2022年民放連賞最優秀受賞のことば(青少年向け番組) ytvドキュメント みのだん 〜夢 コロナ 青春 強豪ダンス部の1年〜

大中 一
2022年民放連賞最優秀受賞のことば(青少年向け番組) ytvドキュメント みのだん 〜夢 コロナ 青春 強豪ダンス部の1年〜

「青春ってすごく密なので」。夏の甲子園の優勝インタビューで仙台育英高校の須江航監督が語ったこの言葉から、自然と"みのだん"と過ごした1年半を思い返している自分がいました。

大阪府立箕面(みのお)高校ダンス部、通称"みのだん"。彼らの取材を開始したころ、世間では新型コロナによる自粛ムードが高まっており、インターハイの中止や練習時間の短縮など高校生の部活動にも多くの制限がかけられていました。そんな中、高校生たちが夢に向かってダンスに打ち込んでいる姿をとおして、世の中に少しでも活気が戻ればとの思いで取材はスタートしました。

コロナ禍でも必死に夢を追い、青春の全てをダンスにかけていた部員たち。そんな彼らの練習に寄り添い、予選通過が決まった時にはともに喜び、全国大会での活躍を期待していた矢先、校内で陽性者が出たことによる出場辞退が言い渡されました。

それは大会2日前のことでした。最後の練習を取材しようと学校へ向かっていた私たちは突然、顧問の先生から出場を辞退する旨を伝えられたのです。それまでも、大阪府における陽性者の増加で、出場できるかどうかを先生方が教育委員会と交渉していた時期で、やっと出場が認められた直後だったので、大きなショックを受けたことを覚えています。

先生が部員たちに伝える場に立ち会わせていただけたのは、それまで彼らと関係を築き、寄り添いながらずっと取材を続けてきた結果だと思います。あの時の、どうすることもできない悔しさ、抑えることのできない涙、そして怒りは今も忘れることができません。

この数年間、新型コロナによって多くの人が翻弄され、苦しい思いをせざるを得ませんでした。高校生に突きつけられた、挑戦することすらできないという現実。それを記録し、放送することは、新型コロナの時代に起きた悲劇を忘れないためにも意義があったと感じています。

放送後、みのだんのメンバーや保護者の方々からたくさんの感謝の言葉を頂きました。撮られたくないところや見返したくない場面もあったはずです。それでも、放送をとおして、部員たちが前に進むために背中を押すことが少しでもできたのではないかなと思います。そして何より、大好きなダンスに打ち込んだ濃密な時間の中で、仲間の大切さをあらためて感じてくれたことが、この取材を続けてきて本当に良かったと思える瞬間でした。

この作品が、彼らと同じようにつらく、悔しい経験をされた人たちにとって、前を向いて進むための一助となれば幸いです。


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