東日本大震災から12年 宮城編 「復興」から「発展」へ 変わりゆく景色を再考

編集広報部
東日本大震災から12年 宮城編 「復興」から「発展」へ 変わりゆく景色を再考

東日本大震災発生から12年が経った。住宅や交通インフラの復興や、避難指示の解除が進んでいる。一方で課題はまだ多く、東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出や、廃炉問題が解決しない中での原発再稼働の動きなどが見られ、賛否が分かれている。民放onlineは今年も岩手・宮城・福島の民放各局に、3月11日を中心とした震災関連の特番や取り組みに関するアンケートを実施した。その結果を地区ごとに紹介。今回は宮城の事例をまとめた。


東北放送は11日、特別番組『サタデーウォッチン!×Nスタみやぎ 震災から12年 教訓を未来へ』を放送した。震災発生時に撮影した映像を使いながら、当時危機を逃れた漁師やバスの運転手、高齢者施設のスタッフが心境や教訓を伝えた。また、2012年から毎年放送している特番『サンドのこれが東北魂だ』を1月29日に編成し、TBSテレビなど複数局でもオンエア。サンドウィッチマンらが常磐道を北上し、原発事故の影響を受けた「飯舘牛」の復活を目指す若手畜産農家や、「仙台うみの杜水族館」で新たに披露されているパフォーマンスショーなど、復興から発展へと進む被災地を見つめた。同じくサンドウィッチマンが出演するレギュラー番組『サンドのぼんやり~ぬTV』(=写真㊤)では2月25日から4月1日まで、沿岸部で宿泊施設を営む人や石巻市の門脇小学校などを取り上げ、被災地の今とこれからを考えた。

ラジオは11日、2011年から放送している番組『3.11みやぎホットライン』のスペシャル版を組んだ。震災により急速に過疎が進んだ地区に再びにぎわいを取り戻すための取り組みや、途絶えていた祭りや伝統の復活を目指す動きを紹介した。また、震災伝承施設をネットワーク化する団体「3.11伝承ロード推進機構」と連動して2月から毎週土曜に『3.11伝承ロード あの日の使命感』を計5回放送。消防署の救助活動や電力会社の復旧作業など当時の様子を取材。番組は青森放送、岩手放送、ラジオ福島でもオンエアした。

仙台放送は2017年から毎年、岩手めんこいテレビ・福島テレビと共同で特番を制作しており、今年は11日に編成。宮城のローカル部分では、復興や医療をテーマとする漫画家の井上きみどりさん(=写真㊦)に密着。芸術を通じた被災地支援を行う2人の男性の思いを井上さんが取材し、漫画制作に取り組む様子を映した。また、同局主催の「東北・みやぎ復興マラソン」を今年は11月5日、5年ぶりに通常開催することに。震災の記憶と経験を未来につなぐべく、仙台市内や沿岸被災エリアをコースに組み込み、移り変わる街の様子や復興の軌跡を走者に体感してもらうという。

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11日に2つの報道特別番組を放送したミヤギテレビ。『つなぐ・つたえる―東日本大震災12年―』では、伝承施設「南三陸311メモリアル」の写真展や、地元の大学生と「防災紙芝居」を作った女性の取り組みなどを取材した。このほか、住民主導の防災対策のヒントを伝えるべく、南海トラフ巨大地震で最も大きな津波が想定される高知県黒潮町の防災対策を取り上げた。もうひとつの特番『灰色の海岸線』では、石巻市雄勝町の防潮堤がもたらした景色と住民の心の変化や、防潮堤に壁画を描くプロジェクト(=写真㊦)を伝えた。番組を担当した報道制作局の伊藤有里記者は「街の景色は変わっても、変わらない人や営み、想いがあると伝われば」と企画の狙いを明かす。

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「テレメンタリー」で防潮堤を取り上げた東日本放送。5日に『"3.11"を忘れない89 防潮堤が残したもの~海の町の巨大な壁~』を編成した。石巻市雄勝町の防潮堤について、関係者や住民からの賛否の声を拾いながら、その必要性を再考した。また、11日に放送した岩手朝日テレビと福島放送との共同特番『あすへの一歩~被災地を変える未来』の宮城パートでは、地球温暖化による海面上昇の津波への影響や、昨年5月に県が公表した新たな津波の浸水想定を取り上げた。2月17日には、当時の放送対応状況などを若手社員に伝える社内イベント「3.11khb語り部の会」(=写真㊦)を実施。当時の報道・技術・編成・営業部門のスタッフによるトークセッションが行われた。

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復興応援番組『Hope for MIYAGI』を原則として毎月放送しているエフエム仙台。特番『Inspire―落合直文×熊谷育美―presented by Hope for MIYAGI』を26日に組んだ。気仙沼市を拠点とするシンガーソングライターの熊谷育美さんが、明治時代の歌人・落合直文が詠んだ短歌からインスパイアされ、楽曲を制作する過程を追った。番組では、熊谷さんが気仙沼にある落合の生家「煙雲館」を訪問。館主の鮎貝文子さんの話から、落合の人柄や功績、短歌が生まれた経緯などを探った。このほか、同局は毎年3月、防災・減災に関する冊子『Date fm サバ・メシ防災ハンドブック』を制作しており、今年はカレー特集やVRによる災害体験を通じた防災学習「せんだい災害VR」の紹介など、さまざまな視点で防災をまとめた。

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<左から熊谷さん、鮎貝さん、ナレーションを務めた志田淳さん

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