネタはもちろん、展示会も楽しそう......。これは行ってみようと撮影担当のスタッフと一緒に東京・天王洲アイルにある寺田倉庫G1ビルで開催中の「バンクシーって誰?展」を訪れた。

【サイズ変更済み】IMG_4123.jpg<「Aachoo!!」(日本語でハクション!!の意)>

入ってすぐ視界に広がるのは、おばあさんが大きなくしゃみをして入れ歯が飛び出す絵と、傾斜のある街並み。飛沫で周囲の建物が傾いたようにも見える。この作品が発表されたのは2020年12月。"ノーマスク"への警鐘だろうか。

近くには、実際の現地の写真も大きく展示されている。会場を案内してくれたのは日本テレビ放送網の平野亜由子さん(グローバルビジネス局イベント事業部主任)。「バンクシーの作品に関しては、現地の写真を元に街並みごと再現しています。作品が描かれた街並みそのものを、実際の写真と比べながら楽しんでほしい」と平野さん。

【サイズ変更済み】IMG_4135.jpg<「Spy Booth」>

「Aachoo!!」と同じくイギリスからもう1作品。監視社会だと言われがちなこの国。「公衆電話も盗聴されているのでは?」と言いたげだ。政府の通信本部近くの建物に突如現れた本作。その建物の老朽化を防ぐ工事中、いつの間にか世の中から消去されてしまったことにも闇を感じる。

【サイズ変更済み】IMG_4154.jpg<「Hammer Boy (Better Out Than In)」>

代わってアメリカにお目見えした作品。現地ではアクリル板で保護されているが、それも再現している。タバコの吸い殻やゴミなど周辺環境まで演出する精緻さには感心する。「制作は日本テレビアートが中心に行いました。ゴミも現地っぽいものにこだわっています。オーソドックスな展覧会は額装品の展示が中心ですが、本展覧会は町並み再現も目玉ということで、ディテールにとてもこだわっている」と平野さん。日ごろから番組セットを作り、参考となる報道写真なども多数持つテレビ局およびそのグループ会社ならではの仕事だろう。

【サイズ変更済み】IMG_4171.jpg<公式アンバサダー・中村倫也さんもお気に入りという「Giant Kitten」。
周囲の洗濯物などは現地パレスチナの感じを出せるようこだわっている。>

このほかにも5メートルほどの高さを誇る「Flower Thrower」(火炎瓶の代わりに花束を投げる抗議者風の人物を描いた作品)、多くの人が知っているであろう赤い風船と少女を描いた作品、かの有名なポール・スミスが所有している蔵出しの作品など目を引く展示はまだまだあるが、残りは"現地でのお楽しみ"ということにしたい。

なお、記事冒頭の画像はバンクシー本人が写っていると思われる写真から推察して、これくらいの体格ではないか? と再現した人形だ。展覧会場の最後に置いてある。より現実に近づけるため、"詰め物"にまでこだわったという。特に解説パネルは近くにないが、バンクシーがステンシル(型紙)で数々の作品を手がけていることも分かる。

会場全体を見た後、「バンクシーって誰?展」の立ち上げから携わっている日本テレビ放送網の落合ギャラン健造さん(グローバルビジネス局イベント事業部プロデューサー)に話を聞いた。

――企画意図は?
当初、2020年夏に開催される予定だった東京オリンピック・パラリンピックに合わせて何か新しいチャレンジをしたいと企画しました。バンクシーは正体不明で、活動の主戦場がストリートにある特異なアーティストです。そういう人の作品なのだからこそ、額装品を中心に鑑賞するタイプの展覧会ではなく、ストリートを疑似体験できるような展示演出にこだわりました。社会情勢や背景を踏まえて、作品のメッセージ性を感じてもらいたい。バンクシーは作品を描く場所やサイズ感を緻密に考えています。恐らく世界ではこのような展示方法でバンクシーの作品を紹介した例がなく、実現までの道のりはチャレンジングなことが多かったですね。

――特別番組を組んだほか、先日の『有吉の壁』(水、19・00―19・57)ではこの会場が撮影現場になるなど、放送コンテンツとのタイアップは積極的に行っているのでしょうか?
そもそも、テレビ局ならではの展覧会を開催したいと思っていました。番組で扱いやすいコンテンツとは何か。そこで、メディアをうまく使っているバンクシーに目を付けました。大きな街並みを再現できるのは寺田倉庫さんが会場だからこそ。番組で扱うにも映えやすいです。一歩裏路地で活動するストリートアーティストの作品は、美術館空間よりも倉庫が似合うだろうと思いました。"コンクリートの打ちっぱなし"や"むき出しのパイプ"もコンテンツを引き立てていると思います。先日の『有吉の壁』をきっかけに来場者数が増えました。まだまだテレビの力も強いと実感できました。

――最後に読者の方に向けて一言。
これから全国各地でも展開していくので、ぜひお越しいただきたい。バンクシーは自身の名前や顔など素性を明かしていません。それはある意味で、鑑賞者の関心を作品自体に向けさせようとしているのではないでしょうか。つまり、"あなたはこの作品を見てどう思いますか?" "どう行動しますか?"という問いかけのような気もします。それをどう捉えるか。誰しもが小さなバンクシーを心に秘めていてもおかしくない、一人ひとりがリトルバンクシーになり得るかもしれない、ということを皆さんに気付いてもらえれば、この展覧会は成功だと言えるのではと考えています。

【サイズ変更済み】IMG_4200.jpg<スプレー缶バルーンと落合さん>

なお、テレビ朝日などが携わる「バンクシー展 天才か反逆者か」も現在、福岡で開催中だ(今後、広島や東京で開催予定)。バンクシーへの世間の注目がいま、さらに高まっている。


【展覧会情報】バンクシーって誰?展
会期:開催中~12月5日(日)
開館時間: 11・00~20・00(金、土、祝前日は21・00まで)
※最終入場は閉館時間の30分前まで。
会場:寺田倉庫 G1ビル(東京・天王洲)
詳しくは公式ウェブサイトにてご確認ください。

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