米メディア大手のチャーター・コミュニケーションズは10月4日、同社のケーブルテレビ部門「スペクトラム」の契約者向けに新たな視聴用デバイス「Xumo(ズーモ)ストリームボックス」(以下、Xumo)の提供を始めた。Xumoはケーブルテレビと配信サービスの両方が視聴できるハイブリッドなデバイス。これまでのケーブルボックス(セットトップボックス)に代わってケーブル事業者が配信時代を生き抜くためのツールとして期待されている。
XumoはちょうどApple TVくらいの大きさの正方形で、Apple TVよりずっと薄い(写真㊦の右下がXumo、その左隣がApple TV)。これをHDMIでテレビに接続し、Wi-Fi経由またはモデムに直接接続することで、スペクトラムユーザーの契約プランで提供されるチャンネルと、NetflixやAmazon Prime Video といった主だった配信サービスを全てこのXumoのプラットフォーム上で操作できる。
ケーブル事業者にとっては遅ればせながらのデバイス市場進出といえるが、競合するデバイス群と大きく異なるのは、メイン画面にユーザーが契約するケーブルテレビ(スペクトラム)が優先的に表示されること。頻繁に見るチャンネルはビジュアルなアイコン付きだ。リモコンもケーブルテレビのチャンネル操作用に0―9のナンバー入り。コネクテッドTV(CTV)やデバイスでダウンロードするスペクトラムのアプリ経由より、従来のセットトップボックスにより近い形でテレビ視聴ができる。スペクトラムの新規契約者にはプロモーションとして最初の1年はXumoが無料提供され、その後は毎月5ドルのレンタル料がかかる。
チャーターがXumoを導入する目的は、▷ケーブルテレビであるスペクトラムが配信でのテレビ視聴にも対応すること、▷ Xumo経由で新たな広告収入を得ること、そして▷インターネットのみの契約者にケーブルテレビ契約を促すること――この3つだ。
Xumoの導入に先立つスペクトラムとディズニー間の再放送同意料交渉で、9月にはリニア・配信のハイブリッド契約が成立しており(=詳しくはこちらを参照)、メイン画面上ではディズニーのDisney+、Hulu、ESPN+が前面に押し出されている。
テレビ視聴がケーブルから配信へとシフトするなか、ケーブルテレビ大手のコムキャストは2020年にFASTサービス(広告入り無料テレビ配信サービス)の「Xumo」を買収し、22年4月からチャーターと合弁で同ボックスの共同開発を始めていた。スペクトラムはインターネットプロバイダーも兼業しており、ケーブルテレビと配信の統合ビジネスを展開するインフラをすでに持っていることが強みだと米メディアは報じている。コードカットに苦慮するケーブルテレビの巻き返しになるのか、注目される。